資材メーカーに聞くナフサショックの実態|食品業界への影響と企業の対応策を解説
食品業界では、原材料価格の高騰に加え、包装資材や物流コストの上昇が続いています。その背景のひとつとして注目されているのが「ナフサショック」です。
このナフサショックによって、プラスチック容器や包装資材、ラベル、接着剤など石油由来製品のコストが高騰し、食品メーカーの開発・調達・製造現場に大きな影響を及ぼしています。
本記事では、ナフサショックの基礎知識から食品業界への影響、企業の対応事例と資材メーカーへのインタビュー、今後求められる対策までを解説します。

ナフサショックとは?
まず、「ナフサショック」とは何かを整理します。ナフサは食品そのものの原料ではありませんが、食品包装や製造資材に深く関わっているため、価格変動が食品業界にも波及します。
ナフサとは?
ナフサとは、原油を精製する過程で得られる石油製品のひとつです。プラスチックや合成樹脂、接着剤など、多くの化学製品の基礎原料として使われています。
食品業界では、トレーやボトル、フィルム包装、ラベル資材、印刷インクなど、日常的に使われる資材の多くがナフサ由来です。そのため、ナフサ価格が上昇すると、食品メーカーの包材コストにも直接影響が出やすくなります。
なぜ“ショック”と呼ばれるのか
近年の中東情勢の緊迫化による原油価格の高騰などの影響により、ナフサ価格は急激に上昇しました。単なる値上がりではなく、複数の資材価格が連鎖的に上昇し、企業収益や商品設計に影響を与えるレベルになったことから「ナフサショック」と呼ばれています。
ナフサショックで食品業界は何が変わる?

ナフサ価格の変動は、単に「包装材が高くなる」という話ではありません。製造現場では、包装・原料・物流まで広範囲に影響が広がっています。
包装・容器コストの上昇
最も影響を受けやすいのが包装・容器関連です。食品トレー、フィルム包装、ボトル、キャップ、ラベル、印刷資材など、石油由来製品は非常に多く存在します。
たとえば、内容量は変わらなくても包装資材価格が上昇すれば、利益率は圧迫されます。値上げが難しい商品では、色数削減や軽量化、包装仕様の見直しが進むケースも増えています。
原材料・製造コストへの波及
ナフサ由来の影響は包装材だけではありません。添加物の一部、溶剤、接着剤、製造ラインで使う副資材などにも影響が及びます。
現場では「想定外の資材値上げ」が連鎖的に起きることもあり、開発担当者がレシピ変更や原料置換を検討するケースも増えています。調達難による納期遅延が課題になることもあります。
物流・サプライチェーンへの影響
物流分野への影響も見逃せません。梱包材価格の高騰に加え、燃料費上昇による輸送コスト増も発生します。
さらに、特定資材の供給が不安定になることで、「いつもの資材が急に入らない」というリスクも高まります。結果として、複数調達先の確保や在庫管理の見直しが求められています。

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今後の見通しと政府の動き
現場では「この状況はいつまで続くのか」と、不安を抱える声も少なくありません。特にナフサ由来資材は、原油価格に加え、円安や中東情勢などの影響も受けやすく、短期間で価格が変動する可能性があります。
2026年5月時点では、政府によるエネルギー価格高騰対策や、中小企業の設備投資・生産性向上を支援する施策が進められています(※)。一方で、包装資材そのものの価格上昇を直接抑える施策は限られていて、企業側での対応が求められる場面も少なくありません。
実際の現場では、すでに包材の軽量化や代替素材の検討、調達先の見直しなど、さまざまな工夫が進められています。今後は、価格上昇や供給変動が起こる可能性も見据えながら、変化に対応できる選択肢を持つことが、より重要になっていきそうです。
※参考:経済産業省資源エネルギー庁「省エネルギー投資促進に向けた支援補助金」
※参考:中小企業庁「事業再構築・生産性向上支援」
食品企業における国内対応事例

すでに多くの食品企業では、コスト上昇を受けて包装資材やインク使用量の見直しを進めています。ここでは、実際の企業の対応事例を4つ紹介します。
カルビー|ポテトチップス等のパッケージのインク削減
カルビーでは、ポテトチップスなど一部商品のパッケージについて、印刷インク使用量削減の取り組みを進めています。原材料の調達の不安定化を受けて、印刷インクの色数を2026年5月25日から時期限定で2色に変更すると発表しました。
※参考:カルビー「中央情勢の影響による一部商品仕様見直しのお知らせ」
ファミリーマート|包装マークのインク削減
ファミリーマートでは、2026年夏以降、プライベートブランド「ファミマル」の商品の包装印刷において、従来の青と緑のロゴマークを、白黒にすると発表しました。このほか、おにぎりの包装や弁当容器の種類も順次整理していく予定です。
※参考:朝日新聞 「ファミマのPB、パッケージのロゴを白黒に 弁当容器の種類も整理」
ローソン|店頭販売コーヒーのプラスチック使用量削減
ローソンでは、店頭販売コーヒーにおいてカップの蓋をプラスチックから紙に変更するほか、弁当容器のプラスチック製の帯の縮小化なども検討しています。また、プライベートブランドの水のペットボトル容器を薄くするなど、プラスチック使用量の削減を進めています。
※参考:TBS NEWS「ローソン イラン情勢による原料高でコーヒーのフタを紙製に変更など対応を加速へ」
イトーヨーカドー|刺身容器等プラスチックの使用量削減
イトーヨーカドーでは、刺身やステーキなどの一部容器のフタを、プラスチックからラップに変更しています。また、容器を無色にしてインクの使用量を削減するほか、透明のプラスチック容器で販売していた天ぷらや巻き寿司を「ばら売り」にして、紙の袋を使う取り組みを進めています。
※参考:Yahoo!ニュース「小売業界で容器や包装変更相次ぐ 中東情勢受け」
海外ではどう対応している? 脱プラスチック・量り売りの潮流
海外では、包装資材の価格上昇や環境意識の高まりを背景に、包装を減らす動きが広がっています。
たとえば欧州では、消費者が容器を持参して必要な量だけ購入する量り売りの店舗や、あえてパッケージを簡素化した商品、包装そのものをなくした「パッケージレス販売」が広がっています。こうした取り組みは、資材コストの抑制だけでなく、食品ロスやプラスチックごみ削減にもつながると期待されています。
ただし、日本市場では衛生基準や流通構造、消費者ニーズが異なるため、そのまま導入できるとは限りません。重要なのは「海外事例を参考に、自社に合う形へ再設計する視点」です。
資材メーカーに聞く、供給体制の現状とリスク回避策

ナフサショックによる原材料高騰は、食品業界全体において深刻な課題となっています。そうした中、資材メーカーの現場では、今まさに何が起きているのでしょうか。
今回はシェアシマ会員である食品パッケージ製造メーカーの代表に、高騰の渦中における供給体制の実態と、同社が講じている具体的なリスク回避策について、特別にお話を伺いました。
ーー原材料価格の急騰と収益・価格転嫁への影響について教えてください。
2026年4月下旬からの原料メーカー各社の値上げにより、仕入れ価格が大幅に上昇しています。特に溶剤関連の上昇が顕著であり、製品価格への転嫁は避けられない状況です。
主な仕入れ価格の上昇率
- ポリプロピレン: 約30% 〜 35%
- ポリエチレン: 約33% 〜 36%
- 溶剤等: 約50%
現時点では「値上がり前の水準に価格が戻ることは考えにくい」との見方が強く、今後も二次・三次と段階的な値上げが続く見通しです。
ーー供給体制の現状と安定供給に向けて、どのようなリスク回避策を講じていますか。
原料メーカーからは、2ヶ月先までの在庫確保状況が報告されていて、前年比100%までの供給は維持される見込みです。一部の溶剤で枯渇が見られるものの、代替品対応や在庫確保により、現時点では直ちに原料不足に陥るということはございません。
各食品メーカーからはインキの在庫状況を懸念する問い合わせが増加していますが、資材メーカーとして、供給継続のために多角的な対策を講じています。
たとえば、在庫が比較的潤沢な中国の協力工場に製造を委託するなどして、供給が止まった際の対応策を準備しています。また、当社では新規受付の制限は設けていません。まずは、海外の協力工場へ依頼し、状況が落ち着いた際に日本製造に戻すなど柔軟な生産体制で備えています。
ーー今回の騒動を受けて、脱プラスチックへの動きはありますか。
今回のナフサショックを契機とした「脱プラスチック素材」への転換については、エンドユーザー企業の判断によるところが大きいですが、今のところ各企業様から具体的な相談は出ていません。
※このインタビューの内容は、2026年5月25日取材時点の情報です。
食品企業に求められる3つの対応策
ナフサショックの影響が長引く中、多くの食品企業ではすでに包装仕様の見直しや調達先の再検討など、さまざまな工夫が進められています。重要なのは、開発・調達・製造の視点から、中長期で備えを進めていくことです。ここでは、今後重要になる3つの視点を紹介します。
包装仕様やレシピ・原料の再設計
すでに多くの現場で、包装資材の軽量化や印刷インクの色数削減、簡易包装などの工夫が進められています。加えて、原料の置換、添加物や製法の見直しなど、商品設計そのものを見直す動きも広がっています。
もちろん、品質や味、ブランドイメージとのバランスもあり、簡単に変更できるものではありません。しかし、将来的な供給リスクやコスト変動に備える意味でも、代替原料などの視点を持っておくことで、開発の柔軟性が高まります。
調達先の分散
資材不足や急な価格変動が起きた際、調達先が限られていることがリスクになるケースもあります。
そのため近年では、既存サプライヤーとの関係を大切にしながらも、新たな取引先の情報収集や複数調達先の確保を進める企業も増えています。「必要な時に止まらない」体制づくりは、今後ますます重要になりそうです。
開発・調達・資材部門での連携の強化
コスト課題への対応は、特定部署だけで完結するものではありません。
たとえば、「原料変更」「包装軽量化」「製造工程の見直し」は、それぞれ別部門が関わるテーマです。早い段階から開発・調達・製造の情報共有を行い、コストや供給リスクを共通課題として捉えることが、現実的な解決策につながります。
まとめ
ナフサショックは、単なる包材価格の上昇にとどまらず、食品メーカーの商品開発・調達・物流全体に影響を及ぼしています。こうした状況をうけて、包装仕様の見直しや調達先の再検討、原料変更などさまざまな工夫や対応を進めている企業も増えています。
一方で、原料高・資材高が今後続く可能性を考えると、短期的なコスト対策だけでは対応が難しくなっていくことも予想されます。 そのため、代替原料や製法の見直しなどの視点を、早い段階から持っておくことが、中長期的な備えにつながるでしょう。
自社に合う代替案を見つけることで、将来のリスクに備えることができます。原料探索やレシピ再設計、包材・資材調達でお困りの場合は、ぜひシェアシマにご相談ください。

シェアシマ編集部
「大切な食資源を活かす」をパーパスに、食品業界に携わる方々に向けて日々の業務に役立つ情報を発信しています。食品業界の今と未来を示唆する連載や、経営者へのインタビュー、展示会の取材、製品・外食トレンドなど話題のトピックが満載!さらに、食品開発のスキルアップや人材育成に寄与するコンテンツも定期的にお届けしています。