食品会社だからできる“もう一つの贈り物”【食品企業のためのサステナブル経営(第34回)】
前回の記事を読む:食品ロス削減は、ここからが本番 ――「もったいない」から「価値を生み出す」時代へ【食品企業のためのサステナブル経営(第33回)】
食品会社で働く皆さまにとって、年末年始はまさに書き入れ時だと思います。華やかな季節商品が並び、家庭の食卓を彩る製品づくりに一層力が入る特別な季節です。忙しさの中にも、「食で人を笑顔にする」という誇りを胸に仕事をしていらっしゃる方も多いでしょう。
一方で、この季節は母子家庭にとって一年のうちで最も厳しい時期であることをご存知でしょうか。学校が長期休暇に入ることで給食がなくなり、毎日の食事をすべて家庭で用意しなければなりません。お昼を食べられない日があるお子さん、主な栄養源だった給食がなくなることでより空腹を抱えるお子さんもいます。暖房が欠かせない季節で光熱費は上がり、年末年始はアルバイトやパートの勤務日数が減って収入が下がることも珍しくありません。家計が最も苦しくなるときに、出費だけが増えていく。この現実を知るたびに、胸が締めつけられる思いがします。
私が毎月少しだけ支援している母子家庭支援のNGOからも、12月になると窮状を訴えるメッセージが届きます。「クリスマスが憂鬱です」「新年を迎えられるかどうか不安です」。そんな言葉に触れると、私自身も胸をぎゅっと掴まれるような感覚を覚えます。寄付額を少し増やすのですが、私一人にできることはごくわずかです。もっと誰かの救いに変わる“回路”を太くできたらと願わずにはいられません。
そして、その回路を太くする力を、実は食品会社の皆さまが最も持っているのではないか。そう思って、今月は皆さまに私からのお願いをしたいと思います。
食卓の光と、その光が届かない家庭
足立直樹
サステナブル経営アドバイザー。株式会社レスポンスアビリティ代表取締役。東京大学理学部卒業、同大学院修了、博士(理学)。植物生態学の研究者としてマレーシアの熱帯林で研究をし、帰国後、国立環境研究所を辞して独立。その後は、企業と生物多様性およびサステナブル調達の日本の第一人者として、日本の食品会社、飲料会社、流通会社、総合商社等の調達を持続可能にするプロジェクトに数多く参画されています。2018年に拠点を東京から京都に移し、地域企業の価値創造や海外発信の支援にも力を入れていて、環境省を筆頭に、農水省、消費者庁等の委員を数多く歴任されています。