世界的ブーム、抹茶の需要動向2026|商品開発における抹茶の選び方と品質グレード
世界的な健康志向の高まりと和食ブームを背景に、日本茶の中でも、特に「抹茶」の市場が急速に拡大しています。国内外を問わず需要が増す一方で、品質グレードや機能性成分の理解が追いついていないケースも少なくありません。
この記事では、2026年時点の市場動向から、食品加工用原料の品質の見極め方、商品開発への活用方法までを解説します。業務用の抹茶粉末をお探しの方、日本茶を使った新メニュー開発をご検討中の方は、ぜひ参考にしてください。

業務用抹茶パウダーの市場規模と需要動向2026

世界的な和食ブームが押し上げる抹茶パウダーの輸出需要
日本産の抹茶をめぐる輸出環境は、この数年で大きく変化しています。農林水産省の輸出統計によると、緑茶(抹茶を含む)の輸出額は2025年に約721億円を記録し、過去最高額を更新しました(※1)。アメリカ・EU・東南アジアを中心に、抹茶ラテやスイーツに使われる食品加工用途の需要が牽引しており、業務用の抹茶パウダーの引き合いは特に強まっています。
2013年のユネスコ無形文化遺産への「和食」登録以降、海外での日本食ブームは持続的に拡大していて、抹茶はその象徴的な素材として認知されています。
グローバルの抹茶の市場規模は2025年時点で約51億米ドルと推計されていて、2026年から2033年までの年平均成長率(CAGR)は約7.1%で拡大するとも予測されています(※2)。
※1参考:農林水産省「お茶の輸出入の動向」
※2参考:Grand View Research「Matcha Market Size & Share Report」
生産量は3倍に!国内市場における成長カテゴリー
国内では、カフェチェーンやコンビニエンスストアの抹茶フレーバー商品が市場を牽引しています。また、機能性表示食品カテゴリーへの参入を目指すメーカーが増え、テアニンやカテキンを訴求した飲料・サプリメントの開発が活発化しています。
農林水産省が公表するお茶の生産統計においても、抹茶の原料となる「碾茶(てんちゃ)」の生産量が近年右肩上がりで推移していて、2025年産の碾茶生産量は約6,278トンと、10年前の3倍以上に拡大しています(※3)。
※3参考:農林水産省「茶をめぐる情勢」
抹茶の栄養価と機能性成分、商品開発の注意点
抹茶が世界的ブームとなっている理由のひとつに、その健康機能性があります。ここからは、抹茶に含まれる機能性成分をご紹介するとともに、商品開発における注意点を解説します。
注目の機能性成分|カテキン・食物繊維・テアニンの含有量と効果
抹茶は茶葉を丸ごと粉末化するため、煎茶浸出液と比べて栄養成分を効率よく摂取できる点が魅力です。
抹茶及び煎茶の栄養価(100gあたり)
| 抹茶(粉末) | 煎茶浸出液 | |
|---|---|---|
| カテキン(タンニン) | 10.0g | 0.07g |
| 食物繊維 | 38.5g | 0g |
| テアニン | 約1,000mg 〜 3,000mg以上 | 約6mg 〜 20mg |
文部科学省の食品成分データベースによると、抹茶100g当たりのカテキン(タンニン)含有量は約10.0gとされていて、煎茶浸出液の含有量0.07gを大きく上回ります。カテキン類は、抗酸化・抗菌・血糖上昇抑制など多様な生理活性が報告されていて、機能性食品開発における中核成分のひとつです。
また、抹茶は食物繊維を100g当たり約38.5g含んでいて、腸内環境への貢献も期待されています。
さらに、テアニンは緑茶特有のアミノ酸で、リラックス効果や認知機能サポートへの関与が複数の研究で示されています。抹茶は飲む量が少なくても、茶葉の全成分を直接体内に取り入れるため、煎茶浸出液を飲むのに比べて数倍〜数十倍のテアニンを効率よく摂取することができます。
※参考:文部科学省 食品成分データベース
※参考:農研機構「国産抹茶の価格と化学成分含有量の関係」
機能性表示食品・健康食品への応用における注意点
茶カテキンの1日摂取量については、肝臓への悪影響に対する考慮が必要です。EFSA(欧州食品安全機関)は、栄養補助食品としてカテキンを摂取する場合、1日800 mg以下に抑えるように勧告を出しています。過剰摂取のリスクを念頭に置いた配合設計に注意しましょう。
また、機能性表示食品として抹茶の機能性成分の効果を訴求する場合は、消費者庁への事前の届出が必要です。
※参考:EFSA(欧州食品安全機関)「EFSA assesses safety of green tea catechins」

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抹茶の品質グレードとは?商品開発における原材料の選び方

抹茶のグレード(等級)には、国際的な統一規格や法的な定義は存在しませんが、業界内では、用途や品質に応じて大きく3段階に分類されています。
- ハイグレード(セレモニアル):茶道など高級飲用や贈答品、生菓子に最適
- スタンダード:ラテ・スムージーなど飲料用、家庭用、一般的な抹茶スイーツ用
- 加工用:焼き菓子など製菓・製パン向き、比較的安価
抹茶のグレードは、産地、一番茶(新芽)か二番茶以降かという「原葉の質」、日光を遮る「被覆日数」、そして石臼挽きか機械粉砕かという「製粉プロセス」の組み合わせによって決まり、これが味・色・香りの土台となります。
産地・栽培工程・挽き方による、抹茶の品質の違い
では、産地や栽培工程・挽き方によって、抹茶の品質にどのような違いが生まれるのでしょうか。
産地による違い
抹茶は産地によって風味特性が異なり、商品化の際のストーリー訴求やコスト戦略に大きく影響します。
| 産地 | 特徴 |
|---|---|
| 宇治(京都) | 歴史的背景による圧倒的なブランド力を持つ。複雑で層を成す深い旨味と優雅な香りが特徴で、高単価スイーツや高級ギフト向けのブランディングに最適。 |
| 西尾(愛知) | 全国の抹茶生産量の約20%を占める抹茶特化型の産地。発色が非常に良く、加工後も鮮やかな緑色が残りやすいため、カフェチェーンの飲料や製菓全般で重宝されている。 |
| 鹿児島 | オーガニックの取り組みは日本で最も進んでいて、サステナビリティ訴求や海外輸出向け製品の原料として需要を伸ばしている。温暖な気候と広大な平地を活かし、大型機械の導入で管理作業の低コスト化を実現。抹茶の原料となる「碾茶」の生産量は全国第1位を誇る。 |
| 静岡 | 爽やかで清涼感のある香りが特徴。ブレンド用やRTD(ペットボトルや缶)飲料など、コストパフォーマンスと機能性を両立させたい商品に適している。 |
| 八女(福岡) | 強い甘みとシルクのようなクリーミーな質感が特徴で、プレミアムラインのラテや高級和洋菓子に向いている。 |
単一産地は個性を打ち出すのに向いています。一方で、複数産地の茶葉をブレンドして年間を通じて品質と価格を安定させるという方法も、商品開発においては有効な戦略と言えます。
栽培工程(被覆栽培)が生む成分の違い

そもそも抹茶は、「覆下(被覆)栽培した茶葉を揉まずに乾燥した碾茶を、茶臼等で微粉状に製造したもの」と定義されています。一方で、露地栽培で日光を浴びて育ち、揉み工程を経た煎茶を粉砕したものは「粉末緑茶」と呼ばれ、成分や風味が明確に異なります。
茶の旨味成分である「テアニン」は、茶樹の根で合成され葉に蓄えられますが、日光を浴びると光合成によって渋味成分である「カテキン」に変化します。また、少ない光で光合成を行おうとするため葉緑素(クロロフィル)が増加し、鮮やかな緑色が生まれます。
つまり、光を遮る期間が長いほど旨味が強く残り、色彩も良くなるというわけです。
- 高級品:通常20日以上、長いものでは30日〜40日という長期間にわたって日光を遮ります。テアニンが極限まで茶葉に蓄積され、濃厚な旨味と甘みが生まれます。
- 加工用:被覆期間が10日未満〜14日程度と短い、あるいは露地栽培(被覆なし)の茶葉をブレンドすることも。カテキン由来のしっかりとした苦味や渋味が強くなります。
※参考:Link Global「抹茶のグレードと生産エリアを正しく理解する――用途別に最適解を選ぶ実務ガイド」
※参考:Bio Terrace「抹茶のグレードはどう決まる?製造工程と品質の基準を徹底解説」
粉砕技術による粒度と分散性

粉砕方法は、抹茶の口当たり・混ざりやすさ・泡立ち・劣化スピードを直接左右する重要な工程です。
石臼挽き
- 特徴: 摩擦熱を抑えて風味を守るが、1時間に30〜50gしか生産できない
- 粒度と形状: 5〜20μm。不規則な多角形(フレーク状)
- 特性と用途: 沈殿しにくく、クリーミーで消えにくい泡が立つ。茶道などの高級飲用に最適
ボールミル・ビーズミル(機械粉砕)
- 特徴: 球やビーズとの摩擦で粉砕。冷却装置で熱を抑え、1時間に数kgの量産が可能
- 粒度と形状: 15〜20μm。石臼に近く、やや丸みや角のある形状
- 特性と用途: 生産性と品質のバランスが良く、一般飲料や菓子原料に幅広く使われる
ジェットミル(気流式粉砕)
- 特徴: 超高速気流による衝突で粉砕。大量生産に優れる
- 粒度と形状: 3〜5μmと極細で、球形に近い
- 特性と用途: 流動性が高くダマになりにくい。素早く溶かす必要があるラテやアイスなどの工業用原料に向くが、豊かな泡立ちは得られにくい
※参考:日本食品科学工学会誌「粉砕方法の異なる抹茶の物性と形状」
※参考:Stone-Ground vs Machine-Milled Matcha: What Actually Matters for Quality | First Agri B2B
用途別、抹茶粉末原料の選び方

ここからは、「結局どれを選べば良いの?」という方に向け、用途別におすすめの抹茶粉末原料の選び方をご紹介します。目指す味やコストバランスなど、条件により一概には言えませんが、判断材料のひとつとして参考にしてください。
セレモニー(茶道・高級ストレート飲料)
一番茶を手摘みし、長期間の被覆栽培を経た茶葉を石臼で挽いた最高級グレード。渋味が極めて少なく、濃厚な旨味と香気、きめ細やかな泡立ちが必須です。宇治や八女産が推奨されます。
ラテ・RTDドリンク
乳脂肪分や甘味料に抹茶の風味がマスキングされないよう、強い渋味(カテキン)と力強い香りを持つスタンダードや、二番茶のブレンドなどが適しています。液中での発色の良さと溶解性が重要であり、機械粉砕された西尾産や鹿児島産がコストと品質のバランスに優れます。
プリン・洋生菓子
牛乳や生クリーム、卵のコクに負けない、しっかりとした苦味と渋味(カテキン)と力強い香り立ちが決め手です。また、焼き菓子のような熱による著しい退色は避けられますが、透明なカップに入れられてショーケースに並ぶことが多いため、光劣化への対策が求められます。スタンダード〜加工用グレードでおいしさを引き立てつつ、分散性の高さも重要です。
焼き菓子(クッキー・ケーキなど)
180℃以上のオーブン加熱によるクロロフィルの退色・褐色化への耐性が最も重視されます。熱に強いカテキン含有量が高めの加工用グレードが最適です。退色を防ぐため、クロレラなどを添加した着色抹茶の採用や、静岡・西尾産のブレンドもおすすめです。
和菓子・生菓子(羊羹・大福・練り切りなど)
羊羹・大福などの和菓子は、焼き菓子やラテに比べて、雑味や草臭さがないクリアな味が求められます。自然な甘みと香りを持つ無添加の上質な抹茶(スタンダード〜ハイグレード)が最適です。産地は、宇治や西尾産のほか、高級和菓子には深い甘みを持つ八女産も推奨されます。品質を維持するため、低温配送や暗所保管の徹底も鍵となります。
アイス・冷菓
低温環境下や油脂分の中でも香りが立ち上がり、分散性が良いものが求められます。機械粉砕によって均一に細かくされたスタンダード〜加工用グレードを高濃度に配合するのがおすすめです。西尾産の分散性の高さが重宝されます。
まとめ
一口に「抹茶」と言っても、産地や栽培工程、粉砕の方法によってさまざまなグレード、味・色味の特徴があります。商品開発においては、どんな味を目指すか、どのようにブランディングするかなどによって選択肢も広がっていきます。まずは、抹茶の基礎的な知識を深めたうえで、試作を繰り返しながら、自社の商品開発にぴったりの原料を見つけてみてはいかがでしょうか。
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シェアシマ編集部
「大切な食資源を活かす」をパーパスに、食品業界に携わる方々に向けて日々の業務に役立つ情報を発信しています。食品業界の今と未来を示唆する連載や、経営者へのインタビュー、展示会の取材、製品・外食トレンドなど話題のトピックが満載!さらに、食品開発のスキルアップや人材育成に寄与するコンテンツも定期的にお届けしています。