食品アップサイクル原料のご紹介〜市場拡大の背景と食品企業が取り組む意義とは
食品分野におけるアップサイクルとは、本来廃棄されていた食材や食料を加工して、新たな価値ある商品へと生まれ変わらせること。SDGsや食品ロスの削減への関心が高まる中で浸透してきた考え方のひとつです。
この記事では、アップサイクルの市場拡大の背景と、食品業界が取り組むメリットや課題、関連商品をまとめてご紹介します。本記事を参考に、開発テーマや条件にあった原料をぜひ見つけてください。
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アップサイクル食品の定義
2019年に設立された業界団体「アップサイクル食品協会」(本部=コロラド州デンバー)は、世界自然保護基金や自然資源防衛協議会などの専門家チームによる共同作業を経て、2020年5月にアップサイクル食品の定義を定めました。
その定義では「アップサイクル食品とは、本来であれば人間の消費にまわらない材料を使い、検証可能なサプライチェーンで調達し、生産された、環境に対して良い影響を与えるもの」とされています。
また、アップサイクル食品の要件として「そのままであれば食品廃棄されてしまう材料から作られること」「付加価値が与えられた製品であること」としています。
リサイクルとの違い
アップサイクルと混同されやすい言葉として「リサイクル」があります。リサイクルは、ある製品を別の製品の原料にして別の製品を生み出すことを意味します。
リサイクルは「古紙が再生紙になる」など、どちらかといえば価値の低い製品に変換されるケースが多く、これは「ダウンサイクル」と呼ばれます。この点において、価値を持った製品に生まれ変わるアップサイクルとは大きく異なります。
アップサイクル食品市場が拡大する背景・理由
世界のアップサイクル食品市場は、2021年に約537億米ドルと評価。2022年~2029年には6.2%以上の健全な成長率で成長すると予測されています(※)。
世界のアップサイクル食品市場が拡大する背景には、大きく3つの理由があると考えられています。
※参考:株式会社グローバルインフォメーション「アップサイクル食品の世界市場規模調査&予測、製品タイプ別、供給元別、流通チャネル別、地域別分析、2022-2029年」
理由1:健康意識の高まり
新型コロナウィルスの大流行をきっかけとした健康意識の高まりから、栄養価の高い食品の需要が急増しています。
アップサイクル食品は、廃棄予定だった原材料を利用しながらも栄養価が高いことが多いです。食品の「無駄を減らす」だけでなく、健康をサポートする食品としても注目されています。
理由2:環境意識の高まり
食品廃棄物の問題が世界的に注目される中で、消費者の購買行動にも大きな影響を与えています。環境意識の高い消費者の間ではサステナブルな商品を選ぶ傾向が高まっていて、アップサイクル食品も支持を集めています。
理由3:企業の社会的責任(CSR)の取り組み
食品業界では、企業の社会的責任を果たすためにサステナブルな取り組みが進んでいます。企業が環境や社会に対して貢献する方法として、アップサイクルが関心を集めています。
また、政府の施策や支援、中小規模の食品廃棄物アップサイクル事業の成長により、今後数年間の市場成長が期待されています。
食品企業がアップサイクルに取り組むメリット3つ
食品企業がアップサイクルに取り組むメリットは大きく3つあります。
メリット1:仕入れコストの削減
本来捨てられるはずの食品を使うことで、新しく原材料を仕入れる必要がなくなるため、原材料の購入コストを削減できます。
メリット2:リサイクルによるコストやエネルギーの削減
アップサイクルは、廃棄物のリサイクル(分解・溶解)に比べて、発生する処理コストやエネルギー消費の削減にも寄与します。不要な廃棄物を有効利用することで、リサイクルにかかる費用や物流のコストの削減にもつながります。
メリット3:企業のイメージ向上
アップサイクルの取り組みを進めることで環境問題に対する積極的な姿勢が評価されれば、消費者の信頼獲得や企業イメージの向上にもつながります。特に、サステナビリティを重視する消費者層に対して、企業のブランド価値を高める効果も期待できます。
食品企業がアップサイクルに取り組む課題
アップサイクルは、持続可能な未来を目指す食品業界にとって重要な取り組みです。ただし、食品企業が取り組む上で、その実現には大きく2つの課題があります。
原材料の確保が不安定
アップサイクルでは廃棄物を再利用しますが、これらの供給量が常に安定しているわけではありません。季節や生産の変動により、必要な原材料が不足する場合や、逆に過剰に発生することがあるため、安定した供給を維持することが困難です。
こうした課題を解決するためには、原材料の確保の不安定さを考慮した上で、アップサイクル製品の生産計画やビジネスモデルを検討する必要があります。
廃棄物抑制と安定供給の両立の難しさ
廃棄物を削減するための取り組みと、アップサイクル製品を製造するための原材料の確保にはジレンマが存在します。たとえば、廃棄物削減を進めるほど、アップサイクルに必要な副産物の量が減少し、製品の製造が難しくなるという逆説的な状況が生まれます。
適切なバランスを保つためには、製造プロセス全体の検討や、廃棄物の利用可能性を予測した戦略的な計画が求められます。
自治体による充実した支援事業も始動
食品のアップサイクルは、循環型社会を目指す社会的意義に加え、新たな商品開発や収益改善の機会としても注目されています。2024年度より、国内でもとりわけ食品産業が盛んな静岡県で、未利用食材を「供給したい/使いたい」企業をつなぐマッチング支援事業が始まりました。
アップサイクル原料のご紹介
タマネギぐるりこパウダー500g|ASTRA FOOD PLAN株式会社
特許技術である過熱水蒸気による食品の乾燥・殺菌装置「過熱蒸煎機」で製造した、主に玉ねぎの芯が原料のアップサイクルパウダーです。ローストオニオンの強い香りと、芳醇な風味が最大の特徴で、一般的な熱風乾燥のオニオンパウダー・ミンスドオニオン等とは異なる、世界初の全く新しい食品粉末です。ソテーオニオンの代替として利用することができ、玉ねぎを炒める工程の削減に繋がります。フレーク状の製品、及び、小容量タイプもあります。
【調味料】うま藻|株式会社AlgaleX
未利用となっていた泡盛粕をもとに発酵させた高DHA含有の沖縄生まれの美味しい藻です。カラスミのような海の香りと豊富なうま味が特徴的。お料理に少し加えると、味わいがぐっと深まります。
牡蠣殻パウダー|株式会社ナチュラリンク
牡蠣殻由来のナノ粒子含有カルシウム補給原料です。 無味無臭の食品原料ですが、高温焼成加工していないので、弱アルカリ性を保ち、抗菌、消臭効果も期待できます。
すっぽん内臓エキス末|株式会社ふる里食効研究所
昔から滋養に良いものとして食されてきた歴史がある「すっぽん」の加工時に廃棄される内臓の可食部をエキス抽出し、粉末加工しました。 アミノ酸を豊富に含み、滋養強壮サプリ等の健康食品に活用できます。
シトラスじゃばら果皮粉末(パウダー)|紀伊路屋合同会社
じゃばらの皮を細かな粉末に仕上げました。じゃばらはユズやカボス・橙などと同じ柑橘類で、香りと酸味が強く果汁が豊富で、独特の風味を持つ「大変希少な果実」です。 疲労回復に役立つビタミンや、カロチンが含まれ、特に果皮にはナリルチンが柑橘品種の中で、群を抜いた含有量があるという研究結果から、近年大変注目を集めています。
MaCSIE Iyo|愛媛製紙株式会社
廃棄されていた柑橘搾汁残渣であるイヨカンの外皮を原料とした無添加・無変性の天然アップサイクル原料です。機械的な処理のみで、セルロース繊維をナノサイズの幅まで細く解繊することで、高粘性、チクソトロピー性、乳化能などの物理的特性を持ち、柑橘果皮由来の有効成分による生理活性機能も持っています。アマナツを原料とした製品もあります。
うめ種炭粉末|株式会社ふる里食効研究所
和歌山県産の南高梅を加工する際に廃棄される種子を炭化させた粉末で、 日本での食経験がある珍しい炭原料です。 原料は生梅由来なので、梅干しのように塩分を気にする必要はありません。青汁などに配合してチャコールクレンジング製品として、商品の着色剤として使用できます。
大麦乳酸発酵液ギャバ90% 粉末品(造粒/非造粒)|三和酒類株式会社
麦焼酎の製造工程でできる「発酵大麦エキス」を用いて、乳酸菌発酵でつくる高純度ギャバ(国内製造)です。 豊富なエビデンスを有し【血圧】【ストレス】【疲労感】【睡眠】【活気・活力感】【肌の弾力維持】【筋肉量維持】に関する機能性表示が可能です。
柿皮エキス|テクノマックス喬木株式会社
市田柿の果皮を特殊処理することで、エキスを抽出。未利用な素材を有価な原料へ変えるアップサイクル素材です。 柿由来ポリフェノール(柿タンニン)をはじめβカロテンなどを豊富に含みます。ぬか床、あんこ、麺類、ヨーグルト、大豆ミートなどの副原料に。臭みのマスキングや賞味期限の延長、糖質の削減などが確認できています。
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