「過剰に食べさせない」という誠実さ【食品企業のためのサステナブル経営(第35回)】
前回の記事を読む:食品会社だからできる“もう一つの贈り物”【食品企業のためのサステナブル経営(第34回)】
あなたは、キットカットの大袋の裏面に、ある「ブレーキ」が書かれていることに気づいているでしょうか。
「1日2枚までがおすすめです」
商品やパッケージの版によって表現には多少の違いがありますが、大袋で販売しながら、摂取量の目安を明示している点は共通しています。さらに、「お子様に与える場合は、適切に調整してください」といった注意書きが添えられている商品もあります。
キットカットの大袋の裏面に書かれたメッセージ
メーカーにとって、商品は一袋でも、一枚でも多く食べてもらったほうが、短期的には売上が伸びます。それにもかかわらず、なぜネスレ日本は、「今日はここまでにしておきましょう」と、あたかも消費にブレーキをかけるような表示をしているのでしょうか。
これは日本独自の思いつきではありません。背景には、欧州を中心に進んでいる、食品企業に対する「健康への責任」をめぐる環境の劇的な変化があります。
「売れればよい」という前提の崩壊
足立直樹
サステナブル経営アドバイザー。株式会社レスポンスアビリティ代表取締役。東京大学理学部卒業、同大学院修了、博士(理学)。植物生態学の研究者としてマレーシアの熱帯林で研究をし、帰国後、国立環境研究所を辞して独立。その後は、企業と生物多様性およびサステナブル調達の日本の第一人者として、日本の食品会社、飲料会社、流通会社、総合商社等の調達を持続可能にするプロジェクトに数多く参画されています。2018年に拠点を東京から京都に移し、地域企業の価値創造や海外発信の支援にも力を入れていて、環境省を筆頭に、農水省、消費者庁等の委員を数多く歴任されています。