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サステナビリティは目の前の課題【食品企業のためのサステナブル経営(第5回)】

前回の記事を読む:食品産業における持続可能性とは?【食品企業のためのサステナブル経営(第4回)】

前回は食品業界において、サステナビリティの課題にどのようなものがあるかをお話しいたしました。そして、そうした課題を解決して社会を持続可能にすることが、私たちの仕事と生活も持続可能にすることになり、真剣に考える必要があると結論しました。そうは言っても、実際に問題が起きるのはもっと先のことだろう。自分が仕事をしている間は大丈夫。あるいは、遠い外国で起きていることでよくわからない。そう考える方もいらっしゃるかもしれません。ところが、それがそうでもないのです。今回はサステナビリティに関わる問題が既に目の前のビジネスに影響を与えていることをご紹介したいと思います。

サステナビリティの問題はもう始まっている



もっとも厳しい事態は、法律による規制です。英国や欧州ではサステナビリティ上問題がある原材料やそれを使った商品はまもなく輸入できなくなります。既にそのような規制が作られ、これから施行されるからです。当然、そうした国々へ日本から食品を輸出する際には、これらの規制をクリアする必要があります。原材料が森林破壊に関わっていないことや、サプライチェーン上に人権問題がないことを証明できない場合には、あなたの商品が輸出ができなくなってしまうのです。

一方で幸いと言うべきか、日本国内ではそのような法律を作ろうという議論すらありませんので、まだ当分は「大丈夫」なように思えます。しかしこの状況に甘んじていると、いざ輸出しようと思ったときに出来なかったり、将来的に日本でも同様の規制が作られるようになったときに苦労をすることになるでしょう。さらに怖いのは、日本では規制がなくても、欧州などの規制が日本の国内市場へ影響を与える可能性もあるのです。

どういうことかと言うと、国際的に事業活動を行っている企業は、一般に世界的に同一の基準で事業を行っています。国ごとに基準を変えたのではオペレーション上で不都合が起きやすいですし、そもそもそうでないとダブルスタンダードだとの謗(そし)りを受けるからです。ですので欧州に本社があったり、欧州でも事業を行っているホテルやレストランのグローバルチェーンであれば、欧州など、世界中で一番厳しい国や地域の基準に合わせた世界統一基準を持っています。

つまり、そうしたホテルやレストラン、スーパーなどのチェーンに納品する際には、日本国内であっても実質的には欧州の基準に従うことが求められ、それに従わなければ取引ができなくなってしまうのです。

若者から広がるサステナビリティへの関心



それだけではありません。最近ではZ世代の若者を中心に、サステナビリティに関心が高い消費者も増えています。そういう消費者の間では、商品を購入する際には、原材料を含めてサステナブルと言えるかどうかを確認するということも始まっているのです。

日本国内ではそのような消費者はまだ少数派ですが、今後はグローバル企業が自分たちの取り組みを強くアピールすることも起きるでしょう。そうなれば、今までそうした課題を知らなかった日本の消費者たちもそれに気づいて、行動を変えるようになるかもしれません。

たとえばベジタリアンは、少し前までは宗教や健康上の理由で菜食主義であるという方が多かったのですが、最近では気候変動など環境面への影響を考えて転向したという方も少なくありません。こうした方々は自らの信条として購入するものを厳密に選択していますので、環境に配慮していない、あるいはそれが明示されていない商品は選択しないでしょう。

さらには、環境や人権、そして動物福祉などに問題がある商品に対してボイコットやネガティブキャンペーンを呼びかけるNGOや活動家もいます。こうした動向は今後ますます強まると考えられますので、たとえ法的な規制はなかったとしても、早めに準備を始めるに越したことはありません。

無視できない気候変動や食資源の問題



これとは別に、私たちが適切な配慮を行わないために原材料の価格が高騰したり、入手できなくなるという問題もあります。たとえば魚の価格が近年急速に上昇してることは、誰しもお気づきでしょう。これは気候変動の進行や水産資源管理がうまく行われていないことが原因であると考えられます。したがって一事業者が対応してすぐに解決できる種類の問題ではないのですが、皆が解決に向けて協働しなくては、状況はより悪化してしまいます。

たとえばMSCやASCなどの水産認証を得た持続可能な水産物を購入する事業者が増えれば、それは漁業者にとって、適切な資源管理を行おうというインセンティブになります。結果が出るまでには少し時間がかかるでしょうが、水産物の資源管理が適正になれば、再び資源量が復活し、価格が元に戻ることも期待できるでしょう。ですので、皆さんの行動は長期的には問題解決につながるのです。

もちろんサステナビリティに関する様々な取り組みをきちんとしていることは、そうした課題に関心が高い消費者、取引先、あるいは金融機関(銀行・取引先)に対して、自社の先進性のアピールにもなります。近年SDGsへの取り組みを言及する事業者が増えているのと同じ理由です。

こうしたことを考えれば、サステナビリティはけして将来や外国だけの課題ではなく、日本国内の市場でも現実の課題になっていることがわかるでしょう。

次回の記事を読む:環境を考えてベジタリアン!?【食品企業のためのサステナブル経営(第6回)】

執筆者プロフ
足立直樹

サステナブル経営アドバイザー。株式会社レスポンスアビリティ代表取締役。東京大学理学部卒業、同大学院修了、博士(理学)。植物生態学の研究者としてマレーシアの熱帯林で研究をし、帰国後、国立環境研究所を辞して独立。その後は、企業と生物多様性およびサステナブル調達の日本の第一人者として、日本の食品会社、飲料会社、流通会社、総合商社等の調達を持続可能にするプロジェクトに数多く参画されています。2018年に拠点を東京から京都に移し、地域企業の価値創造や海外発信の支援にも力を入れていて、環境省を筆頭に、農水省、消費者庁等の委員を数多く歴任されています。

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対岸の火事ではない水不足【食品企業のためのサステナブル経営(第24回)】

前回の記事を読む:2025年は行動の年に【食品企業のためのサステナブル経営(第23回)】今年はお正月早々、アメリカ・カリフォルニア州ロサンゼルス近郊で大規模な山火事が発生、住宅街にも被害が及び、セレブを含めて多くの住民が避難するというニュースが報じられました。少なくとも25人が死亡し、数千棟の建物が被害を受け、被害総額は1350億ドル(約21兆円)を超えるとの報道(※)もあります。その原因として、今年は降水量が例年の半分程度と少なく、空気が極端に乾燥していることが指摘されています。※朝日新聞 2025年1月10日カリフォルニア州での大規模山火事とその影響カリフォルニア州では近年、山火事の頻度と規模が増えています。例えば2017年と2020年にはナパバレーやソノマバレーなどのワイン産地が影響を受け、多くのワイナリーが被害を受けました。こうした山火事の頻発と規模の拡大にともない、最近では火災保険料が高騰したり、そもそも保険を引き受けてもらえないという事態まで発生しているようです。日本でも2021年に北海道で大規模な干ばつが発生し、玉ねぎやジャガイモの生産量が減少するなどの影響がありましたが、むしろ集中豪雨の増加による洪水等の被害の方が目立っているかもしれません。いずれにしろ、極端な気象現象が起きやすくなっており、農業被害も水害も増加しています。カリフォルニアの山火事はけっして「対岸の火事」ではありません。この連載でこれまでに取り上げてきたカカオやオレンジジュースの価格高騰、さらには「2050年問題」として知られるコーヒー生産地の減少などの問題の背後にも、降水量の低下や降水パターンの変化が大きく関与しているのです。気候危機を通じて水リスクが増大していると言えるでしょう。そもそも世界の食料システムは、淡水資源をもっとも消費する産業なのです。特に農業は世界の淡水資源の7割を使用しているとも言われます。ただし、この中には食品以外の綿花のような作物ものも含まれますので、食品だけに限定するともうちょっと少なくなるでしょう。それでも、農業以外にも加工や調理のプロセスでも大量の水を使いますので、食料システムが莫大な水を使っていることには間違いありません。深刻化する水リスク恐ろしいことに、こうした状況が続けば、今後10年以内に世界の淡水需要が供給を40%上回ると予測されています。これは2024年10月に水の経済学に関するグローバル・コミッション(The Global Commission on the Economics of Water)という専門家グループが出した報告書「水の経済学」の中で指摘されています。同書によれば、既に世界人口の約半数が水不足に直面しており、抜本的な対策を講じなければ、今後25年以内に世界の食料生産の半分以上が危機に瀕するといいます。過去数十年間の不適切な土地利用や水管理の失敗により、世界の水循環のバランスが崩壊しつつあるというのです。さらにその後、2024年12月にリヤドで開催された国連砂漠化対処条約(UNCCD)の第16回締約国会議(COP16)でも同様の報告がなされています。すなわち、過去30年で地球の陸地の4分の3以上が乾燥化しており、今世紀末までに世界人口の最大50億人が乾燥地帯に居住することになる可能性が高いというのです。やはり農業の仕方や、無闇に農地を増やすことが大きな原因と指摘されています。日本では今までのところこれほどの大規模な水不足は発生していませんので実感はしにくいところですが、これから降水パターンがどう変化するかは予測が難しく、降水量の減少による水不足のリスクも考慮する必要があります。実際、積雪量の減少により春の融雪水が減り、農業用水が不足する事例が報告されています。さらに、日本の食料自給率は極端に低く、私たちが利用する食材の多くは海外から輸入していますので、実は私たちはその生産地の水に依存しており、私たちの食料供給は、原料生産地の水リスクに大きく影響されるということなのです。食品会社としての打ち手こうした状況に対処するためには、農業の手法を改善し、水資源の持続可能な利用を推進することがもっとも重要です。具体的には、原料の生産地における水リスクを評価し、リスクが存在する場合はその管理・改善策を講じる必要があります。リスクの少ない生産地を選んだり、生産地を分散化することもリスク管理になります。もっとも良いのは、生産地と協力して問題解決に取り組むことです。調達規模の問題などでそこまではできないという場合でも、自社工場の製造プロセスにおいて、節水や水の再利用を積極的に進めることは可能でしょう。製造工程では上水を使用する場合が多いと思いますが、可能な範囲で雨水の利用や循環利用を検討することも有効です。さらに、自社の排水はもちろん、周辺の工事や農業活動による地下水脈の破壊や汚染を防止するための配慮も必要です。私が住む京都はもともと良い地下水に恵まれているとされ、そのおかげで日本料理や酒造りが発達し、豆腐もおいしいと言われます。しかし近年では上流の農地などの影響による水質悪化が起きていますし、さらには北陸新幹線の延伸に伴う地下水脈への悪影響が大きな社会問題となっています。最近のおもしろい事例としては、日清食品の関西工場で、水処理にAIを導入して水使用量を削減している例があります。これまでは水処理装置の洗浄回数や洗浄時間は人間が決めていたのですが、AIで判定するようにしたことで、水使用量を必要最低限に抑えられるようになったそうです。水道料金だけでなく、電気料金も抑制できて、メリットは大きそうです。日本では古くは「水と安全はタダ」と言われてきましたが、安全がもはやタダとは言えなくなったように、水も無制限に安く利用できる資源ではなくなりつつあります。しかし、水は利用方法を工夫することで、問題の深刻化を防ぐことは可能です。自社の工場が水不足の直接的な影響を受けないよう、あるいは問題源とならないように、今のうちから対策を考えることがサステナブル経営のためには必要です。

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2025年は行動の年に【食品企業のためのサステナブル経営(第23回)】

前回の記事を読む:食料自給率は企業の力で上げられる【食品企業のためのサステナブル経営(第22回)】あけましておめでとうございます。新年を迎え、今回は2025年最初の記事ですので、食品企業が持続可能な未来を築くために何をすべきかを考えてみたいと思います。気候変動がもたらす現実昨年2024年は、観測記録上最も暑い年だったようです。今月末ぐらいには正式な発表があると思いますが、産業革命前と比べて世界の平均気温が1.5℃を超えた可能性が非常に高いとされています。しかしこれは、私たちがパリ協定の目標を守れなかったということではありませんし(難しくなりつつあるのは事実ですが)、ましてや、世界が直ちに終わってしまうわけでもありません。けれども昨年は、日本国内でも台風や豪雨といった気象災害が多発し、農作物の収穫や価格にも大きな影響を与えました。コーヒーやオレンジといった多くの輸入農産物の価格が高騰し、皆様もその影響を実感されたことでしょう。さらに重要なのは、これが一時的な現象ではなく、今後も続くと予測されている点です。もはや気候変動は単なる「環境問題」ではなく、企業活動の基盤そのものを揺るがす経営課題です。このような状況において、気候変動への対策を怠ることは、企業の持続可能性を危うくします。サステナブルな経営、すなわち自社を存続させる経営のためには、こうした課題に積極的に取り組んでいく必要があります。世界的な動きと食品業界の役割昨年11月にアゼルバイジャンで開催された国連気候変動枠組条約のCOP29(第29回締約国会議)では、気候変動と農業・フードシステムの関係性が大きく取り上げられました。FAO(国連食糧農業機関)は、農業・フードシステムが気候変動の大きな原因の一つであると同時に、その影響を最も受けやすい分野であると指摘しています。たとえ世界が今すぐにすべての化石燃料の使用を完全に停止したとしても、農業や畜産業からの温室効果ガス(GHG)の排出を大幅に削減しない限り、気温上昇を1.5℃以内に抑えることは難しいのです。多くの国がこの現実を受け止め、NDC(各国が決定する気候変動への貢献)において農業・フードシステムの改革を重要課題に位置付けています。しかし、日本国内ではまだこうした認識が一般に十分に浸透しているとは言えません。もちろん食品業界もその例外ではありません。いえむしろ、取り組みも認識も遅れている業界と言ってもいいぐらいです。具体的なアクションは?では食品会社は、どのような行動を取ったらいいのでしょうか。まずは自社での再生可能エネルギーの利用や省エネの推進が挙げられますが、重要なのはサプライチェーン全体での脱炭素化です。特に原料生産者との協力が鍵となります。これに加え業界特有の課題として、食品ロスや廃棄物を減らす取り組みも不可欠です。どうしても発生する廃棄食品は、それを堆肥化やバイオエネルギー化することでリサイクルを促進することが求められます。また、環境に配慮した食材や食事を選んでもらえるよう、消費者に向けた啓発活動やキャンペーンを行うことも重要です。未来の消費者である子どもたちへの教育も欠かせません。お客様からのニーズがないではなく、お客様がそれを求めるように変えていく必要があるのです。さらに、地産地消を推進することで、輸送に伴う環境負荷を軽減し、同時に地域の農家との連携を深めていくことが期待されます。近隣の農家や地域の農産物を優先的に調達することは、持続可能なサプライチェーンの構築にもつながり、経営の安定化にもつながるでしょう。行動の年に以上は決して特別なことではなく、これまでに何度も議論されてきた内容です。この連載をお読みいただいている皆様にとってはもう馴染みのある話ばかりかもしれません。しかし、重要なのは、これらをどこまで実行できているかという点です。私たちが行動を怠れば、原材料の調達がますます困難になり、気象災害による工場や店舗への影響も増加し、最終的には経営そのものが揺らぐことになります。地球規模の大きな問題だから自分たちだけでは何もできない、ではなくて、対応の仕方はいくらでもあるし、対応したところだけが生き残れるのです。もちろんそんなことはもう何度も聞いてきたと思います。ですから2025年は、こうした課題に対して実際に行動を起こす年にしていきましょう。巳年は脱皮する蛇のように、新たな成長と変化のチャンスの年だそうです。これまでのやり方から脱皮し、新たな未来を切り開く一歩を踏み出しましょう。この一年が皆様にとって素晴らしい一年となることを心よりお祈り申し上げます。次回の記事を読む:対岸の火事ではない水不足【食品企業のためのサステナブル経営(第24回)】

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食料自給率は企業の力で上げられる【食品企業のためのサステナブル経営(第22回)】

前回の記事を読む:食料自給率の意味を考える【食品企業のためのサステナブル経営(第21回)】前回は、日本の食料自給率は38%と先進国の中でも際立って低いこと、そして、実はこれが戦後に「作られた」低さであり、それが食品会社の事業を不安定にしている現実をお話ししました。今回はその続編として、一企業が自給率を上げることができるのか?についてお話ししたいと思います。本当はもっと低い、日本の食料自給率現在の日本の自給率の38%という値ですが、実はこの値すらかなりの過大評価であり、本当の自給率はもっと低いという指摘もあります。なぜなら通常農業を行うためには肥料が必要ですが、日本は化学肥料の原料をほぼ100%輸入しているからです。新型コロナやロシアのウクライナ侵攻で、2022年には肥料価格が一年間でなんと2倍近くに跳ね上がりましたが、このことは消費者以上に日本の農家を傷つけました。さらには、リン酸アンモニウムは90%を、尿素も37%を中国から輸入しており、今後の大きなリスク要因として気になるところです。万一こうした輸入肥料が使えなくなったとしたら、現在の農法では、国内生産量は半減してしまうと予測されます。さらに自給率が比較的高い野菜においても、種子の9割は海外から輸入しています。もちろん国内の種苗会社もあるのですが、採種の畑はほとんど海外にあるのです。東京大学大学院農学生命科学研究科の鈴木宣弘教授は、こうした現状を踏まえると、日本の本当の自給率は10%にも満たないと試算しています。「国産」はリスク回避のための選択肢いや、まぁそれはたしかに重要な話だけれど、うちの会社一社でどうにかできる問題ではない。国が政策として取り組むべき課題だろう、そういう声が聞こえてきそうです。たしかに国に一番頑張っていただきたいところなのですが、これは食品会社にとっての死活問題でもあるのです。そのリスク対策として個社でも対策をすべきですし、できることもあります。それは第一に、なるべく国産の原材料を使うことです。近隣で生産された原材料を使うのが一番ですが、すべてのものが近隣で賄えるわけではないでしょうから、その場合にはまずは国産で良いでしょう。これは国際紛争などのリスクや円安の影響を回避するだけでなく、国内生産者を支援し、そうした問題を将来的に発生しにくくするという効果があります。また輸送距離が短くなるので、いわゆるフードマイレージも小さくなり、温室効果ガスの発生のほか、輸送にまつわる環境負荷を減らすことができます。使用する原材料の種類によってはどうしても国産では無理、海外からの原材料を使わざるを得ないというケースもあるでしょう。そんな場合でも、それがどこから来ているのかを確認し、調達地を分散させることはリスク回避になりますし、できれば調達地と直接つながっておくとさらに安心です。どこ産でも構わないからとにかく一番安い原料を使うというやり方では、何か起きたときに対応ができなくなってしまいますし、そうした考え方は次第に消費者からも支持されなくなりつつあります。付加価値を作ることが経営の本質しかし、近場や国産の原材料にこだわると、原材料コストがかさんでしまう。そんなことは無理だ、という意見の方もいらっしゃるでしょう。たしかにそういう点は否定できません。ただし、今後、輸入原材料の価格が高騰した場合には、国産原材料の方が価格が安くなったり、少なくとも価格差が小さくなっていくことは十分に考えられます。そして何より、コストや価格のみを競争優位性とすることのリスクを理解して欲しいと思います。国産の原材料を使って若干コストが高くなったとしても、それを上回る付加価値を作ればいいのです。もっと言えば、そうした付加価値を作ることがサステナブル経営、いえあらゆる経営の本質なのです。価格で競争するのは、けっして持続可能ではありません。自給率向上のための政策提言の意義もちろんそのようなやり方がすべての商品にいきなり適用できるわけではないかもしれません。また、やはり一社でできることには限界はあるでしょう。ですから、次のステップは、そうした国産原材料を使うことを重視する食品メーカーが集まり、自給率を高めようという世論を喚起し、自治体や国に支援策を求めることです。ちなみにアメリカを含めて多くの国では生産者に莫大な補助金を支払い、そのことで高い自給率を維持しています。こうした政策提言は特定企業の利益のためではなく、地域や日本という国全体の安全と持続可能性のために役立つことですので、多くの消費者や関係者から支持されるでしょう。そして、そのような声を上げた企業は、消費者を含めて国全体のことを考える企業として、評判を高めることができます。つまり、これはブランディングにもつながるのです。このように問題の本質を捉え、それを解決することを自ら実践し、またその意義を広くアピールすることは、サステナブル経営の本道と言えるでしょう。ピンチは次のチャンスのきっかけでもあるのです。次回の記事を読む:2025年は行動の年に【食品企業のためのサステナブル経営(第23回)】

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食料自給率の意味を考える【食品企業のためのサステナブル経営(第21回)】

前回の記事を読む:崖っぷちの水産業と食品業【食品企業のためのサステナブル経営(第20回)】前回は水産業に関わる方が高齢化で減少しているため、日本の水産業は危機的だという話をしました。しかしこれは水産業に限った話ではありません。農業も同様です。しかも、農業に関してはもともと食料自給率が非常に低いという問題があります。日本の食料自給率は38%前後で先進国の中でも最も低いのです。先進国の中できわめて低い、日本の食料自給率引用:農林水産省「世界の食料自給率」自給率は低くても、食材は海外から輸入した方が安いのだからそれで問題ないじゃないか。コストを抑えるのが一番のポイントだ。そう考える方も多いと思うのですが、そんなやり方がいつまで続けられるのでしょうか。最近の輸入食品原料価格の高騰を見て、不安に感じ始められた方も多いはずです。そうは言っても日本は国土が狭いし、賃金は高いし、食料自給率を高くすることは無理だ、そう考える方も多いでしょう。しかし、それは必ずしも正しくないのです。なぜなら日本の自給率は、他の先進国と比べてもきわめて低いからです。先進国の中でもカナダ、オーストラリア、アメリカ、フランスは、自給率が100%を超えています。土地が広く、人口密度も低い国なので、当然と思われるかもしれません。けれども日本と似たような条件であるはずのドイツ、イギリス、イタリアでも、自給率は60〜80%台です。自給率が、面積や賃金だけで決まってしまうわけではなさそうです。人口減でも下がり続ける食料自給率、なぜ?そういう日本も、1960年頃の自給率は80%近くありました。人口は今の3/4でしたが、国土面積はもちろん同じです。その頃とまったく同じというわけにはいかなくとも、今よりずっと高い自給率は可能なはずです。けれども、日本の自給率は一貫して下がり続けているのです。なぜなのでしょうか?日本の自給率がわずか60年の間に半分以下に減ってしまった理由は複合的なものです。まず一つには、食事の内容が洋風化したことがあげられます。伝統的な和食から、肉や乳製品、油脂を多用した食事に変化したため、国内だけでは賄うのが難しくなってしまったのです。ただし、これには新たなマーケットを作るために食生活を変化させたという面もあったはずですし、そのことで潤った企業もあるでしょう。そして一番大きな原因は、農業から製造業へと経済構造を政策的に変化させたことでしょう。製造業で外貨を稼ぎ、食料はそのお金で買った方が「効率が良い」と国が考え、そのために様々な政策が取られたのです。実際、日本の製造業が大きな成功を収めていた時代、すなわち1980年代ぐらいは、この戦略は大変うまく機能していました。しかし1990年代のバブル崩壊以降、日本経済が停滞すると、その後はデフレの嵐だったのは皆さんよくご存じの通りです。それでも当初はまだ海外、特に途上地域に生産をシフトすることでコストを下げる余地があったので、デフレ競争を続けることができました。しかし、その間に日本の生産者はますます苦境に立たされます。そして最近では海外で生産してもこれ以上のコスト削減は難しくなり、また気候変動や国際紛争などにより、輸入食材の価格が急上昇、ついに国内でも食品価格の値上げラッシュとなったというわけです。輸入頼みのリスクを、無視できない時代にこのように経済的な要因から、もっと言えば、どうすればコストを下げられるのか、儲かるのかという経済的な理由で日本の食のシステムは大きく変化させられ、特に国内の原材料生産の現場は傷つけられて来たのです。しかし、今や「海外から安い食品を買ってくれば良い」という考え方の前提条件は完全に崩れてしまっています。さらに最近の世界情勢を見ると、政情不安は簡単に解消しそうにはありませんし、気候危機の緩和は十分には進まず、影響は大きくなるばかりです。つまり、もしお金が十分にあったとしても、海外からの輸入に大きく頼る構造ではリスクが高いことがはっきりしてきました。そう考えると、日本も本気で自給率を高めることを考えるべき時代になっていると私は考えますが、いかがでしょうか。皆さん方の会社がいくらおいしくて魅力的な商品を作る能力をお持ちだとしても、原材料が入手できなくなったり、原材料価格が高騰してしまったら、商売は続かないからです。何がなんでも自給率100%を目指す必要はないかもしれませんが、まずはイギリスやイタリアと同じ60%ぐらいを目指すのが現実的なのではないでしょうか。平時からこの程度の自給率を維持できていれば、いざという時にもギリギリなんとかできる可能性があるからです。ではどうしたらいいのか? 一企業が自給率を上げることができるのか? については、次回詳しくお話いたします。今回は、この自給率の低さが食品会社の事業を今や不安定にしているのだ、ということをまずご理解いただければと思います。次回の記事を読む:食料自給率は企業の力で上げられる【食品企業のためのサステナブル経営(第22回)】

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崖っぷちの水産業と食品業【食品企業のためのサステナブル経営(第20回)】

前回の記事を読む:経済的にもサステナブルにするには【食品企業のためのサステナブル経営(第19回)】少し前になりますが、8月30日に農林水産省が「2023年漁業センサス」の結果を発表しました。センサスとは一般には国勢調査のことですが、漁業センサスは、漁業者(漁業経営体等)の数を全国一斉に調べるものです。1949年(昭和24年)から5年おきに実施されており、今回で15回目となります。今回の結果によると、日本の漁業経営体数は6万5,652経営体で、5年前に比べて17.0%の減少、10年前に比べるとなんと30.5%も減少しています。海面養殖の経営体数は12.8%の減少ですが、沿岸漁業では18.1%減とより減少が顕著でした。想像を超える速さで進む、水産業の衰退実は私は、近年の水産資源の減少により沿岸漁業は減少しても、これを補うために海面養殖はむしろ増加しているのではないかと思っていました。しかし、現実は私の予想とは異なり、海面養殖においても大きな減少が見られたのです。そしてさらに驚いたのは、トラフグやクルマエビ、ノリ、真珠といった価格が高く、需要も旺盛であろうものの養殖の経営体数は減少していることです。こうした付加価値の高い水産物でさえ、事業の存続が厳しい状況に直面しているということであり、日本の水産業全体の衰退を示唆するものです。もう少し詳しく、経営組織別で見てみると、個人経営体で17.0%減、共同経営は21.2%減、漁業協同組合が5.5%減となっています。一方で、企業経営による漁業事業体は、5年前の2,548社から2,646社へと3.8%ですが増加しています。最近の漁業法改正により、企業による漁業への参入が促進されたものと思われます。それでも、個人経営体などの減少を補い水産業の縮小を食い止めるにはまだ不十分です。水産業にも押し寄せる高齢化の波個人経営体が急速に減少している理由はいくつか考えられますが、やはり大きな要因は漁業関係者の高齢化でしょう。今回のセンサスによれば、実際に過去1年の間に漁業を行った方(漁業従事世帯員・役員)の総数は102,190人で、5年前に比べて32,276人、つまり24%も減少しています。そして漁業従事世帯員のうち過半数の50.7%の方が65歳以上なのです。少し定義が異なるのですが、漁業就業者数で見てみると、現在の人数は121,239人で、5年前に比べて20.1%の減少です。こちらについては年齢階層別の数も示されているのですが、全年齢階層において減少しているものの、もっとも大きく減少したのは65〜69歳の階層、それ以外でも50歳以上の減少が目立ちます。そもそも漁業従事者の過半数は既に高齢者であり、若年層の参入が極めて少ないのですから、今後、漁業従事者がさらに減少してしまうことは明らかです。こうして数字で見ると、あらためて日本の水産業が置かれた危機的な状況が浮かび上がってきます。漁業従事者の減少は、そもそも水産業全体が停滞、あるいは縮小しているから故でしょう。その背景には水産資源量の減少(十分に獲れない)、消費者の魚離れ(売れない)が重なり、漁業経営が難しくなっているという現実があります。少子高齢化の日本において、そういう事業をわざわざ継承したり参入しようという方は多くはないでしょう。新規参入者がいないのですから、あとは時間の問題です。そしてこのことがさらに水産業を停滞、縮小させてしまうでしょう。安定的な食料システムへ、漁業センサスが示すことさて、今回長々と漁業センサスの話をしたのは、単に日本の水産業の窮状をお伝えしたいからではありません。もちろんかつて「水産王国」と呼ばれた日本の水産業が、わずか40年でここまで崖っぷちに追い込まれているのはショッキングで由々しきことですが、これは水産業に限ったことではないのです。農業でもやはり同様のことが起きています。5年後さらには10年後、今の水産業や農業を辛うじて支えている方々が仕事を続けられなくなったとき、私たちの食を一体誰が、どう支えるのかという問題を考えなくてはなりません。その時は海外から輸入すれば良いではないかという意見もありますが、そんなに簡単な話ではないことは、これまでの連載をお読みくださっている方ならもうお分かりでしょう。今後さまざまなリスク要因が増えたり、大きくなる中、安定的に原料を調達し、商品を作るためには、もっと安定的な食料システムを目指す必要があります。そもそも食は、単に原料を買ってきて作ればいいと言うものではありません。原料を調達することは、原料を提供してくださる方々の生活を私たちが経済的に支えているということです。また私たちが作った商品を消費者の方々が買ってくださるので、私たちのビジネスも支えられているのです。この支え合いの構造をいかに強くしていくか、いかに持続可能なものにしていくかということこそ、サステナブル経営の真髄と言っていいでしょう。未来を見通して、足元の生産地を支えるこれまで私たちは利便性や経済性にばかり目が行きがちでした。安い原料、目新しい原料を探すことに注力し過ぎたが故に、私たちは足元の生産地を支えることを忘れてしまい、今その生産現場が崩れ落ちようとしているのです。前回も述べましたが、安さを追求し続けることは、結局は経営のサステナビリティを危うくしますし、社会の成長の機会と安定性を損ないかねません。おいしさ、安さ、安全性、健康… 消費者の方々にこうした志向をあるのはたしかですが、だからと言って単にそれに対応しているだけではサステナブルにはなりません。現にこのままでは、水産業の現場は、次の漁業センサスのときには今以上に深刻な状況になっているでしょう。その未来は既にほぼ見えており、それを予見して手を打つのがサステナブルな経営です。これは水産業だけの問題ではないのです。次回の記事を読む:食料自給率の意味を考える【食品企業のためのサステナブル経営(第21回)】

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サステナブル

経済的にもサステナブルにするには【食品企業のためのサステナブル経営(第19回)】

前回の記事を読む:食品もエシカルが求められる時代へ【食品企業のためのサステナブル経営(第18回)】1ドル160円を超える超円安が一服し、海外からの輸入原料の価格も若干落ち着いてホッとしている方も多いかもしれません。しかし、それでも依然としてかなりの円安ですし、今後、再びより円安に進む可能性もあり、予断を許さない状況です。もちろん円安だけでなく、原材料そのものの価格や食品価格が世界的に高騰していることも忘れてはなりません。本連載の第16回ではカカオ豆の暴騰の問題を取り上げましたが、その傾向は今も続いています。こうした問題に対しては、やはり根本的な解決、すなわち農場のさまざまな問題に対応し、安定的な生産ができるよう農家を支援していくしかないでしょう。市場から買い付けているだけでは、今後もこうした価格の乱高下に右往左往することになります。最近ではオレンジジュースの原料が高騰しています。それどころか、入手すらできなくなったメーカーは販売を中止しています。これまでには有り得なかった事態です。根本的な解決のためには、カカオの場合と同様で、農家を支援するなどの対策が必要です。まさにサステナビリティの課題そのものですが、今回はその経済的な側面について考えたいと思います。下がり続けてきた食品価格、悪循環は業界全体に日本では20年以上にわたりデフレ傾向が続き、企業は商品価格を下げることを競い、その結果、消費者は1円でも安い商品を求め、企業はそれに応じてさらに価格を下げざるを得ませんでした。その結果、一体何が起きたのでしょうか?値下げで一時的に売り上げを維持することはできたかもしれませんが、利益率は低下し、従業員の給与を上げることが難しくなったり、サプライヤーに対しても値下げを強く求める企業が増えたのではなかったでしょうか。その結果、働く人々は疲弊し、退職してしまった方もいるでしょう。しかし、低い給料のままでは、新たな人材を確保することも難しかったはずです。少ない人数で同じ仕事を回すことになれば、現場はさらに疲弊します。サプライヤーも同様です。場合によっては、商売から撤退せざるを得なくなったサプライヤーもあったでしょう。困るのは発注側です。こうした悪き値下げの連鎖が調達を不安定にすることはなかったと断言できる企業は、どのぐらいあるでしょうでしょうか? つまり、無理なコスト削減は、様々な環境や労働問題の原因にもなり、業界全体の問題を深刻化させ、経営を持続不可能なものにしてきたのです。もちろん、お手頃な価格は大きな魅力であり、消費者はそれを歓迎するでしょう。企業がそれに応えることも重要ですが、問題はどうやって、どの程度まで行うかです。企業努力によるコスト削減と無理なコストカットは全く異なるものだからです。無駄をなくすことは大切ですし、最初のコストカットには大きな効果があります。しかし、コスト削減を永遠に繰り返すことは不可能です。やがてコスト削減は限界に達しますし、そうしたコスト競争においては、大規模にビジネスを行う大手企業が有利になります。中小企業や零細企業が苦境に立たされるのです。その結果、市場の寡占化が進み、ますます大資本が有利な状況が強化されます。消費者のための「企業努力」が裏目にまた、今のような原材料価格の高騰が発生した場合、十分な利益を確保してこなかった企業は対応が非常に難しくなります。新たな対策を打ち出そうにも、そのための資金が手元にないからです。今後、サプライチェーン最上流の農家を支援することはますます重要になりますが、そのためには十分な体力、つまり利益を上げていることが不可欠なのです。当たり前のことですが、ビジネスを持続するためには、適切な利益を上げ、それを従業員やサプライヤー、そして将来のために投資することが必要です。コストカットだけでは、そのために必要な原資を生み出すことはできないのです。私は、食品企業に限らず、日本の経済力が低下してしまった大きな原因の一つは、過度の価格競争に陥り、コストカットのみに注力したことにあったと考えています。私たちが本来目指すべき経営は、良い品物を作り、その価値に見合った価格で販売し、しっかりと利益を得ることです。それは強欲でもなんでもなく、次の発展に投資するために必要なことなのです。それなしに発展はできません。価格を下げるだけでは一時凌ぎにはなっても、長期的な成功には結びつかないのです。価格を上げると消費者がついてこなくなるという声もあるでしょうが、それもこのデフレが問題なのです。緩やかに価格が上昇する経済では、給与も上がり、消費者の収入も増えますので、価格上昇にも対応できます。ところが日本の場合には、商品価格も、給与も、すべてが下がって余裕がなくなってしまったので、いざ価格が上昇し始めた時にそれに対応することが難しい状態になってしまったのです。消費者のためにと思って行ってきた「企業努力」が、結局は消費者の購買力を成長させず、自分たちの首を絞めることになってしまったというわけです。サステナブル経営のため、知恵と工夫で利益を生むそれでは、一体どうしたら良いのでしょうか? 企業にとって本当に重要なのは、売上高ではなく利益を維持することです。現在のようにインフレ傾向が続く状況では、適正な価格を設定し、適正な利益を確保することがまず重要です。たとえ売り上げは減ったとしても、きちんとした利益を確保することができれば、将来に投資することはできます。投資するだけの利益を得てないとしたら、それは経営の失敗です。この連載の一番の目的は、経営を持続可能にすることです。サステナビリティ課題への配慮は、それが正しいこと、求められていることだからでもあるのですが、それをしないことにはもはや経営は持続できないからです。そしてもう一つ経営を持続可能にするためには、経済的にも持続可能になることを目指さなければなりません。そのためには適正な利益を上げ、それを将来に投資することが必要不可欠なのです。そこまで含めて、サステナブルな経営です。ただし、「コストが上がったから値上げします」と言うのでは芸がありません。もちろん今のように全社が横並びで値上げをするような状況であれば、止むを得ず受け入れられるかもしれませんが、それがいつまでも続くわけではありません。ただ値上げをするのではなく、顧客に対して新たな価値を提供し、その価値に見合った価格を設定することが必要なのです。そのためには、知恵と工夫が必要です。例えば途上国のマーケットでよく行われて来た手法としては、パッケージを小型化・細分化することで、消費者が一度に支払う金額を減らし、購入しやすくするというやり方です。単位量あたりの価格は上がってしまうのですが、支払額が少なくなるため、消費者からは喜ばれ、無駄や廃棄物の削減にもつながります。もちろん企業にとっては、利益率が増えるので、購買力がまだ弱いマーケットでもビジネスが成り立つのです。ただし、パッケージを小型化することで廃棄物が増えてしまう可能性もあるため、その点には注意が必要です。これに対応して、最近では量り売りを復活させるというアイデアを実行する小売店も登場し、注目されています。これまでの常識に囚われず、新しい価値創造を考え、実行することが必要です。コストカットだけを続けるのは悪手であり、持続可能ではありません。経営が目指すべきは、より高い価値を提供し、その対価としてより高い利益を得ることです。またそうした価値創造が可能な環境を整えていくことです。サステナビリティ経営とは、そのための経営であり、それを成功させるためには常に未来を見据え、また現在起きている変化を常に注意深く観察することが必要なのです。次回の記事を読む:崖っぷちの水産業と食品業【食品企業のためのサステナブル経営(第20回)】