【2026年版】食品アップサイクルの動向①|欧米の業界団体から見る商品開発のヒント
食品ロス削減やサステナビリティへの関心が高まる中、世界的に注目を集めているのがアップサイクル食品です。これまでは環境配慮の取り組みとして語られることが多かったアップサイクルですが、近年は新たな価値提案やブランドストーリーを生み出す手法としても存在感を高めています。
特に欧米では、業界団体による認証制度の整備や企業間ネットワークの形成が進み、市場の拡大を後押ししています。本記事では、欧米のアップサイクル関連団体の動向や代表的な事例をもとに、食品開発に活かせるポイントを探ります。

なぜ今、食品アップサイクルが注目されているのか

アップサイクル食品は、食品ロス削減だけでなく、新たな原料価値やブランド価値を創出する取り組みとして注目されています。その背景には、環境課題への関心の高まりに加え、サステナブルな選択を求める消費者意識の変化があります。
アップサイクルの定義
アップサイクルとは、本来であれば廃棄されるはずだった食品副産物や未利用資源に新たな価値を与え、食品や原料として再活用する取り組みを指します。
たとえば、ビール製造時に発生する麦芽粕、豆乳製造時のおから、ジュース製造時の搾りかすなどが代表例です。
▼アップサイクルの定義やアップサイクル原料については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
食品アップサイクル原料のご紹介〜市場拡大の背景と食品企業が取り組む意義とは
食品ロス削減は「もったいない」から「経営課題」へ
食品ロス削減は、かつては「もったいない」という倫理的な観点や社会貢献活動の一環として語られることが多くありました。しかし近年、その位置づけは大きく変化しています。
日本では食品ロス削減に向けた取り組みが進み、当初掲げられていた事業系食品ロスの削減目標は想定より早く達成されました。これを受け、2025年3月に閣議決定された第2次食品ロス削減推進基本方針では、2030年度の削減目標が従来の50%から60%へ引き上げられています。
こうした動きは、食品ロス削減が単なる善意の取り組みではなく、企業にとって重要な経営課題となりつつあることを示しています。未利用資源に新たな価値を与える「アップサイクル」は、食品ロス削減と新たな商品価値の創出を両立できる手法として、国内外で取り組みが広がっています。
欧米で進むアップサイクル団体の動き

欧米では、アップサイクル市場の拡大を支える業界団体やネットワークの活動が活発化しています。認証制度の整備や情報発信、企業間連携を通じて、市場形成が進んでいる点が特徴です。
Upcycled Food Association(UFA)と認証制度
米国のUpcycled Food Association(UFA)は、アップサイクル食品市場の発展を目的として設立された業界団体です。企業や研究者、食品関連事業者が参加し、定義の策定や認知向上活動を行っています。
UFAの大きな取り組みの一つが「Upcycled Certified」です。これは、2020年に設立した、世界発のアップサイクル食品向けの第三者認証制度です。
この制度は、アップサイクル原料の使用やトレーサビリティなどの基準を満たした製品にのみ、認証マークが付与されるというものです。認証制度の整備によって、消費者や流通に対する信頼性向上が期待されています。
※参考:Upcycled Food Association(UFA)
欧州ではサーキュラーエコノミー分野で活動する団体も
欧州では、アップサイクル単独ではなく、食品ロス削減やサーキュラーエコノミー、フードシステム変革の一環として取り組まれるケースが多く見られます。
たとえば、欧州最大級のフードイノベーションコミュニティであるEIT Food(※1)では、さまざまな主体が連携し、持続可能な食のサプライチェーンの構築を目指して活動しています。持続可能な農業の推進や、スタートアップの育成・投資などのプロジェクトも展開しています。
また、Feedback Global(※2)は食品ロス削減を目的とした国際的な団体で、調査研究や政策提言、市民参加型キャンペーンなどを通じてフードシステムの変革に取り組んでいます。
※1参考:EIT Food
※2参考:Feedback Global
海外での食品アップサイクル事例
欧米では、アップサイクルを事業の中核に据えるスタートアップも数多く誕生しています。ここでは、アメリカでの3つの取り組みを紹介します。
Upcycled Foods(旧:ReGrained)(※3)は、アメリカ農務省と共同で、ビール製造時に発生する醸造副産物を活用して穀物由来の粉末原料を開発。この粉末は、タンパク質や食物繊維が豊富なことも大きな特徴です。これを原料として活用し、クッキー生地の専門ブランドと連携してクッキー生地の共同開発をしたり、オーガニックパスタを販売する企業と提携して外食産業向けの製品を販売したりするなど、コラボによる事業展開も盛んです。
また、Renewal Mill(※4)は、豆乳製造時に発生するおからをアップサイクルし、小麦粉代替原料やヴィーガン対応の製菓素材として活用しています。同団体は、UFA設立に貢献した中心的な企業のひとつで、Upcycled Certifiedの認証第一号を取得しています。
同企業では、食品の廃棄を減らすことが温室効果ガス排出量を削減することにつながるという実験を踏まえて、「食品廃棄物と気候変動の両方に立ち向かう」ことを目指して活動しています(※5)。
Pulp Pantry(※6)は、ジュース製造時に発生する野菜や果物の搾りかすを活用し、チップスなどのスナック製品を販売しています。野菜ジュースの搾りかすは鮮度が良いため、上手に使えば食材として活用できます。4種類のフレーバーがあり、すべてヴィーガン対応のヘルシーな食品になっています。
※3参考:Upcycled Foods
※4参考:Renewal Mill
※5参考:Wewok ideas
※6参考:料理通信「America [Los Angeles]グルテンフリーでヴィーガンもOK!“搾りかす”から生まれた新スナック」
欧米市場から見えるトレンド

欧米市場の動向を見ると、アップサイクル食品は単なる環境対応から次の段階へ進みつつあります。
まず大きな特徴として、原料が持つストーリーや背景を商品価値として伝える動きがあります。どのような未利用資源を活用しているのか、なぜその原料に価値があるのかを明確に発信することで、消費者との接点を生み出しています。
もうひとつの動きとして、認証制度による信頼性の向上が挙げられます。特に海外市場では、サステナビリティ関連の表示が増える中で、第三者認証による裏付けが重要視されています。Upcycled Certifiedの普及は、その象徴的な動きといえるでしょう。
食品開発の視点では、未利用資源を活用するだけでなく、その背景にあるストーリーや価値をどのように商品設計へ落とし込むかが、今後の差別化ポイントになりそうです。

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日本国内のアップサイクル団体の動向

日本でも食品ロス削減やサステナビリティへの関心の高まりを背景に、アップサイクルに関する取り組みが広がりつつあります。欧米のような認証制度や大規模な業界団体はまだ発展途上ですが、企業や自治体、研究機関をつなぐ活動が徐々に活発になっています。
注目されるアップサイクル団体2つ
国内では、アップサイクルの認知向上や企業間連携を目的とした団体が活動しています。
一般社団法人アップサイクル(※7)は、食品に限らずさまざまな分野でアップサイクルの普及を推進する団体です。企業や自治体との連携を通じて、未利用資源の活用や情報発信に取り組んでいます。
また、一般社団法人日本アップサイクル協会(※8)は、アップサイクルの啓発活動や事業者同士のネットワーク形成を進めています。セミナーやイベント開催を通じて、アップサイクル市場の拡大を後押ししています。
欧米の業界団体と比較すると、その影響力はまだ限定的といえるかもしれませんが、国内でもアップサイクルに関する情報共有や連携の場は着実に増えています。
※7参考:一般社団法人アップサイクル
※8参考:一般社団法人日本アップサイクル協会
国内での食品アップサイクル事例と特徴

日本では、伝統的な発酵食品の製造過程で生まれる副産物や、地域に根差した未利用資源を活用した事例が多く見られます。
たとえば、酒粕や焼酎の搾りかす、茶殻、おから、野菜の端材、柑橘の搾汁残渣、規格外野菜がさまざまな商品に活用されています。発酵食品や伝統食材との親和性が高いことは、日本市場の大きな特徴のひとつといえるでしょう。
また、地域資源との結びつきが強い点も特徴です。規格外農産物や地域特産品の未利用部分を活用し、地域ブランドや観光資源と連携した商品開発も増えています。
近年は、食品メーカーだけでなく、小売企業や宅配サービス企業もアップサイクル商品開発に参入しています。
たとえば、オイシックス・ラ・大地株式会社では「Upcycle by Oisix」というブランドを立ち上げて、 規格外野菜や未利用食材を活用した商品開発を進めています。食べる人と作る人をつなぐ取り組みとして、消費者にアップサイクルの価値を伝える試みを推進しています(※9)。
※9参考:農林水産省「食べるだけで食品ロス削減に繋がるブランド「Upcycle by Oisix」
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欧米では認証制度やグローバルブランドの形成が進む一方、日本では地域性や発酵文化を生かしたアップサイクルが特徴的です。食品開発においても、単なる食品ロス削減ではなく、その土地ならではの素材やストーリーをどう価値に変えるかが重要な視点になっています。
次回は、国内外の動向を踏まえ、アップサイクルが生み出す新たな商品価値とは何かを改めて考察します。
次の記事を読む:【2026年版】食品アップサイクルの動向②|アップサイクルが生み出す新たな商品価値とは

シェアシマ編集部
「大切な食資源を活かす」をパーパスに、食品業界に携わる方々に向けて日々の業務に役立つ情報を発信しています。食品業界の今と未来を示唆する連載や、経営者へのインタビュー、展示会の取材、製品・外食トレンドなど話題のトピックが満載!さらに、食品開発のスキルアップや人材育成に寄与するコンテンツも定期的にお届けしています。