プラネタリーヘルスダイエットとは何か ── これからの食品設計の前提【食品企業のためのサステナブル経営(第37回)】
前回の記事を読む:食の転換は、食卓からではなく、商品企画会議室から始まる【食品企業のためのサステナブル経営(第36回)】
前回の記事では、食品会社には「消費者が何を食べるか」だけでなく、「農家が何を作るか」にまで影響を及ぼすし、責任があるということを書きました。商品設計の判断は、原料調達を通じて農家を動かし、結果として土地利用や生態系まで変えていくのです。ではそのような中、私たちは、何を基準に設計すればよいのでしょうか。
その基本方針として提示されたのが、医学・公衆衛生分野で世界的に影響力を持つ学術誌 The Lancetの国際委員会が示した「プラネタリーヘルスダイエット(PHD)」です(※)。名前だけ聞くと、厳格な食事法や新しい健康ブームのように思えるかもしれません。しかし実際には、これはダイエット法ではありません。文字通りの意味としては、「地球の健康を考えた食事」です。
でも、これではちょっと分かりにくいですよね。なので、私はこう捉えています。PHDは、“地球規模版のカロリー概念”だと。かつて食品開発に栄養学が導入され、「カロリー」や「栄養バランス」という指標が加わったことで、商品設計は変わりました。おいしさや価格だけでなく、栄養という物差しが入ったのです。PHDは、それをさらに一段広げたものです。人の健康だけでなく、「地球が持続できる範囲」、あるいは「地球の健康」という新しい設計条件を加えたのです。
植物中心、健康的。でも、肉ゼロではない
足立直樹
サステナブル経営アドバイザー。株式会社レスポンスアビリティ代表取締役。東京大学理学部卒業、同大学院修了、博士(理学)。植物生態学の研究者としてマレーシアの熱帯林で研究をし、帰国後、国立環境研究所を辞して独立。その後は、企業と生物多様性およびサステナブル調達の日本の第一人者として、日本の食品会社、飲料会社、流通会社、総合商社等の調達を持続可能にするプロジェクトに数多く参画されています。2018年に拠点を東京から京都に移し、地域企業の価値創造や海外発信の支援にも力を入れていて、環境省を筆頭に、農水省、消費者庁等の委員を数多く歴任されています。