
本格化する国産コオロギ生産 ~コオロギ生産ガイドラインを作成~【昆虫食普及ネットワーク・ニュースレターVol.5】
この数年、国内でコオロギ等昆虫を食用又は飼料用に生産する企業の動きが本格化しています。しかし、事業者が個々の価値観やルール、方法で生産・販売する結果、様々な情報が錯綜して、消費者はどの情報を頼りにすれば良いのかわからないほど、良いも悪いも一緒くたになっています。日本では、山菜採りやキノコ狩りと同様に昆虫を採取して食べる食文化があることから、昆虫に特化した規制はなく、他の食品や飼料と同様に、食品衛生法や飼料安全法(通称)が適用されます。
一方で、人間の管理下で、昆虫を大量に養殖(飼育生産)することは、これまでに経験がなく、人工飼育生産の過程に潜むリスクやその対策について正しく理解するものがないので状況は異なってきます。集約して大量飼育する過程で、病原菌や有害化学物質、異物の混入、あるいは特異な生理作用を引き起 こす物質が生じる可能性がゼロではありません。また、万が一にも飼育している昆虫が自然界に散逸して、自然生態系等環境へ及ぼす影響も懸念されます。そのような観点からも、健康影響、環境影響等に配慮した生産管理が求められます 1)。
昆虫食に対しては、奇異な姿形のため否定派も多く 2)、1 社でも好ましくない事態を起こすと、業界全てが同じにみられて、風評等で大きな痛手を受ける恐れがあります 3)。国は産業としての実績やリスクが顕在化しないうちは法整備には動きません。そこで、昆虫ビジネス研究開発プラットフォーム(iBPF)が、民間自主ルールの第 1 号として“コオロギの食品及び飼料原料としての利用における安全確保のための生産ガイドライン(コオロギ生産ガイドライン)”を公表しました。
このガイドラインでは難しいことを求めるのではなく、「当たり前のことをしっかりと守って、安全に健全なコオロギを生産しましょう。」と提唱しています。ただ、販売ありきのプロモーションが溢れる中で、「人が口にするものは安全確保が最優先ですよ」とメッセージを送ることで、ゲームチェンジャーになると考えています。本ガイドラインに生産者が集まり、管理方法を定めてお互いに点検・評価することで、国産コオロギの安全確保を図ることが期待できます。ガイドライン遵守事業 者を公開する(表)ことで、消費者の皆様が購入される際の選択肢のひとつになるとともに、生産者の真摯な姿勢が国産コオロギ市場への信頼獲得と普及拡大につながることを期待しています。
<参考文献>
1) FAO : Looking at Edible Insects from a food safety perspective – Challenges and opportunities for the sector 2021、(2021)
2) 櫻井蓮、飯島明宏 : 生物工学会誌、100(6)、320–322、 (2022)
3) 藤谷泰裕 : JATAFF ジャーナル、10(7)、42-46、(2022)
(藤谷泰裕/大阪府立環境農林水産総合研究所 食と農の研究部 審議役 昆虫ビジネス研究開発プラットフォームプロデューサー補佐)
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