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完全栄養食とは?商品開発者が知っておきたい市場の動向と人気事例、開発の視点

完全栄養食とは?商品開発者が知っておきたい市場の動向と人気事例、開発の視点

「完全栄養食」という言葉をよく見聞きするようになりましたが、具体的にどのようなものなのかご存知でしょうか。忙しい現代人のニーズに応える分野として、完全栄養食は新しい市場を切り拓いています。

この記事では、商品開発者として知っておきたい完全栄養食の基本、今どんな商品が支持されているのか、市場の動きや開発のヒントまでわかりやすく解説します。食品開発に携わってる人は、ぜひ参考にしてみてください。

完全栄養食とは|定義と背景


完全栄養食という言葉は聞いたことがあっても、その正確な定義や登場した背景はよくわからないという人も多いかもしれません。ここでは、商品開発者が抑えておくべき完全栄養食の概要について解説します。

完全栄養食の定義・意味

完全栄養食とは、厚生労働省が定める「日本人の食事摂取基準」に基づき、必要な栄養素をひとつの食品で摂取できるように作られた食品のことです(※)。

短時間で食事を済ませながらも、栄養不足や偏りを防ぎたいというニーズに応える商品が多く登場しています。1食を置き換えたり、普段の食事にプラスしたりして利用されるケースもあります。

一方で、完全栄養食には、法的に明確な定義はありません。各社が独自に基準を設定している場合も多く、もし特定の栄養素が抜けていたとしても「法律違反とは言い難い」というのが実情です。

こうした背景から、消費者庁は2024年7月「完全栄養」という表示が、健康増進法が定める誇大表示の禁止に抵触する可能性があると注意換起をしています。商品を選ぶ際には「栄養成分表示の確認を習慣化する」ことなどを消費者に推奨しています。

「日本人の食事摂取基準」は、健康を維持し、病気を予防するために必要な栄養素の摂取量を示した指針です。これらの基準は、年齢、性別、身体活動レベル、ライフステージ(妊娠中や授乳中など)によって異なります。より詳しく知りたい方は、厚生労働省のサイトで確認できます。
※参考:全国健康保険協会「『完全栄養食』で完璧な身体に!?」

完全栄養食が登場した背景と市場の動向

完全栄養食が登場した背景として、大きく2つの要因があります。それは、共働き世帯の増加やライフスタイルの多様化による「時短ニーズ」と、新型コロナウィルスの流行を背景にした「健康志向の高まり」が挙げられます。

特に若年層やビジネスパーソンを中心に、「栄養は摂りたいが調理や食事に時間をかけられない」というニーズが増えています。こうした背景から市場は拡大し、2030年の国内市場規模は、2021年比8.5倍の546億円と予測されています(※)。
※参考:富士経済グループ プレスリリース「完全栄養食の国内市場は546億円(2030年予測)」

完全栄養食が注目を集める理由



完全栄養食はなぜこれほど注目を集めているのでしょうか。ここでは、現代のライフスタイルと健康・環境意識の変化から、注目されている理由について解説します。

忙しい現代人にとっての「手軽さ」

完全栄養食には調理不要で持ち運びがしやすいものが多く、短時間で栄養を摂取できることが最大の特徴です。忙しい朝や昼食時における栄養補給の代替手段としてだけでなく、災害備蓄・非常食用途としての需要も増えています。

健康やサステナブルへの意識の高まり

健康維持・体調管理への意識が高まる中で、特定の栄養素の不足を補うだけでなく「食を通じた健康管理ツール」としての役割が期待されています。また、昆虫食や植物性原料を活用した環境負荷の低い完全栄養食の開発も進んでいて、サステナビリティへの対応が企業のブランド価値向上にもつながっています。

★原料商品の掲載を希望される企業様は、会員登録(無料)で10品まで掲載可能です。

商品事例

実際にどのような商品が市場で展開され、どのように支持を集めているのでしょうか。ここでは、日本国内で注目されている商品事例を4つ紹介します。

BASE FOOD|ベースフード株式会社

写真提供:ベースフード株式会社

「BASE BREAD」「BASE PASTA」「BASE Cookies」など、パン・パスタ・クッキーなどの日常食に栄養を組み込んだ商品が人気です。1食で1日に必要な栄養素の3分の1以上を摂取できるように設計されているのが、大きな特徴です。味や食感にも工夫が凝らされ、全粒粉や大豆粉を使用しながらも食べやすく、栄養価の高さと美味しさを両立しています。
※参考:ベースフード株式会社「BASE FOOD」公式サイト

完全メシ|日清食品

写真提供:日清食品株式会社

インスタント食品大手の日清食品が展開する「完全メシ」は、33種類の栄養素とおいしさのバランスを追求した商品です。カップ麺・カップライス・ドリンク・パスタソースのほか、冷凍食品など数多くの商品ラインナップがあります。日清食品の最新フードテクノロジーを駆使して栄養素独特の苦みやエグみをおさえることで、普段の食事と変わらないおいしさを実現しています。
※参考:日清食品「完全メシ」公式サイト

完全食おにぎり「COCOMOGU」|オルビス

写真提供:オルビス株式会社

スキンケアやインナーケアで知られるオルビスが展開する完全食おにぎり「COCOMOGU」は、健康意識の高い女性に人気の商品です。日本人の主食である「お米」に、鮭・鶏肉・鯖・ひじき・大葉・ナッツなど、さまざまな素材を組み合わせることで、一日に必要な30種類以上の栄養素をおいしく摂ることができます。
※参考:オルビス「完全食おにぎり『COCOMOGU』」公式サイト

雑な完全食|はくばく

雑穀や麦製品で知られるはくばくが展開する「雑な完全食」では、雑穀を取り入れるだけの栄養バランスの良い食事を提案しています。1メニューあたり、3色食品群に基づく食品(赤・黄・緑)を各1種類以上含み、食物繊維やビタミン、ミネラルを含む雑穀を使用しています。雑穀ならではの自然な味わいと食べ応えが魅力です。
※参考:はくばく「雑な完全食」公式サイト

食品開発者に求められる3つの視点とは?

完全栄養食の開発に取り組む際、栄養価の基準を満たすことは大前提ですが、それだけでは消費者に選ばれる商品になるとは限りません。ここでは開発時に押さえておきたいポイントを3つの視点で整理します。

消費者のニーズを正確に把握する

完全栄養食を求める消費者は「健康維持」「時短」「環境意識」「ダイエット」「美容」など多様な動機を持っています。どのニーズを満たす商品なのかを明確化し、購買層の用途やシーンを具体化することが重要です。

栄養バランス×おいしさ×続けやすさの両立

完全栄養食は栄養価が高いだけでは、継続して支持される商品にはなりません。栄養バランスだけでなく、食感(パサつき・べたつき・固さの調整)や味付け、量(腹持ちとカロリーバランス)についても検討が必要です。

購買層がどのようなシーンで利用するのかを具体的にイメージした上で、商品の設計をすることが求められます。

類似商品との差別化

完全栄養食市場は新規参入が増えていて、類似製品との差別化が重要です。差別化ポイントとしては、ターゲット層(誰に向けた商品なのか)や味・食感・調理方法を吟味することも大切です。

また、サステナビリティの視点から検討することも有効で、「植物由来素材」や「地産地消の原料」など、購買層のニーズに合わせた商品のブランドづくりが求められます。

この他、継続的な購買を促す仕組みとして、サブスクリプションや定期便販売の仕組みを考えることも効果的です。

まとめ

完全栄養食は、忙しい現代人の栄養管理の課題を解決し、健康意識やサステナビリティへの関心の高まりにも応えるものです。今後も市場拡大が見込まれていて、これからの食品開発においても重要なテーマになると予測されます。

購買層に継続して選ばれる完全栄養食の商品を開発するには、栄養だけでなく、「おいしさ」「続けやすさ」「ブランドの方向性」などを複合的に設計することが重要です。

 

執筆者プロフ シェアシマ編集部

食品業界に携わる方々に向けて、日々の業務に役立つ情報を発信しています。食品業界の今と未来を示唆する連載や、経営者へのインタビュー、展示会の取材、製品・外食トレンドなど話題のトピックが満載!さらに、食品開発のスキルアップや人材育成に寄与するコンテンツも定期的にお届けしています。

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