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カカオバターの成分や使い方を紹介|チョコレートのテンパリングや色付け、艶出しに

カカオバターの成分や使い方を紹介|チョコレートのテンパリングや色付け、艶出しに

カカオバターとはカカオ豆の皮をむいて砕いた「カカオニブ」に含まれる油脂成分です。カカオニブをすり潰したものが「カカオマス」で、このカカオマスから搾り取った脂肪分を「カカオバター」と呼んでいます。カカオマスとカカオバターはどちらもチョコレートの主原料です。カカオバターは単独でチョコレートの艶出しやテンパリングなどに用いられることもあります。この記事では、カカオバターの特徴や使い方、テンパリングで使う方法などを解説します。

カカオバターとは

まずはカカオバターの特徴を見ていきましょう。

シアバターなどと同じ天然の植物性油脂

カカオバターはカカオ豆に含まれる油脂成分で、ココナッツオイルやシアバターと同じ植物性油脂の一種です。カカオバターの「バター」は植物性油脂のなかでも常温で固形や半固形のものを指しており、一般的なバターやマーガリンとは意味合いが異なります。
カカオバターは、カカオ豆の皮を剝いて砕いた「カカオニブ」に約55%含まれる油脂成分から作られます。カカオニブをすり潰すとペースト状の「カカオマス」になり、このカカオマスから搾り取った脂肪分が「カカオバター」です。カカオマスとカカオバターはどちらもチョコレートの主な原料になります。
なお、カカオバターはココアバターやカカオ脂などとも呼ばれます。

クリーム色をしている

カカオ豆から作られるチョコレートは茶色ですが、同じカカオ豆からとれるカカオバターはクリーム色をしています。カカオバターはホワイトチョコレートの原料としても使われています。

香りと融点が特徴

カカオバターはチョコレートのような香りと、低い融点が特徴です。カカオバターは常温では固体ですが、融点は約34度と低く、人間の体温より少し低い温度で急速に溶け始める性質です。

人間の体温付近で急速に溶ける植物性油脂はカカオバターのほかになく、独特の性質といえます。肌なじみが良いことから、食べるだけでなく化粧品の原料としても注目されています。
なお、チョコレートを冷やすと固形になるのも、常温で固体になるカカオバターの性質によるものです。

カカオバターの使い方



カカオバターはチョコレートの原料としてはもちろん、チョコレートの色付けや艶出し、化粧品の原料などの用途でも使われます。ここではそれぞれの使い方を簡単に解説します。

チョコレートの原料として

チョコレートもカカオバターと同様、カカオ豆から作られています。チョコレートはカカオマスとカカオバターが主原料で、カカオマス・カカオバターの量や、乳成分の有無により、ビターチョコレート、ミルクチョコレート、ホワイトチョコレートなど種類が分けられています。

チョコレートの色付けや艶出し、型離れの改善に

カカオバターにはスプレータイプの製品があり、チョコレートの型にあらかじめスプレーしておくことで型離れを良くする、チョコレートに艶を出すなどの使い方ができます。
その他、カカオバターに食用の色素を混ぜてエアブラシで吹き付ける、刷毛で絵付けするなど色付けにも使えます。

化粧品の原料として

カカオバターの原料になるカカオ豆にはカカオポリフェノールが含まれています。カカオポリフェノールには抗酸化力があり、エイジングケアに有効です。
また、カカオバターの主成分であるオレイン酸やパルチミン酸、ステアリン酸には肌の老化を招く活性酸素の生成を抑える働きがあり、こちらもアンチエイジング効果が期待できるといわれています。

【化粧品の原料としてのカカオバターの美容効果】

・パルチミン酸の美容効果:皮膚の代謝を正常に保つ効果があり、シワの予防に効果的。パルチミン酸は市販の日焼け止めにも使用されている成分のため日焼け対策にも有効とされる
・オレイン酸の美容効果:人間の皮脂に最も多く含まれている成分で、皮脂の蒸発を防ぎ、肌を乾燥から守る保湿効果がある。肌なじみが良く肌に浸透しやすいためべたつかずに保湿してくれる
・その他、カカオバターの美容効果:肌の角質を柔らかくする作用があるため肘や膝、かかとのケアに有効。ビタミンAやビタミンE、ビタミンFが含まれており、美白効果や肌の余分な脂を除去する効果が期待できる

カカオバターをチョコレートのテンパリングで使う方法

チョコレートを作る際にはテンパリングが欠かせません。テンパリングには、チョコレートに含まれるカカオバターの性質を利用する通常の方法だけでなく、粉末状のカカオバターを添加して作業を簡素化する方法があります。ここでは、それぞれの方法を解説します。

テンパリングとは



テンパリングとは、チョコレートを溶かし、温度を上げ下げしてチョコレートを安定した状態に再結晶化させる際の「温度管理」を指す言葉です。
チョコレートにはカカオバターが含まれており、チョコレートに口溶けの良さや艶を与えています。しかしチョコレートをそのまま溶かして固めただけでは一般的な口溶けの良さや艶は得られません。
カカオバターには6種類の結晶型があり、テンパリングにより最も安定しているⅤ型の結晶型にすることで初めて艶のある口溶けの良いチョコレートに仕上がります。

通常のテンパリング

テンパリングには数種類の方法がありますが、そのなかでも一般的な水冷法は以下の通りです。

【テンパリングの手順(水冷法)】

■事前準備

・チョコレートの量が少ないとテンパリングがうまくいかないため、チョコレートは最低でも200g程度用意する
・ボウルやゴムベラなどの道具に付いている水分をしっかり拭き取る
・湯専用のボウルとチョコレート用のボウルは同じサイズ、または湯専用をひと回り小さなサイズにして水分の混入を防ぐ

  1. チョコレートを湯煎し、①の温度まで上昇させる
  2. チョコレートを湯煎から外し、冷水や氷水をあてて②の温度まで下降させる
  3. チョコレートを再度湯煎し、③の温度まで上昇させる
➀の温度 ②の温度 ③の温度
スイートチョコレート 50度~55度 27度~29度 31度~32度
ミルクチョコレート 40度~45度 26度~28度 29度~30度
ホワイトチョコレート 35度~40度 23度~25度 27度~28度

作業が終わったらパレットナイフなどにチョコレートを少し付けてみてしばらく置きましょう。艶が良い状態で固まればテンパリングは成功です。固まりにくい、表面が白っぽいといった場合は失敗なので、もう一度テンパリングの作業を行いましょう。
ただし、チョコレートに水分が入ってしまうとテンパリングをやり直せません。その場合はホットチョコレートとして飲んだり、焼き菓子に使ったりすると良いでしょう。

粉末状のカカオバターを使ったテンパリング

安定した結晶でできている市販の粉末状のカカオバターを使用すると、簡単にテンパリングの作業ができます。また、通常のテンパリングでは難しい少量のチョコレートのテンパリングも可能です。

【粉末状のカカオバターを使ったテンパリングの方法】

  1. チョコレートを湯煎し、温度を40度~45度まで上昇させる
  2. チョコレートを湯煎から外し、そのまま室温で34度まで下降させる
  3. チョコレートの分量に対し適切な量の粉末状カカオバターを加え、よく混ぜる
  4. チョコレートの温度が33度前後になれば完了


カカオバターの成分

カカオバターには脂肪酸が多く含まれます。ここでは、カカオバターに含まれる脂肪酸の特徴を解説します。

飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸をおよそ2:1の割合で含む

カカオバターには飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸がおよそ2:1の割合で含まれています。飽和脂肪酸は摂取しすぎると血液中に悪玉コレステロールが滞り、動脈硬化などの原因になるとされています。しかし、日本人は逆に飽和脂肪酸の摂取量が少なすぎることによる健康リスクが指摘されているくらいなので、あまり心配する必要はないかもしれません。
高カカオポリフェノールを毎日摂取したところ、総コレステロールや悪玉コレステロールへの影響はなく、善玉コレステロールのみが増えたという実験結果があります。摂取量が足りていない傾向にある飽和脂肪酸を取り入れるためにカカオバターを選択するというのも一つの方法かもしれません。

体に悪いとされるトランス脂肪酸の含有量は少ない

カカオバターには不飽和脂肪酸が含まれています。不飽和脂肪酸は多くがシス型の形状ですが、ごく一部がトランス型の、いわゆる「トランス脂肪酸」です。トランス脂肪酸を多く接種すると、血液中の悪玉コレステロールが増加し、善玉コレステロールが減少するとされています。この状態が長く続くと冠動脈性心疾患のリスクが高まるといわれているため注意が必要です。
しかし、チョコレートに含まれるトランス脂肪酸は100gあたり平均0.148gで、ケーキやスナック菓子と比べても少ないため、そこまで心配する必要はないでしょう。

【食品に含まれるトランス脂肪酸(100gあたり)】

・チョコレート:0.148g
・ケーキ:0.707g
・クッキー:1.916g
・ポテト系スナック菓子:0.308g
・コーン系スナック菓子:1.715g
参考:食品安全委員会「食品に含まれるトランス脂肪酸の食品健康影響評価」

他の油脂と違い酸化しにくい

カカオバターは抗酸化物質を含むため、ほかの植物性油脂と比べて酸化しにくい特徴があります。そのため、開封後も比較的長く風味が保たれます。

カカオバターの代用として使われる植物性油脂

カカオバターは比較的価格が高く、供給量にも変動があることから、代用として植物性油脂が使われることがよくあります。
カカオバターの代用としては、チョコレートが乾きやすいよう固化が速いこと、口溶けが良くなるようカカオバターと同じ程度の融点であることなどが求められます。これらのポイントを満たすものとしてよく利用されるのがパーム核油を固体にしたものです。
代用油脂で作ったチョコレートはテンパリングが不要なため、コーティングやエンローバーなどに使われます。ただし、代用油脂はカカオバターより固化が遅く、柔らかいため、添加物を用いて調整することになります。

まとめ

カカオバターはカカオ豆に含まれる油脂成分で、植物性油脂の一種です。クリーム色をしており、チョコレートのような香りと低い融点が特徴です。
カカオバターはチョコレートの原料になるほか、チョコレートの艶出しやテンパリングなどの用途で使われます。また、化粧品の原料としても採用されています。チョコレートをテンパリングする際には、安定した結晶でできている粉末状のカカオバターを使用することで、作業を大幅に簡素化することが可能です。

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