食品の企画開発をサポートする

ペットフードの最新動向。食品ロス削減にもつながる人気商品と開発のヒント

ペットフードの最新動向。食品ロス削減にもつながる人気商品と開発のヒント

ペットを家族の一員として捉える意識が広がるなか、ペットフードにも「何を使っているか」「どのようにつくられているか」といった付加価値が求められるようになっています。

その一方で、食品業界では、規格外品や食品製造の副産物など、まだ活用できる素材を新たな商品へと生まれ変わらせる取り組みも広がっています。

本記事では、未利用素材を活用したペットフードの事例を紹介しながら、食品開発に応用できる視点を考えます。

進化するペットフード市場



ペットフードは「ペットのための食事」から、素材や製法、地域性などを含めて選ばれる商品へと広がっています。

一般社団法人ペットフード協会の「2024(令和6)年度ペットフード産業実態調査」によると、ペットフードの出荷総額は4594億2300万円で、前年度比105.6%。9年連続で増加しています。一方、出荷量は56万7724トンで、前年度比99.0%と3年連続で減少しました。協会は、付加価値の高い商品開発などを背景に、出荷総額が伸びたとしています(※)。

ペットフードに求められるのは、味だけではありません。原材料の安全性や品質管理、表示なども重要な要素です。素材や品質、製法、表示まで丁寧に吟味し、商品価値を高める動きが広がっています。
※参考:一般社団法人ペットフード協会「2024(令和6)年度ペットフード産業実態調査」「 ペットフード流通量調査」

ペットフードに期待される新たな商品価値

健康や安全性に加えて、素材の背景や社会的な意義まで含めて商品を選ぶ消費者も増えています。ここでは、ペットフードに見られる二つの価値に注目します。 

ヒューマングレードへの関心

ペットフードでは、人が食べる食品に使われる原材料を使用した商品や、人向け食品と同様の品質管理をアピールする商品が見られます。たとえば、後述する「乳酸菌おから」では、国産おからなど、人向け食品に使用される原材料を使っていることを商品特徴として紹介しています。

ここで重要なのは、「人が食べられる」という一言だけで品質を判断するのではなく、原材料の由来、製造工程、品質管理、表示などを含めて、商品の安心感をどう設計するかという視点です。

ペットフード協会も、ペットフードに使用される原料について安全性を確保するための法制度が整備されており、原料の品質管理やトレーサビリティが重要であるとしています。つまり、原材料名や産地だけでなく、「どこから来て、どのように加工され、どのような管理を経て商品になったのか」という情報そのものが、商品の価値になり得ます。

未利用食材を新たな価値に

食品業界では、規格外品や製造工程で生じる副産物など、これまで十分に活用されてこなかった素材を新たな商品へと生かす取り組みも行われています。ペットフードも、その受け皿のひとつです。

たとえば、うなぎ専門店がこれまで活用しにくかった「うなぎの頭」を犬用おやつにした商品や、食品製造で生じるおからを活用した商品、規格外野菜を乾燥させた犬用おやつなどがあります。

こうした商品は、単に「廃棄されるはずだったものを使った」というだけではありません。素材が持つ栄養や風味、地域性などを捉え直し、新しい商品価値として提案している点に特徴があります。

★原料商品の掲載を希望される企業様は、会員登録(無料)で10品まで掲載可能です。

話題のペットフード商品3選

実際の商品を見ると、未利用素材がどのように新しい価値へ変換されているのかが見えてきます。ここでは、素材の特徴が異なる3つの事例を紹介します。 

うなぎの頭を活用した「UNADOG」 

茨城県つくば市のうなぎ専門店「とよ長」が展開する「UNADOG」は、国産うなぎの頭を活用した犬用のおやつです。原材料は、国産うなぎの頭。中・大型犬向けの硬さのある商品のほか、小型犬向けの柔らかいタイプもあります。保存料、着色料、香料、酸化防止剤などは使用していません。

うなぎ専門店だからこそ扱える素材を、その店ならではの製法と組み合わせて商品化している点が特徴です。「廃棄される素材を使う」という発想だけでなく、自社が持つ原料調達や加工のノウハウを生かした事例です。
※参考:犬と猫と鰻オンラインショップ「UNADOG」

国産おからを使った「乳酸菌おから」 

「乳酸菌おから」は、国産おからに乳酸菌などを組み合わせた犬・猫用の手作り食材です。おからは、大豆から豆乳をつくる際に生じる食品素材で、食物繊維などを含んでいます。「乳酸菌おから」では、国産おから、乳酸菌、オメガ3粉末を原材料として使用。水やぬるま湯を加えて戻し、普段のフードに混ぜるトッピングとして利用できます。

この商品の特徴は、素材そのものを活かすだけでなく、使い方まで含めて新しい価値を設計していることです。「おから」という素材を単独で販売するのではなく、ペットの食事に取り入れやすい形に加工することで、食品副産物を新たな商品として提案しています。
※参考:帝塚山ハウンドカム「乳酸菌おからwithフィッシュ」

規格外野菜を活用した「seaside kitchen」 

兵庫県淡路島の「seaside kitchen」は、規格外や売れ残りなどのため廃棄される野菜を買い取り、犬用の乾燥野菜やおやつに加工しています。使用するのは、形や色、大きさなどが規格外となった野菜や、食べられるものの通常は廃棄される葉や茎など。小さくカットして乾燥させ、犬用のおやつとして販売しています。

また、製造工程で発生する不可食部は肥料として再利用するなど、商品そのものだけでなく、製造工程も含めて廃棄物を減らす仕組みを構築しています。さらに、淡路島産という地域性を前面に出している点も特徴です。「規格外」という弱みに見えやすい要素を、地域性やストーリー、製法と組み合わせて商品の個性へ変えている好事例です。
※参考:seaside kitchen「淡路島産規格外野菜を使ったドッグフード・犬用おやつ」 

食品開発に活かしたい3つの視点 

今回紹介した事例から、食品開発に応用できるヒントが見えてきます。 ここでは3つの視点に整理して解説します。


未利用素材の価値を再定義する

未利用素材を商品開発に生かすとき、「廃棄されるものだから使う」という発想だけでは、商品の魅力を十分に引き出せないことがあります。

たとえば、うなぎの頭なら、うなぎ由来の栄養や風味、専門店ならではの加工技術があります。規格外野菜なら、形が不揃いでも味や栄養が保持されているという特徴があります。

まずは「未利用」「規格外」という言葉から少し離れて、その素材にはどんな味や香り、栄養、機能、加工適性があるのかを見直すことが大切です。そのうえで、どのような商品なら素材の魅力を生かせるのかを考えると、新たな用途が見つかる可能性があります。

素材のストーリーを商品の魅力に

素材がどこから来たのか、誰がつくったのか、なぜこれまで利用されてこなかったのか。こうした背景も、商品の価値になり得ます。

「seaside kitchen」のように、地域で生産された規格外野菜を活用する場合は、「淡路島産」という地域性と食品ロス削減という取り組みを組み合わせることで、素材そのものだけでは語りきれない魅力を伝える工夫をしています。

食品開発では、味や機能性など商品の中身だけでなく、その素材が生まれた背景まで含めて、どんな価値を届けるのかを考えることが重要です。

継続できる商品設計を考える

社会的な意義のある商品でも、原料が安定して調達できなければ、継続的な商品供給は難しくなります。未利用素材を活用する場合は、原料の発生量や季節変動、品質のばらつき、衛生管理、加工方法、保存性、物流、コストなど、通常の商品開発とは異なる点も検討する必要があります。

特にペットフードは、安全性や表示などについて法的な基準が設けられています。販売用ペットフードを製造・販売する場合は、ペットフード安全法に基づく対応も必要です(※)。

「食品ロス削減につながる」という視点だけでなく、安全に、安定して、適正な価格で届け続けられるかまで含めて設計することが、事業としての持続可能性につながります。
※参考:環境省「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(ペットフード安全法)」 

まとめ

利用素材や規格外品を活用したペットフードには、食品ロス削減だけではない、さまざまな商品開発のヒントがあります。

大切なのは「廃棄される素材を使う」ことをゴールにするのではなく、素材そのものが持つ味や栄養、加工適性、地域性などを捉え直し、そこに新しい価値を見いだすこと。

さらに、原料調達から加工、品質管理、コスト、保存性までを含めて、継続的に商品を届けられる仕組みを考えるという視点も欠かせません。ペットフードという一つの市場を入り口に、身近な食品素材を「まだ使える資源」として見直してみると、新しい商品開発の可能性が見えてくるかもしれません。

シェアシマではアップサイクル原料をはじめ、商品開発に役立つ原料を多数掲載しています。
気になる製品があれば、ぜひシェアシマ(info@ics-net.com)にお問い合わせください。

 

執筆者プロフ シェアシマ編集部

「大切な食資源を活かす」をパーパスに、食品業界に携わる方々に向けて日々の業務に役立つ情報を発信しています。食品業界の今と未来を示唆する連載や、経営者へのインタビュー、展示会の取材、製品・外食トレンドなど話題のトピックが満載!さらに、食品開発のスキルアップや人材育成に寄与するコンテンツも定期的にお届けしています。

合わせて読まれている記事

菊芋の効果効能とは|イヌリンの働きや食べ方、デメリットも解説

菊芋の効果効能とは|イヌリンの働きや食べ方、デメリットも解説

  • 天然由来
  • 機能性原料
  • ヘルスケア
  • 腸内環境
原料はもう毎年違う、という前提で開発する【食品企業のためのサステナブル経営(第44回)】

原料はもう毎年違う、という前提で開発する【食品企業のためのサステナブル経営(第44回)】

  • SDGsに貢献
冷凍原料の解凍待ちを解消、真空マイクロ波解凍機HVMとは【ホシザキ】

冷凍原料の解凍待ちを解消、真空マイクロ波解凍機HVMとは【ホシザキ】

  • 冷凍食品
  • コストダウン
  • SDGsに貢献
「冷やしラーメン」は前年比144%の注目メニュー。猛暑・夏の長期化も追い風に【外食トレンドニュース】

「冷やしラーメン」は前年比144%の注目メニュー。猛暑・夏の長期化も追い風に【外食トレンドニュース】

  • 味覚
食品ロス削減月間に考える「捨てない食品」づくり――食品ロスはどこまで減らせる?

食品ロス削減月間に考える「捨てない食品」づくり――食品ロスはどこまで減らせる?

  • SDGsに貢献
  • アップサイクル
栗もフルーツも高品質|MOGLO社の業務用食品原料まとめ

栗もフルーツも高品質|MOGLO社の業務用食品原料まとめ

  • 味覚

同じカテゴリの記事

原料はもう毎年違う、という前提で開発する【食品企業のためのサステナブル経営(第44回)】

原料はもう毎年違う、という前提で開発する【食品企業のためのサステナブル経営(第44回)】

  • SDGsに貢献
食品ロス削減月間に考える「捨てない食品」づくり――食品ロスはどこまで減らせる?

食品ロス削減月間に考える「捨てない食品」づくり――食品ロスはどこまで減らせる?

  • SDGsに貢献
  • アップサイクル
「AIを使う人」と「AIを使いこなす人」 その差が“経営の差”になる【社長コラム#18】

「AIを使う人」と「AIを使いこなす人」 その差が“経営の差”になる【社長コラム#18】

  • SDGsに貢献
おにぎりから海苔を消さないために【食品企業のためのサステナブル経営(第43回)】

おにぎりから海苔を消さないために【食品企業のためのサステナブル経営(第43回)】

  • SDGsに貢献
豆なしコーヒーとは?2050年問題からみる背景と開発事例、メリット・課題について解説

豆なしコーヒーとは?2050年問題からみる背景と開発事例、メリット・課題について解説

  • 味覚
  • 天然由来
  • SDGsに貢献
食品の消費税1%で、本当に食品メーカーは儲かるのか~起きるのは市場拡大ではなく、外食・中食・内食の大移動~【社長コラム#17】

食品の消費税1%で、本当に食品メーカーは儲かるのか~起きるのは市場拡大ではなく、外食・中食・内食の大移動~【社長コラム#17】

  • SDGsに貢献