菊芋の効果効能とは|イヌリンの働きや食べ方、デメリットも解説
ごつごつとした見た目の菊芋(キクイモ)は、でんぷんをほとんど含まず、水溶性食物繊維「イヌリン」を多く含む珍しいいも類です。菊芋由来のイヌリンを使った機能性表示食品も届け出られており、健康志向の高まりとともに注目が集まっています。
本記事では、菊芋の栄養とイヌリンに報告されている働き、食べるときの注意点、家庭での食べ方から食品開発での活用のヒントまで、公的機関のデータや研究報告をもとに解説します。

菊芋(キクイモ)とは
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菊芋は北アメリカ原産のキク科ヒマワリ属の植物で、高さ3mにもなる大型の多年草です。地下にできる塊茎を食用にします。日本には1859年に伝わったとされ、明治以降、食用や飼料、アルコールの原料として本格的に栽培されるようになりました。現在も道端や荒れ地などで野生化した姿を見かけることがあります。旬は秋から冬にかけてです。
出典:野田市「キクイモ(菊芋)(キク科ヒマワリ属)」/JAグループ「とれたて大百科 キクイモ(菊芋)」
菊芋の栄養成分
菊芋(塊茎・生)100gあたりの主な成分は次のとおりです。
| 成分 | 100gあたり |
| エネルギー | 66kcal |
| 水分 | 81.7g |
| たんぱく質 | 1.9g |
| 脂質 | 0.4g |
| 炭水化物 | 14.7g |
| 食物繊維総量 | 1.9g |
| カリウム | 610mg |
| ビタミンC | 10mg |
同じいも類のジャガイモ(塊茎・皮なし・生)は100gあたり59kcal、カリウム410mgで、エネルギーは大きく変わりませんが、菊芋のカリウムはジャガイモの約1.5倍です。
また、菊芋は他のいも類と異なり、でんぷんをほぼ含まず、水溶性の多糖類であるイヌリンを多く含むのが特徴です。佐賀県で栽培された菊芋を分析した研究では、イヌリンの含有量は乾燥重量100gあたり35〜50gで、12月に収穫したものは10月に収穫したものより少なかったと報告されています。
出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」きくいも/塊茎/生、じゃがいも/塊茎/皮なし/生/安田みどりほか「キクイモ中のイヌリンの分析」日本家政学会研究発表要旨集(2016年)
菊芋に含まれる「イヌリン」とは
イヌリンは水溶性食物繊維の一種で、自然界ではチコリやゴボウ、タマネギなどにも含まれています。食物繊維は人の消化酵素で消化することができない成分で、大腸で腸内細菌に利用されると、酢酸や酪酸、プロピオン酸などの短鎖脂肪酸が作られます。これらの酸が大腸内を酸性に保つことで、善玉菌が増えやすい環境になると考えられています。
イヌリンについてさらに詳しくは、食物繊維「イヌリン」とは|効果と多い食べ物をわかりやすく解説でも紹介しています。
出典:株式会社明治「水溶性食物繊維イヌリン」/厚生労働省 e-ヘルスネット「食物繊維」「食物繊維の必要性と健康」

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菊芋に期待される効果効能
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菊芋由来のイヌリンを機能性関与成分とする機能性表示食品(届出番号I1378)では、次の機能性が届け出られています。
- イヌリンには食後の血糖値の上昇を抑える機能があることが報告されています。
- イヌリンには腸内のビフィズス菌を増やし、腸内環境を整える機能があることが報告されており、特に便秘傾向者においてお通じを改善(排便回数、排便量を増やす)機能があることが報告されています。
イヌリンを機能性関与成分とする機能性表示食品は、ほかにも数多く届け出られています。
また、菊芋に多いカリウムは、腎臓でのナトリウムの再吸収を抑えて尿中への排泄を促すミネラルです。塩分の摂り過ぎを調節するうえで重要な栄養素とされています。
※機能性表示食品の届出内容は、その商品の摂取目安量を摂った場合の情報です。菊芋を食べることで同じ機能が得られることを示すものではありません。また、病気の治療や予防を目的としたものではありません。
出典:消費者庁 機能性表示食品の届出情報(届出番号I1378)※健康食品原料検索サイト BALBALで確認/厚生労働省 e-ヘルスネット「カリウム」/公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット「カリウムの働きと1日の摂取量」
菊芋のデメリットと注意点
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食物繊維の摂り過ぎに注意
食物繊維やフラクトオリゴ糖などを関与成分とする「おなかの調子を整える」特定保健用食品について、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所は、人によっては推奨される摂取量以下でもお腹がゆるくなるなど体調に好ましくない変化が起きることがあるとして、体調を見ながら利用するよう呼びかけています。菊芋やイヌリンを使った食品も、一度にたくさん摂るのではなく、体調を見ながら取り入れるのが安心です。
出典:国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所「『健康食品』の安全性・有効性情報」お腹の調子を整える等の表示をした食品
腎臓の機能が低下している人はカリウムに注意
カリウムは大部分が尿中に排泄されますが、腎不全などで腎臓の機能が低下するとうまく排泄されず、高カリウム血症になるおそれがあります。腎臓に疾患があり、医師からカリウムの摂取制限を受けている人は注意しましょう。
出典:公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット「カリウムの働きと1日の摂取量」
保存中にイヌリンが減る
菊芋を20℃と5℃で90日間保存した研究では、イヌリンの量が20℃で37.4%、5℃で31.1%減少しました。一方で、20℃で60〜90日保存すると、イヌリンが分解されて短い鎖のフラクトオリゴ糖が大きく増え、こうした低分子の成分はビフィズス菌の増殖をより促す作用が強かったとも報告されています。
出典:森田朗ほか「キクイモにおけるイヌリンの貯蔵中の分解とプレバイオティクス効果」日本食品科学工学会誌(2022年)
菊芋の選び方・保存方法・食べ方
選び方と保存方法
傷がなく、重みがあり、身がしっかりしたものを選びましょう。保存するときは、土を付けたまま新聞紙などで包んで冷蔵庫に入れるのがおすすめです。長く保存したい場合は、薄切りにして水に浸してから天日干しにし、フリーザーバッグなどに入れて涼しい場所で保管する方法もあります。
出典:JAグループ「とれたて大百科 キクイモ(菊芋)」/JA長野県グループ「長野県のおいしい食べ方 太陽の根●キクイモの保存法と簡単なレシピ」.png?fm=webp&q=50&w=1440&fit=max)
食べ方
菊芋は皮をむいて薄切りにしたり、すりおろしたりして使います。生で食べられるほか、揚げ物や煮込み料理にも使え、団子やピザ、うどん、コロッケ、天ぷらなど、さまざまな料理に活用されています。
出典:JA長野県グループ「長野県のおいしい食べ方 太陽の根●キクイモの保存法と簡単なレシピ」
食品開発における菊芋の活用
加熱・酸性条件でのイヌリンの安定性
菊芋粉末に含まれるイヌリンは130℃までの加熱では安定でしたが、160℃では約20%減少し、200℃で1時間加熱するとほとんどなくなったと報告されています。また、水溶液中では25℃ではpHにかかわらず比較的安定でしたが、50℃以上では強い酸性条件で加水分解によって減少しました。焼成温度の高い菓子や、酸性の飲料などに使う場合は、加工条件によってイヌリンの残存量が変わる点に注意が必要です。
出典:安田みどりほか「キクイモに含まれるイヌリンの加熱やpHに対する安定性」日本家政学会研究発表要旨集(2018年)
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パンへの配合
小麦粉の一部を菊芋の塊茎粉末に置き換えて食パンを作った研究では、置き換える割合が6%までなら、ふくらみや食感、味は置き換えないパンと同程度でした。さらに4%置き換えたパンは、7日間の保存中に硬くなりにくかったと報告されています。
出典:駒場あすか、松本雄一「キクイモ塊茎粉末で置換した食パンの物性,貯蔵性および嗜好性」美味技術学会誌(2022年)
シェアシマで探せる菊芋原料
食品原料のマッチングサイト「シェアシマ」では、赤坂T・M株式会社(千葉県柏市)の「北海道産 菊芋粉末」を掲載しています。北海道で栽培・収穫したイヌリンが豊富な菊芋を滅菌粉砕した粉末です。同社は、菊芋をキューブ状に乾燥して焙煎した「北海道産 菊芋焙煎茶」の原料も掲載しています。菊芋を使った商品開発を検討している方は、ぜひ同社のページをご覧ください。
出典:シェアシマ 赤坂T・M株式会社 企業ページ
まとめ
菊芋は、でんぷんをほとんど含まず、水溶性食物繊維のイヌリンとカリウムを多く含む、秋から冬が旬のいも類です。菊芋由来のイヌリンには、食後の血糖値の上昇を抑える機能や、お通じを改善する機能が報告されています。一方で、食物繊維の摂り過ぎでおなかがゆるくなることがあるほか、腎臓の機能が低下している人はカリウムに注意が必要です。生でも加熱しても食べられ、粉末やお茶などの加工品もあるので、自分に合った方法で取り入れてみてください。食品開発の素材としても、加熱条件や配合割合に関する研究が進んでおり、今後の活用が期待されます。
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出典一覧
- 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」きくいも/塊茎/生
- 同 じゃがいも/塊茎/皮なし/生
- 野田市「キクイモ(菊芋)(キク科ヒマワリ属)」
- JAグループ「とれたて大百科 キクイモ(菊芋)」
- JA長野県グループ「太陽の根●キクイモの保存法と簡単なレシピ」
- 株式会社明治「水溶性食物繊維イヌリン」
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「食物繊維」
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「食物繊維の必要性と健康」
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「カリウム」
- 健康長寿ネット「カリウムの働きと1日の摂取量」
- 機能性表示食品 届出番号I1378(BALBAL掲載の届出情報)
- 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所「『健康食品』の安全性・有効性情報」お腹の調子を整える等の表示をした食品
- 安田みどりほか「キクイモ中のイヌリンの分析」日本家政学会研究発表要旨集(2016年)
- 安田みどりほか「キクイモに含まれるイヌリンの加熱やpHに対する安定性」日本家政学会研究発表要旨集(2018年)
- 森田朗ほか「キクイモにおけるイヌリンの貯蔵中の分解とプレバイオティクス効果」日本食品科学工学会誌(2022年)
- 駒場あすか、松本雄一「キクイモ塊茎粉末で置換した食パンの物性,貯蔵性および嗜好性」美味技術学会誌(2022年)
- シェアシマ 赤坂T・M株式会社 企業ページ

シェアシマ編集部
「大切な食資源を活かす」をパーパスに、食品業界に携わる方々に向けて日々の業務に役立つ情報を発信しています。食品業界の今と未来を示唆する連載や、経営者へのインタビュー、展示会の取材、製品・外食トレンドなど話題のトピックが満載!さらに、食品開発のスキルアップや人材育成に寄与するコンテンツも定期的にお届けしています。