
食品業界の開発環境をもっと自由に—シェアシマが目指す未来【社長コラム#4】
前職での苦労―理想の原料探しに一年以上
私がまだ前職で新商品開発に携わっていた頃、どうしても欲しい原料を探すのに一年以上もの時間を費やしたことがあります。新しい食感と風味を両立させるため、サンプルを取り寄せては試験を繰り返し、別のサプライヤーを探すという日々。しかし、そう簡単には見つかりませんでした。ひとたび「これだ!」という原料が見つかったと思えば、今度は大量生産ラインの調整で問題が起き、また振り出しに戻ってしまう……。
その間にかかったリソースは膨大で、開発担当者の立場からは「どうしてこんなに大変なのか」「もっと効率よく見つける方法はないのか」と頭を抱えずにはいられませんでした。
原料探しが抱える構造的な課題
食品業界では、商品コンセプトやターゲットに合わせて原料を厳選するのは当たり前です。味や香り、栄養価だけでなく、コストや安定供給、法規制への対応など、考慮すべきことが山ほどあります。さらに、生産地域や配合が違うだけで、仕上がりの風味や食感がまるで異なるため、サンプルの比較には多大な時間と労力がかかるのです。
また、希望する条件を満たす原料が見つかっても、製造ラインに乗せる段階で新たな課題が生じることも珍しくありません。品質管理や衛生面、設備との相性など、開発担当者が頭を悩ませるポイントは尽きないのが実情です。こうした構造的な課題を痛感したことが、私にとって大きな転機となりました。
シェアシマ誕生の背景“埋もれた素材”を見える化したい
開発現場の苦労を何とか軽減できないか―
そんな想いが膨らむ中、「食品業界にはまだ活かされていない原料や副産物が、数多く存在する」という事実に気づきました。例えば、地方でしか流通していない果物や、特定の企業でしか使われていない特殊原料などです。
しかし、こうした“埋もれた素材”は、必要とする企業がその存在を知らなかったり、衛生管理や法規制への対応が煩雑だったりして、適切なマッチングができていないのが現状でした。
そこで思い至ったのが、「業界全体をつなぐプラットフォーム」が必要なのではないか、ということでした。
シェアシマの仕組みと強み
こうして誕生したのが、食品開発をサポートするWebプラットフォーム「シェアシマ」です。
参加企業が扱う未利用原料や規格外素材を一覧で掲載し、必要としている企業が検索・問い合わせできる仕組みを整えました。具体的には、販売したい原料を開発テーマや特徴で検索できたり、商品の背景を記事で閲覧し、興味のある企業にアプローチすることが可能です。また、実際の原料が検索画面で一目でわかるように改良を重ねています。
さらに、法規制や品質基準、衛生面の課題をクリアするため、専門家との連携や運営スタッフによるサポート体制も整備。開発担当者が必要な時に販売者とスムーズにコミュニケーションを取り、新商品開発を進められるような仕組みも構築しました。
サンプル調達と試作のスピードアップ
シェアシマを活用すれば、欲しい原料の候補をピックアップし、サンプルを取り寄せるプロセスが格段に効率化されます。以前の私のように、1社ずつ手あたり次第に連絡を取り、断られたり手応えのない素材に振り回されたりするリスクが減るのです。
また、大量生産前の小ロット試作に対応できるかどうかも、事前に確認しやすくなり、試行錯誤のスピードがアップします。
副産物や余剰原料の有効活用
出品企業側にもメリットがあります。これまで仲介業者を通じた商談が必要だった取引が、シェアシマに掲載することで、直接企業とマッチングできるようになります。
これにより、新たな収益源や販売先を生み出すことが可能になり、循環型の価値創造に繋がり、サステナブルな食品開発を実現する一助となるのです。
実際の効果―短期間で理想の原料を見つける企業も
シェアシマを活用している企業の中には、わずか数か月で「これだ!」と思える原料に出会い、テスト販売までこぎつけた例もあります。品質やコストの面で条件をクリアしただけでなく、法規制やラベル表示に関しても出品者とのスムーズなコミュニケーションを通じて対応できたそうです。
私が以前、一年以上かけていた原料探しが、わずかな期間で解決するのを見ていると、まさに「これこそがシェアシマを作った意義だ」と実感せずにはいられません。
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今後への期待―開発担当者の苦労を“少しでも”減らす
もちろん、シェアシマを使えば全ての課題が魔法のように解決するわけではありません。開発の現場では、品質テストや大量生産時の歩留まり、表示ラベルの細かい仕様など、乗り越えるべきハードルがまだまだ存在します。
それでも、かつて私が味わった“原料探し地獄”が少しでも解消され、多くの企業がよりスピーディに商品開発を進められるようになれば、食品業界はもっと自由で革新的な製品を生み出せるはずです。シェアシマは、そんな未来を目指して絶えずアップデートを重ねています。
「探す・試す・調整する」を次のステップへ
新商品開発は簡単ではありませんが、だからこそ面白く、大きなやりがいをもたらしてくれます。しかし、私自身の経験を振り返ると、欲しい原料に出会うまでにかけるリソースはあまりに大きく、何度も挫折しかけたのも事実です。
もし同じ苦しみを味わっている方がいれば、ぜひシェアシマを活用してみてください。まだ世の中に十分知られていない原料や副産物、あるいは製造ラインの違いから生まれる新しいアイデアが、あなたの開発現場を後押しするかもしれません。私のように一年もかけず、数か月でベストマッチの素材に出会える可能性があるのです。
食品開発の苦労をほんの少しでも軽くし、新しい時代のイノベーションへと踏み出す。それがシェアシマの存在意義です。そして、それこそが私が前職での経験を活かして実現したかったゴールへの第一歩だと考えています。
小池祥悟プロフィール
食品メーカーに約20年勤務し、商品企画、開発、営業、品質管理、原料調達、新規事業、海外取引に至るまで、食品開発に関わるあらゆる業務を経験。労働生産性の低い食品開発のスキームは、深刻な問題であり、進まない業界の構造変革には、デジタル化、情報のオープン化と一元化が必要であると考え、 ICS-net株式会社(シェアシマ事業運営)を創業。食品開発にフォーカスしたWebプラットフォームの構築に邁進している。
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