摘果みかんでアップサイクル!バナナやパパイヤの青い果実も食品に
近年、摘果みかんの活用などが進み、アップサイクル食品が注目されています。さまざまなメディアやセミナー、研修などで言葉を見聞きした経験をお持ちの人は多いのではないでしょうか。ただし、どのような意味なのかを正確に把握している人は少ないかもしれません。
そこで、今回は、青い果実を利用したアップサイクル食品の事例に注目して詳しく解説します。フードロス削減につながる理由や、バナナやパパイヤなどみかん以外の国内の食品アップルサイクル事例も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
アップサイクルとは
アップサイクルとは、捨てられるはずの生産物・商品に、「新たな価値」を付与して再利用を実現することです。
単なるリサイクルとは異なり、新たな価値が付加されるため、「クリエイティブ・リユース(創造的再利用)」とも表現されます。
★アップサイクルとSDGs、食品ロスとの関係性については、こちらの記事をご覧ください。
食品のアップサイクルとは
食品加工プロセスでは、品質に問題がないにもかかわらず、未活用のまま廃棄される食材が発生します。しかし、近年、従来は活用されていなかった食材に新たな価値を付与して市場に供給する「食品アップサイクル」の事例が増加しつつあります。
アップサイクル食品を市場で販売すれば、事業者の売上増を実現できるほか、フードロスの削減も可能です。
食品のアップサイクルがフードロス削減につながる理由
「慈善活動として廃棄予定の食材を配布する」という方法でも、フードロスは削減されるでしょう。ただし、配布するためには輸送費・保管費用などがかかるため、主催者の資金が枯渇してしまうと活動を継続できません。
その一方で、「新たな価値」を付加・提示するアップサイクル食品は、消費者にとって魅力があり、市場競争力を有します。事業として成立するため、長期的に持続可能で、トータルではより多くのフードロスを削減することにつながるでしょう。
今後、マーケットの拡大が期待されていて、世界全体におけるアップサイクル食品事業の規模は2032年には11兆円に達すると予測されています(※)。
※参考:Forbes(2021年5月31日)「Upcycled Food Is The Coolest Trend You’ve Probably Never Heard Of」
食品のアップサイクル国内事例3選
以下、国内の食品アップサイクル事例を3つ紹介します。
青いバナナ
青いバナナとは、「皮が緑色の熟成前のバナナ」のことです。2023年8月頃から市場に出回るようになった背景には「これまで生産地で廃棄されていた規格外バナナを流通させ、食品ロスを減らそう」という気運の高まりがあります。
従来、傷などが原因で「規格外」とされた青いバナナは、従来は熟成させずに廃棄されてきました。バナナの生産・販売事業を展開している株式会社ドールでは、こうしたバナナを活用するために「Doleグリーンバナナ」というブランド名で販売するようになりました。
★青いバナナの詳細については、こちらのページをご覧ください。
青いパパイヤ
青いパパイヤとは、皮が緑色の未熟な状態のパパイヤのことです。果物としてではなく、野菜として食べられることから、「野菜パパイヤ」と呼ばれる場合もあります。熟して皮がオレンジ色になったパパイヤとは異なり、甘味はありません。
熟す前のパパイヤは、栄養が豊富です。パパインやリパーゼ、アミラーゼといった酵素に加え、ビタミンB1やビタミンC、カルシウム、マグネシウム、食物繊維などの含有量も多いため、健康食材として注目されています(※1)。
そのほか、ポリフェノールやフラボノイドも多く含んでいて、「青いパパイヤを発酵させて粉末状に加工した食品を高齢者に摂取させたところ、ナチュラルキラー細胞活性が回復した」という主旨の報告もあり、免疫機能を改善する効果が期待できます(※2)。
青いパパイヤは、「パパイヤ茶」に加工されて販売されたり、サラダや炒め物など、多種多様な料理の具材として利用されたりしています。
※1参考:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年「食品群名/食品名: 果実類/パパイア/未熟/生」
※2参考:藤田雄三ほか(2017年)「Fermented Papaya Preparation Restores Age-Related Reductions in Peripheral Blood Mononuclear Cell Cytolytic Activity in Tube-Fed Patients」PLOS ONE
摘果みかん・青みかん
摘果みかんとは、熟する前の段階で早摘み・間引き(摘果)したみかんのことで、「青みかん」とも呼ばれます。摘果みかん・青みかんは、成熟果よりもフラバノン配糖体(ヘスペリジンやナリルチン)の含有量が多く、脂質代謝を改善する効果(※1)や、ハウスダストなどによる鼻の不快感を軽減する効果(※2)が期待できます。
使い方としては、そのまま食するほか、絞った果汁を焼き魚などにかけたり、ハチミツとあわせてドリンクにして飲んだりするのもよいでしょう。
摘果みかん・青みかんの皮から抽出したエッセンシャルオイルも流通しています。また、柑橘類の栽培が盛んな愛媛県を拠点とする愛媛製紙株式会社では、ジュースの製造過程で発生する搾汁残渣を加工した「柑橘由来機能性ペーストMaCSIE(マクシー)」を販売しています。
★MaCSIEは、食品や化粧品の原料として活用の幅が広がっています。詳細については、こちらのページをご覧ください。
※1参考:田丸靜香ほか(2017年)「廃棄される未熟ミカンに豊富に含まれるヘスぺリジンの可溶化 不溶性成分を茶飲料として摂取可能に」化学と生物、55巻、4号、pp.290-293
※2参考:出口貴浩ほか(2021年)「未熟ウンシュウミカン果実含有食品の摂取による鼻の不快感の軽減およびQOL 改善作用とその安全性―ランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験―」薬理と治療、49巻、11号、pp.1877-1887
まとめ
近年、アップサイクル食品を市場に供給し、フードロス削減に取り組む企業が増加中です。今回紹介した事例以外にも、数多くのアップサイクル食品が流通しています。市場の成長が期待される分野なので、日々、関連するニュースをチェックしてみてはいかがでしょうか。
なお、「シェアシマ」を運営するICS-net株式会社では、食品原料ロスの削減を目的として、食品企業と食品工場のマッチングによる食品アップサイクルに取り組んでいます。アップサイクル食材の供給先をお探しの事業者や、商品への利用をお考えの事業者は、お気軽にお問い合わせください。
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