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昨今のコオロギ食論争を巡って(1)【昆虫食普及ネットワーク|ニュースレターから】

昨今のコオロギ食論争を巡って(1)【昆虫食普及ネットワーク|ニュースレターから】

1.コオロギは食べても安全なのでしょうか

欧州食品安全機関(EFSA)は2022 年、コオロギはアレルギー反応を誘発する可能性以外、ヒトの消費に対して安全であると結論づけています。それを受けて欧州委員会は、ミールワーム、バッタに続きコオロギを3番目の「新規食品(Novel Food)」として正式に承認しました。甲殻類アレルギーを引き起こすアレルゲンのトロポミオシンというタンパク質を持っています。

エビやカニでアレルギーを発症する人はコオロギなどの昆虫類は食べないほうがいいでしょう。

ボツリヌス菌や寄生虫はコオロギに限らず他の食品にも含まれています。しっかり加熱すれば安全に食べることができます。コオロギは日本でもかつては食べられていましたし、タイやラオスではいまでも日常食べられている普通の食材です。体に害があれば食べられていないはずです。
コオロギに含まれるキチンに発がん性があるという意見には根拠がありません。キチンはエビやカニ等にも多く含まれており、これらが発がん性の高い食品であり危険だとは認識されていません。コオロギが酸化グラフェンを大量に含んでいるという報告はありませんし、酸化グラフェンには自己複製機能はなく少量を吸い込んだ場合でも数週間で代謝して排出されます。

『医学大辞典』に「コオロギは微毒であり、とくに妊婦には禁忌」との記述がありますが、元となった明の時代に書かれた「本草項目」ではそうした記述はありません。最新の研究「コオロギの経口毒性の研究と皮膚感作試験」でも毒性がないことが立証されています。プリン体は鶏レバーとほぼ同程度なので、一般的には多い部類に入ると言って良いと思われます。大量に食べれば痛風等につながるかもしれません。ただコオロギをステーキのようにして大量に食べることはないのでは?また市販の食品に香料、添加物として入っている場合でも、成分表示が義務づけられているので、知らずにコオロギを食べてしまうことはありません。

2.コオロギを食べる時代になるのでしょうか

徳島の高校の「給食」ですが、これは食物科の生徒からの提案がきっかけと聞いています。コオロギの粉末が入っていることや、甲殻類アレルギーの有無を確認したうえで、食べたい生徒が試食したもので、全員一律に食べさせたものではありません。

現在の世界人口80憶人が2050 年には 90憶人と予測されています。人口が増えている東南アジア、アフリカ、南アメリカを中心に約2000種の昆虫が食べられています。国連食糧農業機関(FAO)は東南アジアやアフリカなど人口が増えて食料が不足する地域で昆虫を養殖してもっと食べたらどうかと提案しています。

昆虫食だけで食料危機を救うことは無理です。食品ロス522万トン(令和 2 年度推計)の利用促進が急務です。食品残渣、規格外野菜(形がふぞろい、キズがある等)、未利用魚(市場に出回らない)など、食べられるのに捨てられている有機物がたくさんあります。

おからや牛乳の廃棄は重大な問題で対処しなければなりません。ただほかに対処しなければならない問題があるからといって、昆虫食に関心を持ってはいけないという理由にはならないと思います。

(内山昭一/NPO法人昆虫食普及ネットワーク理事長)

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