
果物由来の原料とは?食品開発を支える魅力とメリット、活用アイデアを紹介
近年、本物志向の高まりから、食品業界では機能性原料など「果物由来の原料」が注目を集めています。果物の自然な甘みや香り、豊富な栄養素は、製品の付加価値を高める要素としても効果が期待されています。
そこで本記事では、果物由来原料の現状やメリット、活用事例を最新データとともにご紹介します。ぜひ、現場での商品開発のヒントにしてみてください。

果物由来原料が注目される背景
果物由来の原料が注目される背景には、果物の国内生産量が低く大部分を輸入に頼っていることや、日本人の果物摂取量の低さなどが関係しています。
果物の国内生産量と輸入の現状
日本で生産している果物の種類は多岐にわたります。その中で、2022年の果物の収穫量ランキングでは、りんごが約73万7,100トンでトップ、次いで温州みかんが約68万2,200トンとなっています(※1)。
また、日本の果物の食料自給率は約4割で、半分以上を輸入に頼っています(※2)。特に、果実の輸入量は、果汁などの加工品を中心に増加傾向にあります。加工品の輸入元としては、果汁はブラジルや中国、缶詰や瓶詰は中国が多くを占めています(※3)。
もともと果物は気候などの影響による価格変動が大きく、輸入品の場合は物流のリスクも懸念されます。こうした流れから、商品開発の現場では、生の果物の代わりに「果物由来の原料」を活用する動きがあります。
※1参考:果物情報サイト「果物ナビ」収穫量が多い果物
※2参考:農業ジョブ「日本の食料自給率を解説」
※3参考:農林水産省「加工・業務用果実をめぐる現状」
日本人の果物摂取量の課題
厚生労働省が発表している一日に摂りたい果物の量は可食部(食べられる部分)で「200g」とされています。この量は、さまざまな病気が発症したり重症化するリスクを下げる値として定められたものです。
一方で、2019年の「国民健康・栄養調査」によると、20歳以上における果物摂取量の平均値は1日99gという結果が出ています。さらに、日本人のうち4割弱の人は「1日の中で全く果物を食べていない」という状態で、果物摂取量が「目標の半分以下(1日100g未満)」という人の割合は、6割超という結果もあります(※)。
このような背景から、果物由来の原料を活用した食品開発が、消費者の果物摂取量を補う手段として期待されています。
※参考:FACT BOOK 果物と健康 六訂版
果物由来の原料・種類とは
果物由来の原料には以下のような種類があります。これらの原料は、果物の風味や栄養を手軽に取り入れる手段として、食品開発の現場で利用が推進されています。
果汁・濃縮果汁
果汁は果物を絞って得られる液体のことで、フレッシュな風味と自然な甘みが特徴です。一方、濃縮果汁は果汁から水分を蒸発させて濃縮したもので、保存性が高く輸送コストも抑えられるため、ジュースや清涼飲料水のベースとして広く用いられています。
果皮・果肉ペースト
果物の果皮や果肉を蒸したり加熱処理してすりつぶしたペースト状の原料です。ジャムやスプレッド、菓子のフィリングとして使用されるほか、素材感を出したいときにも役立ちます。
乾燥果実
果実を乾燥させることで水分を減らし、保存性を高めたものです。ドライフルーツとも呼ばれ、シリアルやグラノーラ、焼き菓子の素材として人気があります。乾燥により糖度が凝縮し、自然な甘みと歯ごたえが楽しめます。
果実由来の香料・エキス
果実から抽出した香り成分を凝縮したエキスや香料は、飲料やデザートの風味付けに使用されることも多いです。抽出方法は蒸留や溶媒抽出、圧搾など多様で、果物特有の香りを製品にプラスできます。
果実繊維(ペクチンなど)
ペクチンは果物の細胞壁に含まれる水溶性食物繊維で、ゲル化剤や増粘剤としてゼリーやジャム、ヨーグルトに利用されます。天然の増粘力により人工添加物を減らせるほか、食物繊維としての機能性も期待できます。
パウダー
果実から水分を除去し、粉末状に加工したものです。溶解性や均一性に優れ、ドリンクやヨーグルト、ベーカリー製品の風味付けや栄養強化に用いられます。
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果物由来の原料を使うメリット
一般的に果物由来原料の活用には、次のようなメリットがあります。果物由来の原料を利用することで、製品の差別化やブランド価値の向上にもつながります。
【自然な甘みと香りで“本物感”を演出】
果物には自然な甘味と香りがあるため、砂糖や人工添加物などを使用することなく、素材本来の甘味と香りを出すことで本物感を演出できます。
【栄養価の向上】
ビタミンや食物繊維など不足しがちな栄養素を製品に加えることができ、栄養価が向上します。
【“ギルティーフリー”で消費者の健康志向に対応】
目的に合う果物を製品に使用することで、「ナチュラル」「ヘルシー」「オーガニック」など健康志向の高まりに合わせた訴求が可能です。罪悪感なく食べられる「ギルティーフリー」のニーズにも応えることができます。
【コスト管理がしやすい】
生の果物に比べて、果汁やピューレなどに加工することで保存性が高まります。また、在庫管理や計画的な仕入れが可能となり、コスト変動を抑えやすくなります。
【食品ロスの削減・地域資源の活用】
規格外の果物を原料として活用することで、食品ロスの削減や地域農産物の活用にも貢献できます。
果物由来の食品開発のアイデア・活用事例
ここでは、果物由来原料を活用した食品開発の例をいくつかご紹介します。果物の魅力を活かしながら、消費者の多様なニーズに応える商品づくりができます。
- 機能性飲料:ビタミンCやポリフェノールを豊富に含む果汁を使用した健康志向の飲料
- スナック菓子:乾燥果実を混ぜ込んだグラノーラバーやフルーツチップス
- 乳製品:果実ピューレを加えたヨーグルトやアイスクリーム
- ベーカリー製品:果物のペーストやドライフルーツを練り込んだパンやマフィン
- 調味料:果実酢やフルーツソースなど、果物の風味を生かした調味料
まとめ
果物由来の原料は、自然な風味や栄養価の高さから、食品開発において多くの可能性を秘めています。国内の果物生産や消費の現状を踏まえ、これらの原料を積極的に活用することは、健康志向の消費者ニーズに応える製品開発につながると共に、安定した仕入れや食品ロス削減にもつながります。果物由来の原料を上手に活用することで、時代に求められる新たな商品開発が可能になるでしょう。
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