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豆なしコーヒーとは?2050年問題からみる背景と開発事例、メリット・課題について解説

豆なしコーヒーとは?2050年問題からみる背景と開発事例、メリット・課題について解説

世界中で親しまれているコーヒーですが、近年は気候変動や生産地の環境変化により、「コーヒー2050年問題」と呼ばれる供給リスクが危惧されています。こうした状況を背景に、コーヒー豆を使わずにその風味を再現する「豆なしコーヒー」の開発が国内外で進んでいます。

代替原料やアップサイクル原料を活用した新たな食品開発は、単なる原料不足への対応にとどまらず、サステナブルな食品市場を切り開く可能性も秘めています。

本記事では、コーヒー2050年問題の背景とともに、豆なしコーヒーの特徴や国内外の開発事例、今後の可能性について解説します。

コーヒー豆に何が起きている?コーヒー2050年問題とは



近年、食品業界では原料の安定調達が大きな課題となっています。コーヒーも例外ではなく、気候変動による生産量の減少や価格高騰への懸念から、「コーヒー2050年問題」が注目されています。 

2050年問題と呼ばれるコーヒーの供給リスク 

出典:世界経済のネタ帳「コーヒー豆価格の推移(2023年1月~2026年7月)」


コーヒーの多くは、年間を通して気温や降水量が安定した熱帯・亜熱帯地域で栽培されています。しかし、地球温暖化による気温上昇や降雨パターンの変化、異常気象の頻発などにより、従来の栽培環境を維持することが難しくなっています。

世界自然保護基金(WWF)などが紹介する研究では、2050年までにアラビカ種の栽培適地が現在の約50%まで減少する可能性が示されています。このほか、病害虫の増加や土壌環境の変化も、生産量や品質に影響を与える要因として指摘されています。

さらに、生産量の減少は国際価格の上昇につながる可能性があります。実際、近年はブラジルやベトナムなど主要生産国で天候不順が相次ぎ、コーヒー相場が大きく変動する場面も見られました。

飲食品メーカーにとっては、調達コストの増加だけでなく、品質の安定確保やサプライチェーン全体の見直しも重要な課題となっています。

「コーヒー豆に頼らない」という新しい発想へ

こうした供給リスクを背景に、新たな選択肢として注目されているのがコーヒー豆不使用の「豆なしコーヒー」です。

従来、コーヒーの代替飲料といえば、たんぽぽコーヒーやチコリコーヒー、大麦コーヒーなど、コーヒーに似た風味を楽しむ飲み物が中心でした。

一方、近年開発が進む豆なしコーヒーは、コーヒー豆を使わずに、香りや苦味、酸味といったコーヒー特有の風味を科学的に再現することを目指しています。

また、食品副産物や植物由来原料を積極的に活用することで、環境負荷の低減や原料調達リスクの分散にもつながる技術として期待されています。

豆なしコーヒー(ビーンレスコーヒー)とは



豆なしコーヒーとは、その名のとおりコーヒー豆を使用せずに、コーヒーらしい味や香りを再現した飲料です。別名「ビーンレスコーヒー」と呼ばれることもあります。

一般的には、穀物や果実、植物由来原料などを焙煎・抽出したり、食品由来の香気成分を組み合わせたりすることで、コーヒーに近い風味を生み出します。

近年はフードサイエンスの進歩により、香気成分の分析技術や発酵技術が発達し、従来の代替飲料とは異なる、より本格的な味わいを目指した商品開発が進められています。

また、コーヒー豆を必要としないため、生産地の気候変動の影響を受けにくく、食品副産物や未利用資源を活用しやすい点も特徴です。

「代替」からコーヒーの新しい選択肢へ

豆なしコーヒーは「本物のコーヒーの代用品」という位置づけから、新たなカテゴリーへと変化しつつあります。

近年は、サステナブルな食品を選びたい消費者や、環境配慮型の商品を求める企業のニーズが高まっています。そのため、「コーヒーが飲めればよい」という発想ではなく、環境負荷の少ない新しい飲料として評価されるケースも増えています。

さらに、アップサイクル原料や地域資源を活用することで、新たなブランド価値やストーリーを付加できる点も、食品開発における大きな魅力といえるでしょう。

★原料商品の掲載を希望される企業様は、会員登録(無料)で10品まで掲載可能です。

国内外での商品開発事例 3つ|アップサイクル原料の活用も

国内外では、豆なしコーヒーの商品化に取り組む企業が登場しています。ここでは代表的な開発事例を紹介します。 

Atomo Coffee|米国発、世界初のビーンレスコーヒー

ビーンレスコーヒーの代表例として知られるのが、米国・シアトルのスタートアップ企業Atomo Coffeeです。

Atomo Coffeeは、「コーヒーを分子レベルで分析し、その風味を植物由来原料で再現する」という独自のアプローチを採用しています。

原料には、デーツの種子やひまわりの種など、本来は廃棄される食品副産物(アップサイクル原料)を活用。これらを焙煎・加工し、さらに天然由来の香気成分を組み合わせることで、コーヒーらしい香りや味わいを実現しています。

アップサイクル原料を利用することで、食品ロスの削減や資源の有効活用につながるだけでなく、コーヒー栽培に伴う森林伐採や水資源の使用量を抑えられる可能性も期待されています。

同社は、環境負荷の低減だけでなく、「コーヒー文化を未来につなぐための新たな選択肢」としてビーンレスコーヒーを位置づけています。サステナブルな食品開発の先進事例として世界的に注目を集めています。
※参考:Atomo Coffeeホームページ

CAFE WATER|日本コカ・コーラが提案する新たなコーヒー飲料

日本でも、「コーヒーの未来」を見据えた新しい飲料の開発が始まっています。そのひとつが、日本コカ・コーラの「CAFE WATER」です。

この商品は、従来のコーヒー飲料とは異なり、コーヒーの香りや世界観を楽しみながらも、苦味や渋味を抑えた新カテゴリーの飲料として開発されました。水やお茶のようにごくごく飲めるコーヒー飲料を目指しています。

主なターゲット層は2つあり、ひとつは缶やペットボトル入りのコーヒーを多く購入してきた40~50代男性。もうひとつは、コーヒーの苦味や渋味が苦手な若年層や、これからコーヒーを飲み始める層です。

また、同社では、CAFE WATERを単なる代替品ではなく、コーヒーカテゴリーの裾野を広げる新しい入り口として位置づけています。コーヒー豆の供給リスクが高まる中で、多様な飲用シーンや新たな価値提案につながる商品として期待されています。
※参考:食品産業新聞社ニュース「コカ・コーラ、『ジョージア』でカフェウォーター コーヒー豆不使用の新提案」

未来のBLACK、未来のLATTE|アサヒ飲料が開発するコーヒー代替飲料

アサヒ飲料も、「コーヒー2050年問題」を背景に、コーヒー豆を使用しない代替飲料の開発を進めています。

開発中の「未来のBLACK」と「未来のLATTE」は、コーヒーの代替素材と植物由来のカフェインを組み合わせ、コーヒーらしい飲用体験を目指した商品です。同社では、驚きやワクワク、感動を提供することを目指して、社会課題解決につながる新商品の開発・展開を行っています。

当初は「未来のLATTE」を2026年、「未来のBLACK」を2027年に発売予定としていましたが、その後、より品質を高めるため、発売時期を2027年以降へ延期すると発表しています。
※参考:Asahiニュースリリース「特別な飲用体験創出や社会課題解決につながる商品を展開」

豆なしコーヒーのメリットと課題



コーヒー豆を使わないという発想は、食品開発に新たな可能性をもたらす一方で、解決すべき課題も残されています。 

メリット|原料の選択肢が広がる

豆なしコーヒーの最大のメリットは、原料の選択肢を広げられることです。

従来はコーヒー豆に依存していた原料調達を、穀物や果実、副産物など多様な植物資源へと広げられるため、気候変動による供給リスクを分散できます。

また、デーツの種子や果実の搾りかすなど、これまで廃棄されてきた食品副産物を活用することで、アップサイクルによる付加価値創出にもつながります。食品ロス削減や資源循環への貢献は、企業のサステナビリティ戦略とも親和性が高いといえるでしょう。

さらに、コーヒー豆を輸入に頼る割合が高い日本では、代替原料の活用によってサプライチェーンの安定化が期待されます。今後は地域資源や未利用資源を活用した新たな商品開発も広がる可能性があります。

課題|「コーヒーらしさ」をどう再現するか

一方で、最大の課題はコーヒーらしい風味をどこまで再現できるかです。

コーヒーには、焙煎によって生まれる数百種類もの香気成分が含まれており、その複雑な香りや苦味、酸味、余韻が嗜好性を高めています。

豆なしコーヒーでは、こうした風味を植物由来原料や香気設計によって再現する必要があり、高度な食品加工技術や香料設計が求められます。

また、消費者の受け止め方も重要です。「本物のコーヒーではない」という印象を持たれる可能性もあるため、単なる代替品としてではなく、新しい飲料カテゴリーとして価値を伝えていくマーケティングも欠かせません。

食品開発においては、味や香りだけでなく、環境価値やストーリーを含めた商品設計が今後ますます重要になるでしょう。

まとめ

コーヒー2050年問題を背景に、コーヒー豆を使わない「豆なしコーヒー」の開発が国内外で進んでいます。アップサイクル原料や植物由来素材を活用することで、原料調達リスクの分散や環境負荷の低減につながる可能性があります。

一方で、「コーヒーらしい風味」をどう再現し、新たな価値として消費者に受け入れてもらうかが今後の課題です。原料不足への対応だけでなく、新たな食品市場やコーヒー文化を生み出す可能性を秘めた取り組みとして、今後の動向が注目されます。

 

執筆者プロフ シェアシマ編集部

「大切な食資源を活かす」をパーパスに、食品業界に携わる方々に向けて日々の業務に役立つ情報を発信しています。食品業界の今と未来を示唆する連載や、経営者へのインタビュー、展示会の取材、製品・外食トレンドなど話題のトピックが満載!さらに、食品開発のスキルアップや人材育成に寄与するコンテンツも定期的にお届けしています。

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