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米高騰が食品業界に与える影響は?2025年、商品開発に求められる視点

米高騰が食品業界に与える影響は?2025年、商品開発に求められる視点

2024年から続く異常気象や燃料費の高騰、国際的な需給の不安定さにより、日本の米価格がかつてない水準で上昇しています。2025年2月20日に公開した記事では、米の高騰の原因と共に、政府の取り組みについて詳しく解説しました。

今回の米の価格高騰は、米を主原料とする味噌や日本酒などの発酵食品や、外食産業にも大きな打撃をもたらしています。それと同時に、米を主原料とする商品開発の現場では、大きな方向転換が求められています。

そこで本記事では、米高騰の現状・背景と共に、食品業界への影響や、商品開発の現場で求められる視点について解説します。

米高騰による食品業界への影響



米の価格高騰は食品業界に深刻な影響を与えています。ここでは、米価格の高騰が続く現状・背景と共に、特に影響が大きい業界や外食産業への影響について解説します。

米価格の高騰が続く現状・背景

2025年2月の記事で解説した通り、米の価格が高騰した背景には、2023年の猛暑による米の生育不良だけでなく、さまざまな理由があります。

米の価格上昇は2024年の夏頃から本格化し、2025年5月現在も価格高騰が続いています。政府の備蓄米の放出が発表された後も、米の価格は上昇し続けていて、一年前の同時期に比べて約2倍に値上がりしました。

こうした状況を受けて、流通大手のイオンでは、2025年4月に「カリフォルニア米を8割と国産米を2割でブレンドして販売する」ことを発表。通常の国産米よりも1割程度安い価格帯になることから、大きな注目を集めています。

こうした取り組みは一例に過ぎず、米の価格高騰や米不足の課題解決に向けて、企業や政府では安定供給のためのさまざまな取り組みが進められています。

※参考:読売新聞オンライン「イオン、カリフォルニア産と国産のブレンド米販売へ」

特に影響が大きい業界|味噌や日本酒、みりんの今

米を主原料とする味噌や日本酒、みりんなどの製造現場では、米の価格高騰により、大きな打撃を受けています。価格高騰の問題だけでなく「必要な量の米が確保できるのか」「生産量を減らす必要があるのか」など、現場での課題は山積みです。

特に、味噌や日本酒、みりんなどの食品製造においては、加工用の国産米や、酒米など、使用する米の種類は異なりますが、米は主原料である以上、味わいやブランド価値に直結するため、単純な代替や原料削減が難しいケースもあります。

従来の価格帯を維持することが困難になり「値上げ」に踏み切る企業や、生産方法や数量、商品ラインの見直しを進める企業も出始めています。

※参考:NHK「“令和の米騒動”で酒造りがピンチに…」

外食産業の現状

米の価格高騰は、外食産業においても深刻な影響を与えています。特に定食チェーンや和食ファストフードでは、ライス単価が1食あたり数円上がるだけでも、全体の収益に大きく影響します。

大手牛丼チェーンでは、国内産と海外産の米をブレンドして提供したり、これまで使ったことのない国産米の品種を使ったりするなどして、商品の品質が安定するように努めています。

外食産業では、外国産の米に切り替える企業も出始めています。国産米と変わらない味や食感を出すために、米の吸水時間や米を炊く時の水分量を工夫するなど、「炊き方」の研究も行われています。

※参考:NHK「“コメ高騰”外食産業などはどうする?模索する現場」

米高騰で求められる商品開発の視点



米の価格高騰が続く中で、商品開発の現場ではどのような視点が求められるのでしょうか。ここでは、大きく3つの視点について解説します。

原価計算の再検討

これまで「米は安価で安定して供給できる」という前提で、多くの商品が設計されていました。しかし、今回の米の価格高騰を受けて、原価計算の見直しが求められています。原料コストの増加を受けて、最終価格に転嫁するのか、それともパッケージ内容や使用量を調整するのか、戦略的な判断が求められます。

特に、PB商品など価格訴求力が強いカテゴリにおいては、新たな価値提案を前提とした再設計が重要です。また、米を主原料にする商品の中には、実質値上げを行う事例も増えています。消費者に対する誠実な説明と、納得感のある価値提案ができるかどうかがポイントになります。

調達ルートの多様化と未利用資源の活用

今後の価格変動リスクに備えるため、調達ルートの多様化は急務です。地域の農家との直接契約や、規格外米の活用、精米副産物の再利用といった取り組みも話題になっています。

それと同時に、米ぬかや割れ米などこれまで利用されてこなかった「未利用資源」を原料として使用する事例も出始めています。たとえば米ぬかは、栄養価が高く、スナックやグラノーラの素材として再評価されています。

こうした未利用資源の中には、機能性食品開発との親和性が高い原料も多くあります。こうした原料を上手に活用することも、新しい切り口として注目されています。

米由来の商品設計の見直し

従来は「国産米使用」がブランドの価値になっていた商品も、一部ではブレンド米や、雑穀や豆類など代替素材の採用に踏み切る例が見られます。また、米粉商品の開発では、製粉ロスの削減や再利用ができる設計ニーズが今後より高まると予測されます。

健康志向と結びつけた新たな訴求軸を設けることで、価格上昇に対して消費者の理解を得やすくなります。原価の調整と共に、付加価値をつける方法や類似製品との差別化についても今後検討を重ねる必要がありそうです。

まとめ

2025年、米価格の高騰は一時的な現象ではなく、長期的な視点で捉える必要があります。食品業界全体において、原料の見直しや調達戦略の再構築が求められる中、商品開発には「コスト」と「価値」の両面を見据えた視点がより重要となっています。

これを機に、単なる代替や縮小ではなく、生活者の新しい価値観に寄り添う創造的な商品開発が期待されています。

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執筆者プロフ シェアシマ編集部

食品業界に携わる方々に向けて、日々の業務に役立つ情報を発信しています。食品業界の今と未来を示唆する連載や、経営者へのインタビュー、展示会の取材、製品・外食トレンドなど話題のトピックが満載!さらに、食品開発のスキルアップや人材育成に寄与するコンテンツも定期的にお届けしています。

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