
注目集まるプラントベースエッグ「畑から生まれたたまご」とは~JA全農たまご×カゴメ×シェアシマが語る、開発とこれから~
近年、食品業界で注目を集めている「プラントベースエッグ(植物性たまご)」。その背景には、食に対するニーズや価値観が多様化し、より多くの選択肢が求められるようになったことも大きく関係しています。
今回、植物由来のたまご「畑から生まれたたまご」の開発に携わったお二人に食品業界の流通支援を行うICS-net株式会社代表の小池祥悟がインタビューを行いました。
話を聞いた人
- JA全農たまご株式会社 加工品事業本部 宮﨑こはるさん
- カゴメ株式会社 マーケティング本部 江坂駿さん
開発の経緯やこだわり、今後の展望について、詳しくお話を伺っています。

プラントベースエッグはなぜ生まれたのか
JA全農たまご株式会社 加工品事業本部 宮﨑こはるさん
たまごは日本人にとって身近な食材である一方、さまざまな事情から食べることができない方も少なくありません。そこで、JA全農たまごとカゴメが共同開発したのが植物性のたまご、「畑から生まれたたまご」です。
この商品は国産の白いんげん豆とにんじんを使用し、本物のたまごのようなコクや味を再現していて、多様なニーズに応える新たな選択肢として注目されています。
小池(シェアシマ、以下同様):プラントベースエッグ「畑から生まれたたまご」を開発したのはいつ頃ですか。また、どんなきっかけがあったのでしょうか。
宮﨑さん(全農たまご、以下同様):2023年頃から開発に着手し、2024年4月のECサイトでの先行販売を経て、現在は主に量販店で展開しています。弊社はJA全農グループの中で、鶏卵の流通を専門とする企業として、「たまごを食べる当たり前の毎日」を支えたいと考えています。
しかし、その「当たり前」は、まだ全ての方のものではありません。みんなで同じ食卓を囲む喜びを届けたい、という想いが商品開発の原点です。
また開発にあたり、カゴメ株式会社の社員の皆さまに全面的にご協力いただきました。まるで本物のたまごのような“ふわとろ食感”は、同社と2foodsの独自技術「野菜半熟化製法」の提供を受けて実現したものです。
食の多様性に応える“もうひとつのたまご”
小池:この商品を販売して、反応はいかがでしたか。
宮﨑さん:イベント等でお客様の声を直接お伺いする機会もあり、嬉しいご感想をいただいています。
たとえば、食に制約のあるお客様からは「たまごに見えるけれどたまごではないため、オムライスなど家族と同じものを食べている感覚になる」というお声をいただきました。また、ヴィーガンのお客様からは「家族で一人だけヴィーガンのため、一人でも使い切りやすいサイズが便利」というご意見も頂戴しています。
量販店様においては、今年の春先に鳥インフルエンザの影響で鶏卵が品薄になった際、本商品を活用いただいた場面もありました。
江坂さん(カゴメ、以下同様):当社ではプラントベースエッグの市販品と業務用も扱っていて、問い合わせも増えています。具体的には、ホテルの仲介に入っているような問屋さんからの案件も増加中です。ビーガンやベジタリアンの人に対して提供したいという声もあります。

★原料商品の掲載を希望される企業様は、会員登録(無料)で10品まで掲載可能です。
誰もが同じ食卓を囲める「食のダイバーシティ」を目指して
小池:たまごの会社がプラントベースエッグを作っているという部分に、個人的に興味を持ちました。
宮﨑さん:ありがとうございます。私たちはたまごの会社であると同時に、JA全農グループの一員でもあります。この商品は、JA全農の「ニッポンエール」というブランドから発売されています。
ニッポンエールは、国内各地で生産される農畜産物の魅力を商品を通じてお客様へお届けすることを目的としています。「畑から生まれたたまご」で使用されている白いんげん豆やにんじんも、日本の畑で収穫されたものを使用しています。
江坂さん:アメリカではプラントベースエッグが日本と比較すると徐々に普及してきています。日本でも今後もっと身近な存在になっていければと感じています。
小池:今後の販売展開はどのようにお考えですか?
宮﨑さん:現在は家庭用の販売を中心にしていますが、今後は業務用にも力を入れていきたいと考えています。畑から生まれたたまごを使用した惣菜やメニュー提案なども今後は取り組んでいきたいです。
江坂さん:量販店はもちろんですが、ECサイトなども活用しながら、より多くの方に届けていきたいと思います。食の選択肢のひとつとして、当たり前に「プラントベースのたまご」がある未来を目指したいですね。
代替品ではなく「新たな“たまご文化”」へ
すべての人にたまご料理を食べる喜びを届けたい——。そんな想いから生まれたプラントベースエッグ「畑から生まれたたまご」は、単なる代替食品ではなく、未来の食卓を豊かにする新たな「たまご文化」へのきっかけとなることが期待されています。
これまでたまごを諦めていた人だけでなく、たまごが大好きな人も、みんなで同じ食卓を囲める。そんな未来を、「畑から生まれたたまご」は静かに支えています。


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