食品の企画開発をサポートする

トランプ関税で何が変わる?食品開発者が知っておきたい影響と対応策

トランプ関税で何が変わる?食品開発者が知っておきたい影響と対応策

米国のトランプ政権による大幅な追加関税が、食品業界に大きなインパクトを与えています。この関税によって、食品業界にはどのような影響やリスクが想定されるのでしょうか。

また、こうした事態を受けて、食品開発の現場ではどのような視点やアクションが求められるのでしょうか。今回の記事では、トランプ関税の背景や食品業界に与える影響と共に、食品開発者が知っておきたい影響と対応策について解説します。

トランプ関税とは|背景と食品業界との関わり


2025年、トランプ米大統領によって大幅な関税措置が導入されました。これらは食品・農産物・包装材などにも及び、日本の食品業界にも大きな影響を及ぼし始めています。ここでは、トランプ関税の背景と関税対象となる食品や農産物について解説します。

トランプ関税とは

2025年4月2日、トランプ大統領はホワイトハウスの演説で「相互関税」として「日本には24%の関税を課す」ことを発表しました。

日本以外では、中国は34%、インドは26%、EU(ヨーロッパ連合)は20%の相互関税を課すことを明らかにし、これは世界経済に大きな衝撃を与えています。

※参考:NHK「トランプ大統領 相互関税日本に24% 一律10%関税」

アメリカからの主な輸入品目

関税の影響を考える上で重要なのは、アメリカからの主な輸入品目です。2023年の輸入品目の上位5つをみると、トウモロコシ(約3,300億円)、大豆(約2,100億円)、牛肉(約1,700億円)、豚肉(約1,400億円)、小麦(約1,100億円)となっています。

また、上位5つ以外では、コメ(約500億円)、ばれいしょ(41億円)なども輸入額が多い品目です。

穀物類に注目すると、輸入金額の中でアメリカ産が占める割合は、大豆が約7割、トウモロコシが約5割、小麦は約4割となっていて、その大部分をアメリカからの輸入に頼っている状況です(※)。

※参考:三菱総合研究所「『トランプ関税』の農業分野への影響は?(1)輸出入の現状と輸入拡大の可能性」

食品業界に与える影響・リスク


トランプ関税によって、原材料のコストの高騰や、物流の不安定化など、商品開発や製造の現場に大きな影響が出ることが想定されます。ここでは、どのような影響・リスクが出るのかを解説します。

原材料コストの高騰

アメリカからの主要な輸入品目には、大豆・トウモロコシ・小麦など、食品製造に欠かせない原材料が多く含まれています。調達コストが大幅に上昇することは避けられず、加工食品や製パン、畜産飼料などでコストの高騰が考えられます。また、畜産飼料のコストが高くなることで、畜産原料も値上がりします。

サプライチェーンの不安定化と物流コストの上昇

関税の影響は、価格だけにとどまりません。物流や調達のスケジュール、供給ルートの見直しなど、サプライチェーン全体に不安定な要因が広がりつつあります。輸入業者の中には価格変動のリスクから調達先を変更する動きも見られ、これにより供給ルートの見直しや、新たな取引先との調整が必要になるケースも出始めています。

★原料商品の掲載を希望される企業様は、会員登録(無料)で10品まで掲載可能です。

商品開発者に求められる視点とアクション



関税の影響を受けながらも、消費者ニーズに応える商品をどう生み出していけばよいのでしょうか。ここでは、原料調達からレシピ変更、価格設計まで、開発者に求められる視点とアクションについて解説します。

原料の調達先の変更や代替素材の検討

従来通りの原材料の調達が難しくなる中で、調達先の変更を検討することは、コスト上昇や供給リスクを回避する上で重要です。また、原材料そのものを見直し、「別の素材で同等の機能や味を実現できないか」という視点も求められます。

たとえば、コーンスターチの代替としてタピオカ澱粉を活用したり、大豆の代わりにえんどう豆由来のたんぱく質を使用するなど、代替素材の検討は、コスト抑制だけでなく、新たな商品価値の創出につながる可能性もあります。

レシピの変更や規格の見直し

レシピや商品の仕様を柔軟に見直すことで、関税の影響を抑制することができます。たとえば、缶詰野菜の一部を冷凍素材に置き換えたり、原料の配合率を再設計して輸入比率を削減したりするなど、商品コンセプトを損なわない範囲でのレシピ変更も考えられます。

また、商品の内容量やサイズを見直すことで、輸送や保管にかかるコストを間接的に抑えることも可能です。

長期契約・共同仕入れによるリスク分散

価格変動や関税リスクを回避するためには、短期的な対応に加えて、中長期的な視点での対応も有効です。特に、数社が共同で輸入することによる「価格交渉」や、長期契約による「仕入れ価格の固定化」はリスクヘッジとしても効果的な方法です。

例えば、製菓メーカー数社がナッツ類の仕入れを共同化し、大口輸入による単価交渉と物流コストの削減を実現した事例があります。また、冷凍果実を扱うメーカーが連携し、海外サプライヤーと直接長期契約を結ぶことで、年間の仕入れ価格を抑えたケースも見られます。

中堅・中小企業の場合、単独での交渉が難しいケースもあるかもしれません。しかし、業界団体や地域の連携による共同調達の仕組みを活用することで、現実的で安定的な対策ができる可能性もあります。

原価の再計算・価格シミュレーション

今回の関税による原材料価格や物流費の変動は、商品の原価構造に大きな影響を与えます。そのため、こうした影響を踏まえた「原価の再計算」が必要です。

さらに、「どの程度まで価格転嫁が可能か」「代替原料に変更した場合にどう変化するか」など、複数パターンのシミュレーションを行うことも重要です。こうした試算はわずかな原価の変動が大きな影響を及ぼす場合も多く、継続的な見直しが求められます。

シェアシマでは、価格と品質の良好なバランスを保つための「価格シミュレーション」など、具体的な試算にも対応しています。専門チームが貴社のニーズに合わせてサポートしますので、お気軽にお問い合せください。

まとめ

トランプ関税への対応は単なるリスク管理ではなく、商品開発の在り方そのものにも影響を与えています。調達先や素材の見直し、原価の再計算などを通して戦略的に向き合い、魅力的で利益の出る商品設計をしていくことが重要と考えられます。

シェアシマでは「価格シミュレーション」などの試算にも対応しています。専門チームが柔軟にサポートしますので、お気軽にお問い合せください。

執筆者プロフ シェアシマ編集部

食品業界に携わる方々に向けて、日々の業務に役立つ情報を発信しています。食品業界の今と未来を示唆する連載や、経営者へのインタビュー、展示会の取材、製品・外食トレンドなど話題のトピックが満載!さらに、食品開発のスキルアップや人材育成に寄与するコンテンツも定期的にお届けしています。

同じカテゴリの記事

マーケティングはなぜ必要なのか|対談動画 【どうする?食品企業のサステナブル経営 -Honne Talk- #04】

マーケティングはなぜ必要なのか|対談動画 【どうする?食品企業のサステナブル経営 -Honne Talk- #04】

  • SDGsに貢献
海外市場の“いま”が示す次の一手 高付加価値の作り方【食品企業のためのサステナブル経営(第29回)】

海外市場の“いま”が示す次の一手 高付加価値の作り方【食品企業のためのサステナブル経営(第29回)】

  • SDGsに貢献
生物多様性の崩壊!? 食品企業が持つべき視点|対談動画 【どうする?食品企業のサステナブル経営 -Honne Talk- #03】

生物多様性の崩壊!? 食品企業が持つべき視点|対談動画 【どうする?食品企業のサステナブル経営 -Honne Talk- #03】

  • SDGsに貢献
「令和の米騒動」コメ価格高騰をどう見る|対談動画 【どうする?食品企業のサステナブル経営 -Honne Talk- #02】

「令和の米騒動」コメ価格高騰をどう見る|対談動画 【どうする?食品企業のサステナブル経営 -Honne Talk- #02】

  • SDGsに貢献
展示会のこれからを考える~体験とテクノロジーが交差する、新しい商談のカタチ~【社長コラム#6】

展示会のこれからを考える~体験とテクノロジーが交差する、新しい商談のカタチ~【社長コラム#6】

  • SDGsに貢献
食品企業が抱える課題 サステナブルにどう取り組む?|対談動画 【どうする?食品企業のサステナブル経営 -Honne Talk- #01】

食品企業が抱える課題 サステナブルにどう取り組む?|対談動画 【どうする?食品企業のサステナブル経営 -Honne Talk- #01】

  • SDGsに貢献