冷凍原料の解凍待ちを解消、真空マイクロ波解凍機HVMとは【ホシザキ】
2026年9月15日、ホシザキ販売株式会社(東京都品川区)による第73回シェアシマ商品開発セミナー「開発スピードを向上させる高品質解凍技術 〜真空マイクロ波解凍で実現する品質とスピード〜」が開催されました。食品開発現場で課題となりやすい「解凍待ち」をテーマに、同社独自の「真空マイクロ波解凍機HVM」をはじめとする各種機器が紹介されました。本稿ではセミナーの内容をレポートします。
※こちらの記事は、同社の提供でシェアシマ編集部が制作しています。.png?fm=webp&q=50&w=1440&fit=max)
食品開発の現場に立ちはだかる「解凍待ち」という壁
セミナーでは、冷凍原料を扱う開発現場で次のような課題が繰り返し発生していると指摘されました。
- 解凍に時間がかかり、試作や評価のリードタイムが長くなる
- 解凍ムラやドリップが発生し、評価結果がばらつく
- 解凍方法が作業者の経験に依存し、標準化できない
- ラボでの解凍条件を量産に落とし込むのが難しい
解凍は単なる前処理ではなく、その後の外観、食感、ドリップ、味、官能評価のすべてを左右する重要な工程です。高品質な解凍を実現することは、開発・製造・品質保証それぞれの部門が抱える課題の解決につながります。
短時間×高品質を両立する「真空マイクロ波解凍機HVM」
講師を務めたホシザキ販売 事業企画室の河原氏は、まず同社の主力製品「真空マイクロ波解凍機HVM」について説明しました。.png?fm=webp&q=50&w=1440&fit=max)
仕組み:マイクロ波加熱と真空冷却のダブル効果
HVMは2025年7月に発売された、ホシザキ独自の技術による解凍機です。処理能力は1回あたり0.5〜8kg、解凍可能な凍結物温度は-60℃〜-18℃で、マグロなどの超低温保管品にも対応します。外形寸法はW1,100×D600×H800mmで、台下型冷蔵庫や作業台と同等のサイズです。
通常のマイクロ波加熱だけでは表面が熱くなりやすく、中心部に熱が浸透しづらいという課題があります。HVMは庫内を真空状態にすることで表面の氷や霜を急速に昇華させ、その際の潜熱回収(真空冷却効果)で表面温度の上がりすぎを抑制。この加熱と真空冷却のサイクルを繰り返すことで、表面と中心部の温度差を極めて小さく均一に仕上げ、解凍ムラやドリップを強力に抑えるといいます。.png?fm=webp&q=50&w=1440&fit=max)
解凍時間を大幅短縮
紹介された解凍時間の短縮事例は次の通りです。
- 赤エビ:従来30分 → 約20分
- マグロ(サク):従来120分 → 約40分
- シラス・牛タン:従来(冷蔵庫解凍)12〜24時間 → わずか15〜20分
ガチガチに凍ったシラスブロックも、20分ほどで手でほぐせる状態になるといいます。
品質面のメリット
顕微鏡観察では、マグロの温塩水解凍(35℃・3%塩水)と比較して細胞の潰れや破壊が著しく少ないことが確認されているとのことです。マグロでは解凍後18時間経過してもドリップがほとんど出ず、赤エビでは流水解凍で生じやすい白濁変色を防止。ホタテでは旨味成分の流出を抑え、生のホタテに近い美味しさを維持できるとしています。
12段階の解凍レベル設定で標準化を実現
解凍レベルは標準を中心に-2〜+9の12段階で設定可能です。赤身肉には強め、脂身の多い食材には低めといった調整ができ、重量と解凍レベルを設定してスタートボタンを押すだけで全自動運転が完了します。属人化しがちな解凍作業の標準化・自動化に貢献する仕組みです。
得意・不得意を見極める
適するのは急速凍結された状態の良い魚介類・肉類など、細胞構造がしっかりした食材です。一方、すでに細胞が壊れている緩慢凍結品や、凍結過程で細胞壁が壊れやすい野菜・果物には不向きとされています。また表面が濡れていると誤検知の原因となるため水気を拭き取ること、異なる食材は同時に解凍せず順番に処理することが推奨されています。.png?fm=webp&q=50&w=1440&fit=max)
解凍だけじゃない、凍結から再加熱・衛生管理まで支える周辺機器
河原氏は「良い解凍は良い凍結から」として、開発現場の前後工程を支える機器も紹介しました。
液体急速凍結機:-35℃のエタノール液に食材を沈めて急速凍結し、最大氷結晶生成温度帯を素早く通過させることで細胞壁の破壊を抑えます。牛肉(2cm厚・300g)で約15分、マグロ(2cm厚・300g)で約10分が凍結時間の目安です。
ブラストチラー&ショックフリーザー:-40℃の冷風で細菌が繁殖しやすい危険温度帯(10〜60℃)を急冷し、80℃から10℃への冷却を通常の冷蔵庫では約90分のところ約30分に短縮します。
ディープフリーザー:庫内-60℃〜-50℃で保管し、タンパク質の酵素分解や脂質の酸化、冷凍焼けを抑制。試作食品の長期保管や官能サンプルの保存に適しています。
再加熱キャビネット:前日夜にセットした食材を一晩冷蔵保存し、翌朝指定時間に自動加熱。出社時には熱々の状態に仕上がっており、早朝の官能評価・試作テストの負担軽減に役立ちます。
電解水生成装置ROX:水道水と食塩の電気分解で、洗浄用のアルカリ性電解水と殺菌用の酸性電解水を1台で生成。次亜塩素酸ナトリウムの約80倍(※)の速さで殺菌でき、薬品在庫や希釈の手間を省けます。
※「浄水の技術」1985技報堂出版.png?fm=webp&q=50&w=1440&fit=max)
当日寄せられた質問から
セミナー参加者からは、次のような質問が寄せられ、ホシザキ販売が回答しました。
Q. 冷凍食品開発時の賞味期限設定や促進保存試験についても相談できますか。
A. 賞味期限設定自体は専門外のため、専門検査機関への相談が必要です。ただし保存期間の検証における機器活用や工程構築については、ホシザキ販売への相談も可能です。
Q. 細胞膜を破壊せずに冷凍する技術はありますか。
A. 完全に細胞膜を破壊しない技術ではありませんが、高品質凍結には液体急速凍結機(-35℃エタノール)が適しています。凍結速度を飛躍的に高めることで、水分膨張による細胞破壊を最小限に抑えられます。
Q. 他社の解凍技術との違いや導入実績を教えてください。
A. HVMはホシザキ独自の技術です。水を使わず短時間で処理できるため、旨味流出やドリップを強く抑えられます。魚介類や食肉加工分野など、すでに多数の業界で導入されています。
Q. 調理済み冷凍食品のように異なる食材を一緒に解凍するとどうなりますか。
A. 基本的には、温度ムラ等の原因となりますので異なる食材の同時解凍はできません。ただ、最終仕上がり温度は-5℃前後の半解凍状態になるよう設計されているため、状態としては半解凍に近い状態に仕上がると思われます。
Q. 開発部門にHVMを導入しても、工場の解凍方法が異なれば品質差が出ませんか。
A. 製造規模に応じたHVMの複数台導入や、より大容量の温風式解凍庫など、同社では運用に合わせた組み合わせの提案が可能としています。
Q. 冷凍工程と解凍工程、品質への影響が大きいのはどちらですか。
A. 「両方とも同じくらい重要」です。緩慢凍結で細胞が壊れたものは解凍を工夫しても戻らず、急速凍結されたものも雑に解凍すれば品質が劣化するため、双方へのこだわりが必要です。ただ、弊社真空マイクロ波解凍機のような高品質・高速解凍を目指した機器は少ないのが現状です。
Q. 従来の自然解凍・流水解凍との時間差や電気代の目安は。
A. 自然解凍・冷蔵庫解凍(半日〜1日)に比べ劇的に短縮され、流水解凍のような水温変動や旨味流出もありません。電気代の目安は1回の運転あたり数十円程度です。
全国のテストキッチンで伴走支援
ホシザキ販売は単体機器の販売にとどまらず、凍結・保管・解凍・再加熱・衛生管理という工程全体のソリューションを提案しています。全国60箇所以上のテストキッチンでは、実際の食材を持ち込んでのデモンストレーションや解凍時間・品質データの検証、最適な工程設計までを共に行う伴走型サポートを受けられるとのことです。
事業開発室の山崎氏はセミナーの最後に、「開発現場でのHVM活用から工場での展開へと課題が広がることは、まさに私たちが目指す起点です。単なる機器販売ではなく、皆様の目となり耳となり頭脳となって開発課題を一緒に解決する伴走パートナーでありたいと考えております」と締めくくりました。
なお、本セミナーのアーカイブ映像は約1カ月後、会員登録の上でシェアシマのセミナーページから視聴いただけます。
参考:第73回シェアシマ商品開発セミナー「開発スピードを向上させる高品質解凍技術 〜真空マイクロ波解凍で実現する品質とスピード〜」(ホシザキ販売株式会社)
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ホシザキ販売株式会社
<会社説明>
ホシザキは全自動製氷機、業務用冷凍冷蔵庫をはじめ業務用食器洗浄機、ビールディスペンサーといった幅広い製品ラインナップと保守・修理で、飲食サービスを総合的にサポートします。飲食店やスーパーマーケット、医療機関や宿泊施設にいたるまで様々な分野で、食品の保存や衛生管理に寄与しています。
シェアシマ編集部
「大切な食資源を活かす」をパーパスに、食品業界に携わる方々に向けて日々の業務に役立つ情報を発信しています。食品業界の今と未来を示唆する連載や、経営者へのインタビュー、展示会の取材、製品・外食トレンドなど話題のトピックが満載!さらに、食品開発のスキルアップや人材育成に寄与するコンテンツも定期的にお届けしています。