
日持ち向上剤10選〜食品の安全性向上やフードロス削減に貢献〜
日持ち向上剤とは、食品の保存性を短期的に高めるために使用される食品添加物のことです。保存料ほどの強力な効果はありませんが、食品の日持ちを良くすることができ、食品の安全性向上やフードロス削減に大きく貢献しています。
この記事では、食品開発の課題解決に役立つ日持ち向上剤をご紹介します。日持ち向上剤とは何か、日持ち向上剤の種類と特徴や保存料との違い、日持ち向上剤を選ぶ際のポイントも詳しく解説しますので、ぜひご覧ください。
食品開発の課題解決に役立つ、日持ち向上剤10選|メーカーもご紹介
味への影響とコスト削減を追求「好味酢曹」
シンプルかつ、日持ち向上剤として最も効果的な組成を追求したのが、株式会社タイショーテクノスの「好味酢曹」です。 添加する食品の味への影響が少ないのが特長。安価な価格設定で、かつ、添加量が少なくても効果を発揮するためコストの削減が可能です。
用途:惣菜類、水産練製品、水産加工品、農産加工品、漬物等の保存性向上、pH調整(※)、酸味の付与
※pH調整のpH(ペーハー)とは、食品の酸性度やアルカリ性の度合いを表す指標のことです。pHを適切に保つことで、食品の変質や変色を防ぎ、品質を保つことができます。
風味への影響が気になりやすい食品のpH調整に「K-TR」
株式会社ウエノフードテクノの「K-TR」は、少量添加で効果を発揮するように、各種食品腐敗菌に有効な酢酸成分の配合を高めたpH調整剤です。 従来の製剤よりも酸臭および酸味を低減しており、菓子類など風味への影響が気になりやすい食品でも使用できます。
用途:総菜、製菓・製パン、めん類、水産加工品など
油脂で果実酸をコーティング!保管・反応安定性を格段に高めた「コート果実酸M90, C80, C90, V80」
果実酸の総合メーカー扶桑化学工業株式会社の「コート果実酸」は、従来よりも保管・反応安定性を格段に高めた粉体製剤です。果実酸一粒一粒を油脂でコーティングすることで果実酸を高含有しつつも優れた反応制御を示します。酸との接触により悪影響を受けやすい原料素材との混合が可能です。
用途:菓子食品への酸味付与・物性改善、プロテイン粉末の分散性改善
揚げ物の色に影響を与えない「ランチフレッシュW」
扶桑化学工業株式会社の「ランチフレッシュW」は、グルコン酸ナトリウムを配合することで、食品の風味を損なわずに日持ち向上効果を発揮します。 揚げ物の揚げ色に影響を与えることなく、おいしさを長持ちさせることができます。
用途:揚げ物、めん類、総菜など
練り製品の坐りを阻害しない「ランチフレッシュDE」
扶桑化学工業株式会社の「ランチフレッシュDE」は、練り製品の坐りを阻害せず、酢酸臭や酸味を低減した中性タイプの日持ち向上剤です。グルコン酸ナトリウムを配合することで、食品の酢酸臭や酸味が低減できます。 ソルビン酸などの保存料が含まれておりません。
用途:水産加工品、総菜、調味料など
めんのおいしさ、しなやかさを持続させる「スーパー桂林」
めん類、粉物製品の生地のおいしさ、しなやかさの維持に役立つのが、扶桑化学工業株式会社の「スーパー桂林」です。アルコールの持つ静菌効果で、優れた保存性を発揮します。アルコールの揮散性を抑えることで、水分や旨みを発散させず、しなやかさが長持ちします。保湿性を保ち、熟成効果を高めます。味や色に影響を与えにくい原料です。
用途:めん類、餃子の皮など
クエン酸の力で米飯の黄変を抑制「ランチフレッシュR / RM」
扶桑化学工業株式会社の「ランチフレッシュR / RM」は、有機酸の中で最も酸味の出にくいグルコノデルタラクトンを配合。 米由来成分がグルコノデルタラクトンに由来する多少の酸臭を低減しつつ、炊飯や保温等による米飯の褐変を抑え、しっとり感や白さをキープします。粉末タイプの「ランチフレッシュRP」もおすすめです。
用途:米飯加工品など
日持ち+歩留向上を実現「ランチフレッシュα」
扶桑化学工業株式会社の「ランチフレッシュα」は、食品の日持ち向上、歩留り向上に役立つ中性タイプの酢酸ナトリウム製剤です。従来の日持向上剤製剤よりも酸味・酸臭を抑え、食品の風味にあまり影響を与えません。 緑色野菜や水産練り製品など各種食品に使用できます。
用途:畜肉製品、緑色野菜、水産練り製品、めん類、総菜
ビタミンB1の栄養強化剤としても効果を発揮「ビタゲン」
株式会社タイショーテクノスの「ビタゲン」は、ビタミンB1の栄養強化だけでなく、日持向上剤としても非常に有効です。一般細菌だけでなく真菌・乳酸菌に対しても強い抗菌活性を示します。
使用例)食肉加工品、総菜、飲料、冷凍食品、製菓・製パンなど
酸味・酸臭がマイルドな醸造酢生まれの粉末製剤「スマイティ」
株式会社ウエノフードテクノの「スマイティ」は、醸造酢を独自の製法で粉末化させた日持ち向上剤です。従来の粉末酢酸や酢酸ナトリウム製剤よりも、酸味・酸臭を低減。静菌力が高く、これまでの日持ち向上剤では静菌が難しかった耐熱性菌や乳酸菌、カビ・酵母に対しても効果を発揮します。
用途:総菜、ハム・ソーセージ、水産練製品、フィリング、パン・菓子類など
このほか、日持ち向上効果が期待できる原料
市田柿の果皮を原料としたアプサイクル原料「柿皮エキス」
南信州特産の「市田柿」の果皮を色差分解処理(熱水処理)をしエキスを抽出したのが、テクノマックス喬木株式会社の「柿皮エキス」です。柿由来ポリフェノール(柿タンニン)をはじめβカロテンなどを豊富に含みます。臭みのマスキングや賞味期限の延長、糖質の削減に寄与します。
用途: ぬか床、羊羹、あんこ、麺類、ヨーグルト、大豆ミートなどの副原料に
酢の日持ち向上機能を活かす「スーパービネガー20」
内堀醸造株式会社の「スーパービネガー20」は、国内最高酸度20%の高酸度醸造酢です。 アルコールを原料としたすっきりとしたシンプルな酸味で、酸味付与だけでなく、酢の機能を活かした日持ち向上目的で使用が可能です。 酸度が高いため、使用量を削減でき、コストパフォーマンスに優れています。
用途:肉製品、水産加工品、調味料、冷凍食品、総菜、飲料、健康食品など
日持ち向上剤とは
日持ち向上剤は、総菜やサラダなど保存性の低い食品について、数時間または数日といった短い期間、微生物の増殖を抑え、食品を長持ちさせる目的で使用されています。
食品の腐敗や変敗を抑制する食品添加物には、保存料や酸化防止剤、pH調整剤など、さまざまな種類がありますが、「日持ち向上剤」という用途名は食品添加物名簿にはなく、食品業界で用いられている言葉です。
近年の中食市場の拡大や、消費者の健康志向によって加工食品の低塩・低糖化が進み、保存性の低下を補うために日持ち向上剤の役割が重要になっています。
参考:一般社団法人日本食品添加物協会「食品添加物とは」
参考:広島県「『保存料』,『日持ち向上剤』について」
日持ち向上剤の主な種類と特徴

酢酸ナトリウム
幅広い細菌類の生育を抑える効果があります。 対象食品の制限はなく、日持ち向上剤として最もよく使われる食品添加物です。酢酸と聞くと「酸っぱい」というイメージがあるかもしれませんが、弱アルカリ性のためそこまで酸っぱさは感じません。pH調整剤や調味料、酸味料としても利用されています。
グリシン
微生物の細胞成分の生成を阻害することで、菌の活動・増加を抑え、食品の日持ちを向上させます。アミノ酸の一種であるグリシンは、イカやエビの呈味成分としても知られ、調味料としても使用されています。
リゾチーム
リゾチームは卵白から抽出される酵素です。リゾチームの溶菌作用により、細菌、特にグラム陽性菌である耐熱性芽胞菌に対して優れた静菌効果を発揮します。それにより、食品の日持ち向上に役立ちます。
チアミンラウリル硫酸塩
チアミンラウリル硫酸塩はビタミンB1誘導体の一種で、食品添加物としてビタミン強化・日持ち向上に用いられています。抗菌スペクトルが広く、一般細菌のみならず、真菌・乳酸菌にも効果を発揮します。
各種抽出物(唐辛子、ニンニク、ローズマリー、孟宗竹、ワサビ等)
食品の劣化抑制には、天然由来の抽出物も多く活用されています。例えば、ワサビの中に含まれるアリルカラシ油という揮発成分には、強力な抗菌力があり、寿司や刺身などの美味しさを引き立てるだけでなく、細菌の繁殖を抑制する役割も果たしています。
日持ち向上剤として使用される物質にはいろいろな種類がありますが、単独添加のほか、組み合わせて使用することで効果が高まるものもあります。食材や細菌に対して、効力のある成分を適切に配合して用いることが大切です。
参考:神戸化成株式会社「日持ち向上効果のあるアミノ酸 グリシンのご紹介」
参考:三菱ケミカル株式会社「リゾチームの静菌効果」
参考:奥野製薬工業株式会社「保存性を向上させる食品添加物の 作用機構と効果的な使用方法」
日持ち向上剤と保存料の違い
食品添加物には、安全性と有効性を確認して国が指定した「指定添加物」と、長年使用されてきた天然添加物として品目が決められている「既存添加物」があります。そのうち「保存料」は、食品中の微生物の増殖を抑制し、食中毒のリスクを低減することで食品の安全性を保つ役割を果たしています。使用できる食品や使用量について、食品衛生法上の使用基準が定められています。
一方、日持ち向上剤は、保存料と比べて微生物に対する効力が弱く、法令上の使用基準は定められていません。制限によって保存料が使えない場合や、保存料に対する偏ったイメージから保存料表示を避けたい場合によく利用されます。
日持ち向上剤は、保存料に比べて効果が穏やかなため添加量が多くなり、味に影響が出てしまう傾向があります。食品業界では、少量でも効果を発揮するものや、味に影響を与えにくい製品の研究開発が日々進められています。
日持ち向上剤を使用する際の食品表示
原則として、食品添加物を使用したときには、食品表示に「物質名」を記載することになっています。しかし、さまざまな種類や目的によって表示方法が変わります。
日持ち向上剤の場合は、「物質名」の代わりにpH調整剤や酸味料、調味料等の「一括名」として表記することもあります。例えば、グリシンは日持ち向上剤として使用されるアミノ酸ですが、イカやエビの呈味成分としても知られており、調味料として使われる場合もあります。このように、複数の効果のある食品添加物を使用する場合は、それを使用する主目的から表示方法を決めることになっています。
保存料や酸化防止剤、甘味料など8用途に使用される添加物には、「物質名」に加えて「用途名」の記載が必要です。
期間 | 表示方法 | 添加量 | |
---|---|---|---|
日持ち向上剤 | 短期間 | 物質名 | 制限なし |
保存料 | 長期間 | 保存料(物質名) | 物質ごとに制限あり |
参考:消費者庁「食品添加物表示に関するマメ知識(消費者向け)[PDF:806KB]」
参考:株式会社ウエノフードテクノ「食品添加物の役割と利用」
日持ち向上剤の使い分けのポイント
日持ち向上剤を選ぶときには、食品の種類や保存条件に応じた製剤を選ぶことが大切です。
たとえば、パンは、湿気を吸いやすくカビが生えやすいため、特に微生物の増殖を抑制することが求められます。総菜などでは、ph管理によって腐敗や劣化を抑制する方法があります。このように、添加する食品の物性や条件によって目的を明確にして、最適な原料を検討しましょう。
液体製剤と粉末製剤のメリット
食品開発において、製剤の形状は、保存性の高さや輸送の利便性、作業性の良さに大きく影響します。
一般に、液体製剤は、食品に均一に混ぜやすいというメリットがあります。溶解性が高く、迅速に効果を発揮する場合が多いです。一方、粉末製剤は、保存が容易で長期的な安定性が高い特長があります。輸送や運搬がしやすい、計量がしやすいなどの利点もあります。
酸味付与と酸味を抑えた製剤の使い分け
酸味付与ができる製剤は、食品に爽やかさや風味を加えたい場合に最適です。発酵食品やデザート、ドレッシングなど、酸味が好まれる食品に適しています。
酸味を抑えた製剤は、味に影響を与えたくない場合や、味をマイルドにしたい、特定の風味を引き立てたいときなどに選ぶと良いでしょう。
使用する食品の特性や実現したい風味、コストなどを考慮して、最適な製剤を選択することが大切です。
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