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テクノロジーで食にイノベーションを!フードテックビジネスコンテスト|令和6年度受賞者のアイデアを一挙ご紹介

テクノロジーで食にイノベーションを!フードテックビジネスコンテスト|令和6年度受賞者のアイデアを一挙ご紹介

テクノロジーを活用した食の新産業創出を目指す「フードテック官民協議会」(事務局:農林水産省)は2025年2月7日(金)「未来を創る!フードテックビジネスコンテスト」の本選大会を、都内で開催しました。フードテックの認知度向上と新たなビジネスの創出が目的で、今回は三回目。一次・二次審査を突破した18組が出場し、多くの協賛企業や参加者が見守るなか、次世代のフードシステム構築への期待が示されました。

本記事では、ビジネス部門、個人部門で最優秀賞を受賞した2つのビジネスプランに焦点を当て、その革新性と今後の展望についてご紹介します。

【ビジネス部門・最優秀賞】海藻由来の塩分コントロール技術で、美味しいと健康をトレードオフにしない世界を実現させる(トイメディカル株式会社 竹下さん)

塩分の過剰摂取は世界の食領域における最重要課題の一つであり、WHOは塩分摂取を1日5g以内に抑えることを推奨しています。しかし、味の嗜好性の問題から減塩の取り組みは広がりにくいのが現状です。

トイメディカルは、日本古来の海藻食文化に着目し、わかめなどに含まれるアルギン酸類の塩分吸着効果を応用した革新的な調味料「零(ゼロ)しお」を開発しました。食品中の塩分はそのままに、体内吸収を抑えることで、実質的な減塩効果を実現しています。


”減塩の常識”が変わる!次世代減塩調味料「零(ゼロ)しお」とは


  • 特許取得済みの塩分吸着ファイバーを活用し、舌で味を感じた後にその塩分を吸着する。
  • OEM展開による業界連携で、大手食品メーカーと新たな減塩食品開発を推進。
  • サステナブルな原料活用で、ブルーカーボンを通じたCO2抑制に貢献。


従来の「減塩=美味しくない」という固定観念を覆し、健康的でありながら味わい豊かな食品開発の新たな可能性を提供します。


— 最優秀賞受賞おめでとうございます。「零(ゼロ)しお」の開発背景を教えてください。
従来の減塩食品は、塩味が落ちることで味が薄くなりがちという課題がありました。私たちが提唱するのは「味はそのまま、塩分を体内で吸収させない」塩分オフセットという発想です。食品に含まれる塩分が体内に吸収される前に、アルギン酸類の力で塩分をオフにします。これにより、美味しさを損なわずに減塩できる調味料「零(ゼロ)しお」が誕生しました。

ー現在、どのような企業と連携が進んでいますか?
熊本大学や重光産業株式会社様と提携し、全国でチェーン展開する「味千ラーメン」に導入を進めています。具体的には、”塩分を気にしないラーメン”というコンセプトのもと、麺に我々の商品を練り込むことで、スープの味を変えずに健康リスクを軽減するラーメンを開発中です。

— 今後の展望をお聞かせください。
大手食品メーカーや飲食業界との共同開発にも意欲的です。OEM展開を強化し、ハム・ソーセージ・ハンバーグなどの加工食品にも適用していきます。「減塩=美味しくない」という固定観念を覆し、業界全体のウェルビーイング向上に貢献していきたいと考えています。

ー 最後に、食品業界の皆様へのメッセージをお願いします。
「零(ゼロ)しお」は、食品の味を変えずに減塩できる調味料です。ぜひ一緒に新しい食品開発にチャレンジし、健康的な食の未来を築いていきましょう。

関連URL:https://toymedical.jp/

【個人部門・最優秀賞】ヘルシーな食文化&和食の原点である精進料理に着目した、京生湯葉を用いた創作精進料理のファストフードチェーンブランドyuppa(フリーランス 渡邊さん)

「yuppa」は、京生湯葉を活用した創作精進料理のファストフードブランドです。健康的な食生活への関心は高まっていますが、「手間がかかる」「食の楽しさが欠ける」といった理由で継続が難しいという課題がありました。そこで、“美味しく、手軽に、そして健康的に”をコンセプトに「yuppa」が開発されました。

忙しい現代人のための栄養バランス食「yuppa」とは


  • 一汁三菜をワンハンドで食べられる。
  • ファストフードなのに、低脂質・高たんぱくでヘルシーな設計
  • 血糖値の急上昇を抑えた栄養設計で、オフィスワーカーにも最適。


「ビーガン」や「ベジタリアン」といった言葉を使わず、「精進料理」という伝統的な表現を用いることで、より多くの方に食べたいと思っていただけるようなブランドコミュニケーションをしています。


— 最優秀賞受賞おめでとうございます。受賞後の反響はいかがですか?
複数の業界関係者の方からご連絡をいただきました。こうした繋がりから、さらに事業連携が広がる兆しを感じています。健康食品市場は拡大していますが、単に「健康」や「サステナビリティ」を訴求するだけでは消費者の関心を持続させることが難しいのが現状です。食生活の変化を自然に受け入れられるようなアプローチが求められており、その課題に「yuppa」が新しい選択肢を提供できればと考えています。

ー現在、どのような企業と連携が進んでいますか?
不二製油株式会社様と商品開発が進んでいます。同社の持つ食品原料『MIRA-Dashi®︎』を「yuppa」に用いることで、植物性食品特有の物足りなさを動物性に匹敵する”旨み”で補完するというものです。一般的に、プラントベースフードは何かの代替品として比較されがちですが、プラントベースフード自体に新しい価値を創出したい、そんな想いが一致してコラボレーションが進行しています。

— 今後の展望について教えてください。
医療や介護施設で働く方々の食の課題解決にも取り組みたいと考えています。店舗で手作りしたプロダクトを冷凍し、納品するモデルを開発中です。

また、海外市場への展開も視野に入れています。特にニューヨーク市場では、現地の食文化と親和性の高い精進料理を軸に、新たなファストフードの選択肢として確立することを目指しています。ほかにも、国内外の飲食事業者と協力し、日本の中小飲食店が、再現性を持って海外展開を可能にできるモデルを構築することで、日本発の食文化をグローバルに広めることを目標としています。

ー最後に、食品業界の関係者の皆様に向けたメッセージをお願いします。
「yuppa」は精進料理を現代的にアレンジした新しいファストフードブランドです。共に新たな食文化を創造し、持続可能な未来を築いていければ嬉しいです。

関連URL:https://yuppa.hp.peraichi.com/

以上、最優秀賞に輝いた2組のビジネスプランのご紹介でした。両者の革新的な取り組みは、食品業界の未来を大きく変える可能性を秘めています。今後のさらなる発展に期待が高まります。

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公式HP

執筆者プロフ シェアシマ編集部

食品業界に携わる方々に向けて、日々の業務に役立つ情報を発信しています。食品業界の今と未来を示唆する連載や、経営者へのインタビュー、展示会の取材、製品・外食トレンドなど話題のトピックが満載!さらに、食品開発のスキルアップや人材育成に寄与するコンテンツも定期的にお届けしています。

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