食品ロス削減は、ここからが本番 ――「もったいない」から「価値を生み出す」時代へ【食品企業のためのサステナブル経営（第33回）】
足立直樹
前回の記事を読む：値上げの時代に、食品メーカーが進むべき道【食品企業のためのサステナブル経営（第32回）】
今年発表された最新の統計によると、2023年度の食品ロスは推計464万トン。このうち事業系は231万トンで、2020年度比で58%もの削減を達成しました。日本は2000年度比で2030年までに50%削減という目標を掲げていましたが、事業系においてはこれを完全に達成したのです。製造・流通などの事業者が努力を重ねてきた証であり、皆様のこれまでの取り組みに深く敬意を表したいと思います。
一方で、家庭系は233万トン（2000年比46%減）と、事業系に比べて削減が進んでおらず、50%という目標にも届いていないのが現状です。
こうした状況を受け、政府は今年、新たに「2000年度比で2030年までに60%削減」という、さらに高い目標を設定しました。事業系に限って言えば、その達成は十分に視野に入っていると言っていいでしょう。それでも敢えて、私はここからが本当の勝負どころだと考えます。
なぜなら、もともと原材料の約3割がロスになっていたことを考えると、60%減を達成してもまだ原材料の10%以上が無駄になっている計算になるからです。そして現在の食ロスから発生するGHG（温室効果ガス）はCO2換算で1050万トンにもなり、けっして看過できる量ではありません。
一方で、海外では食品廃棄物の発生10%以下を実現している国もあり、中には5%以下を目標に掲げる国もあります。10%以上に相当する「2000年比60%減」で満足するわけにはいかないのです。
家庭の食品ロスは、メーカーの課題でもある
足立直樹
サステナブル経営アドバイザー。株式会社レスポンスアビリティ代表取締役。東京大学理学部卒業、同大学院修了、博士（理学）。植物生態学の研究者としてマレーシアの熱帯林で研究をし、帰国後、国立環境研究所を辞して独立。その後は、企業と生物多様性およびサステナブル調達の日本の第一人者として、日本の食品会社、飲料会社、流通会社、総合商社等の調達を持続可能にするプロジェクトに数多く参画されています。2018年に拠点を東京から京都に移し、地域企業の価値創造や海外発信の支援にも力を入れていて、環境省を筆頭に、農水省、消費者庁等の委員を数多く歴任されています。
