
対応を急ぐヨーロッパ:世界の食品ロス対策(1)
世界の食品廃棄量、いわゆる食品ロスは年間約13億トンにも上ります。これは、生産された食料の約3分の1に相当するのだとか。今や世界全体で解決すべき課題となった食品ロス。日本では2019年10月に「食品ロスの削減の推進に関する法律」が制定されましたが、他国ではどのような対策が行われているのでしょうか。2回にわたってご紹介します。まずはヨーロッパの取り組みから。
対策先進国のヨーロッパ諸国
世界でいち早く食品ロス対策に乗り出したのはヨーロッパです。EU(欧州連合)の立法機関である欧州議会が2014年を「ヨーロッパ反食品廃棄物年」とし、期限表示や包装の適正化、フードバンク活動の優遇などを実施しました。さらに、欧州委員会は2025年までに食品ロスの30%削減を提案しています。ヨーロッパ各国でも独自の取り組みを行っていますが、今回はその中からフランスとイタリアの「食品廃棄禁止法」、スペインの「連帯冷蔵庫」を紹介します。
フランス・イタリア:食品廃棄禁止法
フランスでは2016年2月、「食品廃棄禁止法(通称:反フードロス法)」が施行されました。流通業者や小売業者は食品を意図的に廃棄することを禁じられ、違反した場合は罰金を支払わなければなりません。
また、売場面積400平方メートル以上のスーパーマーケットは、慈善団体との食品寄付の契約を締結するよう義務付けられました。実はこれに先立ち、2013年に国の行政機関と事業者間で「2025年までに食品廃棄を50%削減する(2013年比)」といった目標を掲げる協定が策定されていましたが、より規制を強める必要があるとの声が上がり、食品廃棄禁止法の施行に至ったと言われています。
イタリアではフランスと同年に食品廃棄禁止法が成立しましたが、フランスと異なるのは、違反した場合でも特に罰則がないこと。ただし食品寄付をした際には税控除を受けられます。いずれにしても、法制化によって国全体で食品ロス問題と向き合う姿勢が感じられます。
スペイン:連帯冷蔵庫
他方、スペインの食品ロス対策として代表的なのは「連帯冷蔵庫」。2015年5月、バスク州のガスダカオの街中に設置された冷蔵庫のことで、残り物や賞味期限切れなどで今まで廃棄していた食品をシェアし、誰でも自由に持ち帰ることができるというものです。
設置したのはフードバンクを運営する地元のボランティア団体。生活困窮者への食糧支援と廃棄物削減を目的としています。冷蔵庫に入れるものは生ものを除き、何でもOK。自宅で余らせてしまった食品を入れる近隣住民や、店で余った料理を入れるレストランのオーナーなどがいるそうです。冷蔵庫の中身は運営団体が定期的にチェックしていますが、持ち帰りはあくまで自己責任。持ち帰った食品を口にして食中毒になった場合でも、設置者が責任を問われることのない特別な取り決めが設けられています。
このように各国で進んでいる食品ロス対策。日本で取り入れられるもの、できないものとがありますが、他国の取り組みを参考にしながら問題解決に臨みたいものです。
つづきを読む:廃棄予定の食品を販売するスーパー:世界の食品ロス対策(2)

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