
食品が〇〇に生まれ変わる!アップサイクルの事例を紹介
本来は食べられるにも関わらず廃棄されてしまう「フードロス」。日本のフードロス問題が深刻化する中、廃棄されていた食材を活用して新しい製品と生まれ変わらせる「アップサイクル」の取り組みが進んでいます。
この記事では、日本企業が生んだアップサイクル事例と共に、持続可能な未来を作るための企業・消費者・コーディネーターの役割についても解説します。「アップサイクル製品の開発を検討している」「具体的な取り組みを知りたい」という人は、ぜひ参考にしてみてください。
※こちらの記事は同社の提供で、シェアシマ編集部が制作しています。
食品から食品への事例
事例1:コーヒー豆の殻をあられ菓子に(プロント&オイシックス)
飲食チェーン「プロント」は、「オイシックス・ラ・大地」との共同開発により、コーヒーを抽出した後の豆のかすを使ったあられ菓子2種類を開発しました。コーヒーの豆のかすには食物繊維が豊富に含まれていて、健康的なおやつとして話題になっています。
事例2:規格外や廃棄寸前の食材を使った「グラノーラ」(スナックミー)
おやつのサブスクリプションを手掛ける「スナックミー」は、欠けや変色があり適正価格では販売できない原材料を組み合わせて、おいしいグラノーラにアップサイクルしました。グラノーラは原材料の種類や量の調整がしやすく、気候や天候による供給量の変化にも柔軟に対応できる製品です。
事例3:余ったパンがビールなどの飲料製品に(CRUST JAPAN)
2019年設立のシンガポールを拠点としたフードテック企業、CRUST Group(クラストグループ)は、まだ食べられるのに捨てられてしまう食材をビールなどの飲料製品にアップサイクルすることで、食品ロスの削減に貢献しています。クラストグループは、提携する飲食店から余ったパンや米といった穀物や、コーヒーやカカオの残りかすや殻、茶葉、野菜や果物の皮などを回収して、それらを飲料製品に生まれ変わらせてきました。主な製品には、パンやコーヒーかすを原料にした独創性あふれる風味豊かなクラフトビール「CRUST」や、果物や野菜の皮から作るノンアルコール飲料「CROP」があります。日本部門である株式会社CRUST JAPAN(クラストジャパン)では、みかんやパイナップルの皮やきのこの柄を利用したお茶やジュースの生産にも力を入れています。
事例4:規格外野菜を食べられるシートに(アイル)
売れなくなった野菜をペーストにし、海苔のようなシート状に乾燥させた新食材「VEGHEET(ベジート)」へとアップサイクルしたのが、長崎県を拠点とする株式会社アイルです。地元九州の不揃いな大きさや傷などにより規格外となった野菜と寒天を使用しているベジートは、食物繊維やビタミンなどの栄養も豊富で、化学調味料や添加物を使わないアレルゲンフリーな食品であることが高く評価されています。そのまま食べても、野菜本来の味を楽しめるベジートですが、水分を含ませればジェルやスープにも応用して、様々な食べ方を楽しめます。開封前なら2年(防災用5年)という長期保存ができ、シート状で場所も取らないベジートは、非常食のような保存食として、世界の食糧危機の解決にも貢献できる見込みもあります。
食品から工業製品への事例
事例1:魚の鱗からコラーゲン生成(ニッピ)
ゼラチンやコラーゲンを原材料に製造販売する「ニッピ」は、魚の鱗(うろこ)を原料としたコラーゲン製品を開発しています。コラーゲンが豊富な魚の鱗を使った、高品質な商品です。廃棄されていた魚の鱗が、美容や健康に関心のある人々にとって価値ある製品に生まれ変わりました。
事例2:植物由来のサステナブルなプラスチック製品(パナソニック)
電機メーカー「パナソニック」は、環境負荷の少ない植物由来のセルロース(不溶性食物繊維)を利用したプラスチック製品を開発しました。アサヒビールとの協業により商品化された「森のタンブラー」では、環境への配慮だけでなく「ビールの泡立ちが良い」と話題を集めています。
事例3:茶葉を活用した100種類以上のアップサイクル製品(キリン)
酒類・飲料メーカー「キリン」は、茶殻を入れた畳の開発や、社内でのアイデア提案をもとに抗菌効果のある「お茶入りベンチ」の実用化を進めてきました。茶殻の排出量は年間6万3200トンで、そのうちの千数百トンをアップサイクル製品として活用し、これまでに開発した製品は約100種類に上ります。
事例4:りんごが合成皮革に(SORENA)
長野県のベンチャー企業「株式会社SORENA」は、同県飯綱町と協力して、地元の名産品りんごを加工するときに出る副産物を利用したある取り組みが話題になっています。同社は、りんごジュースやシードル(りんご由来の醸造酒)の生産過程で得られるりんごの搾りかすから合成皮革「りんごレザー」のアップサイクルに成功し、この冬からバッグなどの商品を発売します。廃棄されるはずだったりんごの皮や芯などの原料とポリウレタン樹脂とを合成して作られる合成皮革は、アップルレザーと呼ばれ、海外では動物由来でないヴィーガンレザーとして人気を集めています。りんごレザーは、アップルレザーの製品化としては国内初ということで、地方創生やSDGsにも貢献する製品として期待が高まっています。
アップサイクルが持続可能な未来を作る
今回紹介した5つの事例からもわかるように、アップサイクルには大きな可能性が広がっています。これまで廃棄されていた食品に付加価値を付けて製品化することで、廃棄物の削減や環境負荷の低減、地球環境の保護に貢献できます。
では、アップサイクル製品がより浸透していくためには、どのような取り組みを進めていけばよいのでしょうか。ここでは、企業と一般消費者、コーディネーター・アドバイザーという3つの立場に分けて、それぞれに求められる役割を解説します。
企業の役割
企業は、アップサイクルを浸透させていく上で非常に重要な役割を担っています。まずは、従来の製品開発や廃棄物処理のプロセスを見直すことが大切です。環境に優しい製品やサービスを提供することで、企業の価値が高まり持続可能な社会の実現に貢献できます。
一般消費者の役割
一般消費者もまた、アップサイクルの推進に大きく関わっています。地球環境の課題をしっかりと理解し、環境に配慮した製品の購入や廃棄物の適切な処理など身近にできることの実践が求められます。
コーディネーター・アドバイザーの役割
アップサイクルはまだまだ未知の分野です。廃棄寸前の食品を利用したいと思っていても、「どう進めていいか分からない」「リソースが不足している」というケースもあります。アップサイクルを推進していく上では、コーディネーターやアドバイザーなど中間的な役割を担う企業や人材が欠かせません。
シェアシマでは「食品を捨てない社会」を目指して、『長野アップサイクル・フード』の企画開発をはじめ、未利用原料やアップサイクル事業のご相談にも柔軟に対応しています。詳しくはこちらをご覧ください。
関連記事:食品を捨てない社会へ:シェアシマにしかできないアップサイクル事業とは
まとめ
アップサイクルは、食品廃棄物や工業製品を再利用し、新たな価値ある製品に生まれ変わらせる画期的な取り組みです。今回紹介した事例はごく一部で、国内外問わず多くの企業がアップサイクルを推進しています。現時点では認知度が高いとはいえないアップサイクルですが、これからニーズや市場が大きく広がっていきそうです。