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食の転換は、食卓からではなく、商品企画会議室から始まる【食品企業のためのサステナブル経営(第36回)】

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前回の記事を読む:「過剰に食べさせない」という誠実さ【食品企業のためのサステナブル経営(第35回)】

前回は、海外で急速に進む「栄養成分表示の義務化」について紹介しました。「売れればよい」という発想が通用しなくなり、食品そのものの中身が問われる時代に入っている、という話です。実はこの流れの“さらに一段先”に、いま世界が向かい始めているテーマがあります。

長い間、食品業界の成功条件はシンプルでした。「おいしいものを、安く、安定的に供給する」。そして「売れればよい」、「お客さんが喜んでくれればよい」。たしかに、これはある時代までは正しかった考え方です。今でも部分的には正しいと言えるでしょう。食料不足が深刻だった時代には、量と価格の安定こそが社会貢献でしたし、豊かになるにつれて、より美味しいもの、これまでにない商品を提供すれば市場も応えてくれました。

しかし、いま私たちは明らかに別のフェーズに入っています。もはや「おいしくて安い」だけでは十分ではありません。健康への影響をどう考えるかという問題は、前回ご紹介した通りです。それに加えて近年は、人の健康だけでなく、「地球の健康」にも良いことが求められるようになってきました。その両方を同時に満たす食品を届ける責任が、食品会社に求められる時代に変わりつつあるのです。

特に海外市場ではこの動きが顕著です。国内市場だけを見ていて、この流れが日本に及ばないと考えるのは楽観的すぎるでしょう。そして重要なのは、これは理想論ではないということです。世界の制度、投資、科学が、その方向に一斉に動き始めているからです。

その象徴が、医学・公衆衛生分野で世界最高峰の学術誌のひとつであるThe Lancet(ランセット)が2025年に公表した国際委員会の報告です(※)。ランセットは、各国政府や国際機関の政策形成にも影響を与える「世界標準」をつくる場です。日本では一般的な知名度は高くありませんが、海外では極めて重い意味を持つ存在です。

そのランセットが示したメッセージは明快でした。「食の転換は、消費者の努力だけでは実現しない。食品産業が商品の設計を変えなければ、地球規模の問題は解決しない」。

選んでいるのは消費者、設計しているのは食品会社

執筆者プロフ 足立直樹

サステナブル経営アドバイザー。株式会社レスポンスアビリティ代表取締役。東京大学理学部卒業、同大学院修了、博士(理学)。植物生態学の研究者としてマレーシアの熱帯林で研究をし、帰国後、国立環境研究所を辞して独立。その後は、企業と生物多様性およびサステナブル調達の日本の第一人者として、日本の食品会社、飲料会社、流通会社、総合商社等の調達を持続可能にするプロジェクトに数多く参画されています。2018年に拠点を東京から京都に移し、地域企業の価値創造や海外発信の支援にも力を入れていて、環境省を筆頭に、農水省、消費者庁等の委員を数多く歴任されています。

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