
フードロスになる未利用魚とは?お得に購入できるウェブサービスも紹介
「未利用魚(みりようぎょ)」と呼ばれる魚をご存知ですか?形が悪かったり傷がついていたりすることで、出荷されない魚のことです。こうした市場に出回らない魚を上手に活用することが、SDGsや食品ロスの削減に貢献できると昨今話題になっています。この記事では、未利用魚という言葉の定義や具体例に加え、フードロスにも貢献する手軽に未利用魚を購入できるウェブサービスについて紹介します。
未利用魚とはどんな魚?
未利用魚とは、名前の通り「利用されていない魚」のこと。規格外や傷があるもののほか、トゲや毒のある部位などの下処理に手間がかかるものや、知名度が低く購入される見込みが少ないものなどが未利用魚に含まれます。未利用魚と聞くと「食べられない魚」というイメージを持つ人もいるかもしれません。実際には、新鮮で味にまったく問題がない魚が未利用魚になることもあります。
特定の地域で食べられている地魚や収穫量が過剰で余っている魚も、未利用魚になることがあります。未利用魚と似ている言葉として「低利用魚」があり、これは利用されることも利用されないこともある魚のことです。漁師が目的としていた魚に混ざって獲られる「混獲魚(こんかくぎょ)」も、商業的な利用価値の低い売れない魚として未利用魚になります。実は未利用魚には明確な定義はなく、さまざまな理由によって利用されていない魚の総称といえます。
日本の漁獲量は年々減りつつあります。あるデータによれば、1990年に約957万トンだった漁獲量は、2021年には約319万トンまで減少しています。漁獲量が急速に減少している昨今、未利用魚の価値が見直され、注目度が高まっています。未利用魚の販売は漁業従事者の収入の底上げにもつながるため、日本の漁業の活性化も期待できるでしょう。
未利用魚の具体例
未利用魚として私たちの食卓に届くことのない魚が出るのには、さまざまな要因があり、時にはいくつかの原因が複雑に絡み合うこともあります。ここでは、収穫された魚が未利用魚になる具体的な理由について解説します。
知名度が低いため売れない
知名度やブランド力のある魚は、値段が高くなり、市場にたくさん出回ることになりますが、反対にあまり名前や見た目を知られていない人気のない魚は、消費者の需要が低くなり値段も下がってしまいます。すると魚を売る側の漁師としては、利益を取れない魚は未利用魚に回さざるを得ません。ある地方ではよく知られている魚でも、全国的な知名度が低く売れないために未利用魚となることもあります。食べると実は高級魚に似た味で美味しい魚ですら、知名度や見慣れない外見のせいで未利用魚になっているものもあります。
サイズが小さすぎる/大きすぎる
野菜などの農作物と同様に、売りたい魚の大きさよりも大きすぎたり小さすぎる規格外の魚は未利用魚になります。加えて体の小さな魚は、骨などを処理するのに時間と手間がかかるので商品化しにくいという面もあります。反対に、1匹で10kg近くする大きな魚は、保存する場所を取り過ぎたり、鮮度を保ったまま食べ切れないなどの理由から未利用魚になります。こうしたサイズの問題に加えて、獲れる数が多すぎたり少なすぎたりするがゆえに、本来売りたい数量にそぐわないために未利用魚になることもあります。
見た目が悪い/傷ついている
普段の食卓であまり目にすることのない奇抜な形や色の魚は、その見た目から美味しそうに見えず一般消費者には避けられてしまいます。味には問題がないどころか、むしろ美味しい魚であっても、見た目で食欲のわかない魚たちは人気が出ず、市場に出回らなくなる未利用魚になるのです。また、人間の漁で水揚げされる前に、他の魚や動物などが食べようとして、傷が付いてしまった魚も商品としての価値が下がるために未利用魚になります。
未利用魚を食べてフードロスを減らそう
FAO(国際連合食糧農業機関)が2020年に発表した報告書によると、世界の多くの地域において、漁獲量全体の30〜35%程度が廃棄されているとのことです。これまで廃棄されることが多かった未利用魚の活用がもっと進めば、SDGsの中で課題として挙げられている食品ロスの削減にも貢献できます。「日本人の魚離れ」を解消する効果など、未利用魚の活用にはさまざまなメリットがありそうです。
未利用魚をウェブ購入できる便利なサービス
一般のスーパーマーケットや魚屋で見る機会の少ない未利用魚ですが、最近では未利用魚を購入できるオンラインの直販サービスや、未利用魚を使った料理を提供するレストランなども登場しています。特に最近の産地直送のオンラインサイトでは、未利用魚を扱う漁師と私たち消費者が直接やりとりすることもできるので、食べ慣れない種類の魚をよりおいしく食べる方法を知ることもできます。
ここでは、未利用魚を手軽にお得な値段で購入できるウェブサービスを3社紹介します。
ポケットマルシェ
岩手県を拠点とする株式会社雨風太陽が運営するポケットマルシェ(以下ポケマル)は、全国各地の農家や漁師から、消費者が新鮮な食材を買うことができるスマホアプリのサービスです。生産者が作物を収穫すると、スマートフォンを使って手元ですぐに出品でき、サービス名の由来でもある「ポケットの中のマルシェ(市場)」を具現化した便利なアプリです。ポケマルの商品一覧からは、未利用魚の品種や産地、価格、生産者などの項目ごとに検索することができます。顔と名前のわかる生産者からの買い物を通じて、現実での買い物に近い作り手とのコミュニケーションを楽しめるのもポケマルの魅力です。
食べチョク
ポケマル同様、農家や漁師などの生産者から産地直送で新鮮な商品を届けるオンラインサービスの「食べチョク」。国内最大級の産直ECサイトである「食べチョク」では、箱詰めなどの作業を生産者自らが行うため、野菜や海産物を鮮度が非常に高いままの状態で消費者に届きます。使いやすいサイト設計やサービス内容で、一般市場では手に入りにくい未利用魚も手軽に検索して購入できます。高品質で充実した商品量を誇る食べチョクでは、本来であれば市場に出回ることのない高級店に卸すような魚も、規格外の未利用魚だからこそお得に購入できるのです。
食べチョク公式HP(「未利用魚」に関する産地直送の商品一覧)
Fishlle(フィシュル)
福岡県を拠点とする株式会社ベンナーズが運営しているのが、魚の加工品のサブスクリプション(定期購買)サービスのFishlle(フィシュル)です。旬の食べごろな天然未利用魚にこだわっているフィシュルでは、西京漬け・カルパッチョ、海鮮丼など20種類以上の自社で製造した魚料理を、お得な月額定期便サービスで提供しています。調理済みの真空冷凍パックで届くので、湯煎や流水で解凍するだけで手軽に食べることができます。着色料や保存料が無添加で安心して未利用魚を食べることができるのも、フィシュルのサービスが高評価である理由です。
フードロスを減らしてSDGsに貢献しよう
未利用魚を選択し、私たちが積極的に食べていくことは、さまざまな社会問題の解決につながります。食材の中でも魚の鮮度は落ちやすく、無駄を出さないためには未利用魚が出るのはやむを得ないこと。けれども、味には全く問題がない未利用魚は、人々の需要さえあれば、値段も上がり市場に出回るようになり、人気商品になる可能性も秘めています。ぜひ未利用魚に興味を持って、食べてみませんか。食品ロスの削減に貢献すると共に、珍しくて美味しい魚に出会う絶好の機会になりますよ。