
増粘剤・ゲル化剤・安定剤とは〜多彩な食感でおいしさを演出!安全性や選び方もご紹介
増粘剤・ゲル化剤・安定剤は、食品になめらかな食感や粘り気を与え、安定性を向上させる食品添加物のことです。「糊料」や、簡略名で「増粘多糖類」とも呼ばれています。
食品開発においては、「弾力」「ぷるぷる」「とろとろ」など感性的な食感が、「味」や「香り」といった知覚的な要素に加えて、おいしさの決め手となることもあります。また、離乳食や介護食では、固さやとろみを調整して誤嚥を防ぐなど、安全性を高める重要な役割を果たしています。
この記事では、増粘剤・ゲル化剤・安定剤とは何か、種類と特徴のほか、安全性についても解説します。食品開発の課題解決に応じた選び方のポイントや関連商品もあわせてご紹介しますので、本記事を参考に、開発テーマや条件にあった原料をぜひ見つけてください。
増粘剤・ゲル化剤・安定剤とは
食品の成分表示欄で、私たちが目にする「増粘剤」「ゲル化剤」「安定剤」は、食品表示法における「用途名」です。これらの多くは「多糖類」と呼ばれる糖質で、添加物表示では、それを使用する主目的から表記を区別しています。ゲル化剤の場合、食品扱いとなりますが、ゼラチン(タンパク質)や寒天(海藻抽出物)を含みます。
増粘剤・ゲル化剤・安定剤の使用目的と使用例
増粘剤:増粘の目的で使用する場合
- たれやソース類、飲料などにとろみをつける
- たれやドレッシングをかけたときの付着性を改善する
- 食品の加工時に一定の粘度を付与して搬送の適正、充填時のハネを防止する
- 介護食の「とろみ剤」として使用し、嚥下時に適度な粘度を付与する
ゲル化剤:液体をゼリー状に固める作用(ゲル化)を目的に使用する場合
- ゼリーやプリンを固める、ジャムにとろみをつけて離水を防ぐ
- 食品の硬さを調整することでさまざまな食感を生み出す
- コンビニの麺のスープなどをゲル化して、レンジアップで液体とする
- ゲル化温度をコントロールすることで常温流通を可能にする
安定剤:粘性を高めて食品成分を均一に安定させる効果を目的に使用する場合
- ココアに粘度をつけて時間が経っても成分が沈殿しないようにする
- 酸性乳飲料のタンパク質の沈殿を防止する
- 飲料において成分が容器の首部分にリング状に浮くことを防止する
※参考:日本食品添加物協会「食品添加物の表示」
※参考:東京保険医療局「用途別 主な食品添加物/増粘剤、安定剤、ゲル化剤又は糊料」
増粘剤・ゲル化剤・安定剤の体への影響は? 増粘多糖類の安全性(危険性)
現在一般的に使用されている増粘剤・ゲル化剤は植物由来や海藻由来のもの、糖類(糖質)を原料に微生物発酵で得られるものがほとんどです。分類的には水溶性食物繊維の仲間で、同様の機能性が確認されているものもあります。(例:グァーガム分解物など)
ADI(※1)が設定されていないものも多く、使用基準(摂取量)が設定されていないものもあります。水溶性食物繊維となりますので、一度に摂取しすぎるとお腹がゆるくなることもあります。しかし、ゲル化剤や増粘剤として使用する添加量程度では、健康への影響に問題となることはほとんどありません。
※1:ADI(Acceptable Daily Intake)とは、ヒトがある物質を毎日一生涯にわたって摂取しても健康に悪影響がないと判断される量のこと。添加物や農薬など、意図的に使用されるものに対して使われる評価指標です。算出されたADIを基に使用基準が決められます。
代表的な増粘多糖類の種類と特徴
多糖類は、単糖が多数つながった物質の総称です。添加物表示では、多糖類を2種以上併用したものを簡略名で「増粘多糖類」と表すこともあります。
表示例)安定剤(増粘多糖類)など
多糖類には、植物由来、海藻由来、微生物由来などさまざまあります。代表的な物質の種類と特徴をいくつかご紹介します。
種類 | 特徴 |
---|---|
ペクチン | かんきつ類やリンゴの果皮などに多く含まれる多糖類
用途例)ジャム、ゼリー、アイスクリームなど |
寒天 | 紅藻類(Rhodophyta)に存在する粘性物質から抽出して得られる。歯切れがよく、比較的崩れやすい特徴を持つ
用途例)羊羹、ところてんなど |
カラギナン | 紅藻類(Rhodophyta)から抽出される多糖類。硫酸基の結合状態により、カッパカラギナン、イオタカラギナン、ラムダカラギナンの3種類に大別される
用途例)ハムやゼリーの弾力付与やソースの増粘、分散安定など |
グァーガム | 豆科植物の種子から得られる多糖類。粘りがあるどろどろした溶液になるのが特徴
用途例)ソースの増粘や佃煮の離水防止など |
キサンタンガム | キサントモナス属菌(Xanthomonas campestris)という微生物の発酵によって産生される。少量でも粘りがあり糸をひくような溶液になるのが特徴
用途例)ドレッシング、冷凍食品、カスタードクリームの他、とろみ調整食品等に |
増粘安定剤の中には、固めたりとろみを付けたりする以外にも、「揚げ物の衣をサクサクさせる、吸油を抑制する」「チーズの伸びを良くする」「麺の歯応え、つるみを調整する」「ハンバーグの離水を防ぐ」など、食感の向上や見た目の美しさを引き出す機能を持つ製品もあります。開発テーマや条件にぴったりの製品をぜひ見つけてください。
※参考:多糖類.com
※参考:オルガノフードテック株式会社「増粘多糖類」
※参考:太陽化学株式会社「“ぷるぷる”“どろどろ”の秘密! 増粘安定剤ビギナーズ」
食品開発の課題解決に役立つ、選び方のポイント
アプリケーションに応じた選び方
増粘剤・ゲル化剤・安定剤を選ぶときには、次のような点に配慮するとよいでしょう。
- 粘度付与:素材により粘度の性質(糸引き性)が異なるため、注意が必要
- ゲル化:口どけや搬送時の耐熱性、ゲルの硬さや離水の調整が必要
- フレーバーリリース(※2)のコントロール:粘度やゲルの硬さ、ゲル化剤の種類の選択でフレーバーリリースが変わってくるため、いろいろ試す必要がある
※2:フレーバーリリースとは、食品を口に含んだ時に感じる香りのこと。たとえば、ゼリーでいえば硬さや弾力、離水の出やすさなどで感じ方が変わります。粘性のある液体であれば、増粘させるための物質によって水の抱え込み方が異なるため、同様に香りの感じ方も変わってきます。適度な物性になったと思ってもおいしさの感じ方が違うときはこのフレーバーリリースが関係しているということになります。
単品製剤と複合製剤の使い分け
単品では、それぞれの規格の範囲に入ったゲル化力や粘度があり、メーカーにおいて最終的なコントロールが必要です。
ゲル化剤製剤などを使用する場合は、製剤メーカーが規格をコントロールしているため、一定の範囲内での製品づくりが可能です。単品でバラバラに購入すると原価的には安価にできますが、計量の手間が増えるということもあります。また、塩類の使い方なども含めて配合のノウハウや品質管理の力が問われます。
加工適正
先ほども少し触れましたが、増粘安定剤は、最終製品の物性や食感を決めるだけではありません。加工工程中に適度な粘度を付与することで、配管内やポンプ搬送、充填適性(ハネとびの抑制)の調整が可能となります(その場合でも使用したものの表示が必要です)。また、一部の増粘多糖類では生地もの(パンや麺類)で使用すると機械への付着が抑えられ、歩留まりの向上や洗浄の負担軽減につながったりと副次的な効果が期待できるものもあります。
製造工程に配慮する
増粘多糖類のポテンシャルを発揮するには、きちんと溶解することが必要です。また、塩類と反応して増粘やゲル化するタイプの物質では、ほかの原材料を把握したうえで製品を選ぶ必要があります。ですから、製品メーカーにサンプル依頼をする時には塩類(カルシウムやナトリウム、カリウム)などの含有量やpH、Brix(※3)などの設定もきちんと知らせると適切な製品を紹介してもらえるでしょう。
※3:Brix(可溶性固形分)とは、液体やゲル状の製品など水系のもので、中にどれだけ可溶性のもの(糖分や塩分、酸、アミノ酸など)が含まれているかを数値化したものです。Brixが高いほど水分が少なくなるので粘度が増したりゲルが固くなります。果実やジュースなどでは「糖度」と同義語になります。
増粘剤・ゲル化剤・安定剤のご紹介
シェアシマでは、食品の食感改良や価値向上に役立つ商品を数多く取り揃えております。シェアシマ会員様は、商品の規格書をダウンロードしたり、企業の担当者様に直接問い合わせをすることができます。ぜひご活用ください。
「やわゲルⓇ」シリーズ|株式会社タイショーテクノス
「やわゲル」は「食感」や「性質」を独自の加工技術で変化させた寒天・ゲル化剤です。 4種類のラインアップ (「やわゲル・寒天」「やわゲル・こんにゃく粉」「やわゲル・Gマンナン」「LBGやわゲル・カラギナン」)があり、新しい食感を創作することができます。
ヒートゲル極|ユニテックフーズ株式会社
メチルセルロース(ヒートゲル)、HPMC(ヒートゾル)は植物パルプを原料として得られる多糖類です。加熱すると増粘もしくはゲル化するというユニークな特徴を持ちます。レンジアップ商品や惣菜の品質改良に利用されています。
ジェルプロA10|ジー・エス・エル・ジャパン株式会社
タイ大手タピオカでん粉メーカー、GSL(General Starch Limited)社が製造する汎用タイプの加工タピオカでん粉です。 増粘剤として、また食感の改良ーもちもち感、ぷよぷよ感、サクサク感、つるつる感など感応性味覚を向上させる素材として使用できます。
ゲル化剤製剤 CC-50|マリン・サイエンス株式会社
カシアガムとカラギナンで構成されるゲル化剤製剤です。 相場が左右されやすいローカストビーンガムの代替としてご検討いただけます。80℃以上での溶解が可能で扱いやすく、強度、弾力に富んだゲルを形成します。ゼリーやグミ、ソーセージ、ハンバーグなどに。
【安定剤】FRUTTANEVE フルッタネーヴェ|株式会社丸冨士
自家製イタリアンジェラートの伝統に基づきカルピジャー二社が開発した、天然素材からできた安定剤です。 FRUTTANEVEを使用して作った自家製シャーベットは非常に滑らかで、へらで伸ばしやすく、またオーバーランが高い製品になります。
【ゲル化剤】イナアガーF|株式会社丸冨士
冷凍しても離水が少なく、なめらかな食感を保つ新しいタイプのゲル化剤です。ゼラチンと違い、仕込んだデザートを冷凍保存することが可能な画期的な業務用凝固剤です。冷凍保存ができるため、製造効率の改善や商品廃棄の削減に貢献します。もちろん常温でも凝固します。
【製菓用寒天】ル・カンテンウルトラ|株式会社丸冨士
「低ゼリー強度寒天」として特許を取得した新食感のゲル化剤です。 寒天の分子を短くすることでかっちりと固まらないようにゲル化強度を調整し、なめらかでとろっとした食感を実現します。さらに洋菓子の素材として使いやすいよう、顆粒状にすることで溶解性を高めています。
レオレックスRS|清水化学株式会社
100%コンニャクイモ由来の水溶性食物繊維です。水のみで素早く粘度が発現し、強い水分保持力があります。他の多糖類との併用で相乗効果があり、耐酸性及び耐塩性、安定性に優れています。食物繊維の含有量は95%以上と高く、便通改善・血糖値の上昇抑制・血中コレステロール低減などに効果が期待できます。
テクスチェンジャー|株式会社遠藤商会
既存のソースの液性変更や具材感を向上させることができます。 魚卵加工品へ使用することで歩留向上やドリップ防止剤(吸水)として使用することも可能です。 透明度が高く、味や香りに影響を与えにくいため、幅広い食品に使用できます。
その他関連商品
このほかにも、素材の特性を活かして食品にとろみや粘性をつけることのできる原料もあります。
MaCSIE Iyo|愛媛製紙株式会社
柑橘搾汁残渣を中心とした植物性食品廃棄物に含まれるセルロースを製紙の技術により、ナノファイバー化したアップサイクル食品原料です。 セルロースナノファイバーの3次元ネットワーク構造には高粘性、チクソトロピー性、乳化能などの物理的特性を持ち、様々な食品の品質向上が期待できます。
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増粘安定剤を上手に活用することは、食品の見た目や食感を良くしたり、コストダウンを図って商品価値を高めたりするのに非常に有効です。
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