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ファームトゥテーブル(farm to table)とは?メリットと国内事例を解説

ファームトゥテーブル(farm to table)とは?メリットと国内事例を解説

食材の地産地消や持続可能な食品に興味がある方は、ファームトゥテーブルという言葉を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。ファームトゥテーブルの意味や登場した背景、取り組むメリットは何かなど、疑問を持っている人もいると思います。この記事では、ファームトゥテーブルの概要や始まりについて詳しく解説します。取り組むメリットと国内の事例も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

ファームトゥテーブル(farm to table)とは

ファームトゥテーブルという言葉を耳にしたけれど、食にどんな関係があるのか、ご存知でしょうか。ここでは、言葉の意味から解説していきます。



「農場から食卓へ」を意味する食の考え方

ファームトゥテーブルは、アメリカで始まった「農場から食卓へ」を意味する食の考え方です(※)。農場から食卓に直接届けることで、食材の鮮度や安全性を確保できるという考えからこの言葉が生まれました。

ファームトゥテーブルは地産地消に適した地域で始まり、徐々にアメリカ全土へと広がっています。その理由は、食材の安全性を確保できる点が健康を意識している人の考えとマッチしたためです。

※参考:一般財団法人 自治体国際化協会 CLAIRメールマガジンvol.235「アメリカにおけるFarm to Table運動について」

ファームトゥテーブルの始まりとトレンドへの流れ

ファームトゥテーブルは1997年に生まれた言葉で、2010年ごろからアメリカ全土に広がっていきました。こうした食の考え方はアメリカだけにとどまらず、日本やヨーロッパなど、世界各地に浸透し始めています。ここでは、ファームトゥテーブルの始まりとヨーロッパで行われている取り組みについて紹介します。

流れの起点は米西海岸の「地産地消」

ファームトゥテーブルは2010年から始まった食への取り組みです。

アメリカの西海岸は農業が盛んで、地産地消が根付いている地域でした。地域の特性に加え、この頃からヘルシーでエコな食材が注目を浴び始めていたことから、ファームトゥテーブルの考えはスムーズに地元の人たちに受け入れられました。(※)。

※参考:一般財団法人 自治体国際化協会 CLAIRメールマガジン vol.235「アメリカにおけるFarm to Table運動について」

ファームトゥテーブルは飲食業界のトレンドに

アメリカ西海岸に浸透したファームトゥテーブルは、瞬く間にアメリカ全土へと広がり、食の安全性を意識した考え方を持つ人も増えました。アメリカのトレンドはヨーロッパや日本にも広がり、各国でさまざまな取り組みが行われています。

日本では地産地消を意識する飲食店が増えただけでなく、茨木県つくば市で「Farm to Table つくば」というコミュニティを作っています(※)。地産地消を推進する取り組みを実施していて、今後は日本全国にファームトゥテーブルの考えが広がるかもしれません。

※参考:つくば市「Farm to Table つくば~つくばの食の魅力」

「欧州グリーン・ディール」が取り組むfarm to fork戦略

ヨーロッパの成長戦略である「欧州グリーン・ディール政策」には、farm to fork戦略が含まれています。ファームトゥテーブル同様、農場から食卓までの意味を持つfarm to fork戦略では、3つの目標を掲げています。

  • 食材が育つ環境を保護・回復する
  • アレルギーを考慮したうえで、持続可能な栄養食を維持する
  • 持続可能な栄養食を低コストで提供しつつ、利益を得る


これらの取り組みをいち早く行うために、欧州グリーンディールはフードシステムの法的枠組みを提案すると発表しています(※)。諸外国の取り組みが気になる方は、ヨーロッパの今後の動向をチェックしておきましょう。

※参考:日本貿易振興機構JETRO「EUの新しい食品産業政策『Farm To Fork戦略』を読み解く」

ファームトゥテーブルにおける生産者・消費者のメリット

ファームトゥテーブルに取り組むことで、生産者・消費者それぞれがメリットを得られます。取り組みを始めるきっかけにもなるため、ここで詳しく解説します。

生産者のメリット



安全性の高い食品を作り続けることで付加価値が生まれ、ブランド化することも可能な点は生産者の大きなメリットです。ここでは、有機乳業メーカーの例を紹介します。

アメリカにある「オーガニック・ヴァレー」は、約1200ほどの小規模オーガニック農家が加盟する有機乳業メーカーです。作り出されている商品のなかでも特に人気の「ギー」は、世界で最も健康的な50食品に認定されていて、日本のECサイトでも人気を集めています。

小規模の農家であっても、より良い商品を生み出せば国内だけでなく、海外からの需要も望めます。経済的な利益だけでなく、自身の商品がたくさんの人の需要を満たす点は、ファームトゥテーブルならではのメリットです。

また、食品ロスが懸念される現代において、持続可能な食材を作り続けられることも大きな魅力です。農場の管理によって、季節に応じてさまざまな野菜を収穫できます。ロスの恐れがない食材は多くの人に求められるため、やりがいや達成感を感じられるでしょう。

消費者のメリット



消費者にとっての大きなメリットは、新鮮な野菜をおいしく食べられる点です。ファームトゥテーブルに取り組む生産者から野菜を直送してもらうことで、安全性の高い食材を料理に使えます。

野菜を栽培する際に農薬を使う生産者は多くいます。農薬を正しく使っていれば体に与える影響は少ないとされているものの、農薬そのものに不安を覚える人も少なくありません(※)。農薬や化学肥料を使わずに栽培したオーガニック野菜であれば、体への影響を心配する必要もないでしょう。

※参考:JCPA農薬工業会「農薬はカラダに悪い?」


国内のファームトゥテーブルの事例
ファームトゥテーブルに関心のある人のなかには、実際に取り組んでいる店舗に行ってみたいという方もいるでしょう。ここで、東京の国分寺と恵比寿にあるお店を紹介します。

国分寺「Farm to table De salita」

東京都国分寺市にある「Farm to table De salita」は、イタリアン料理を提供するレストランです。品質を重視して厳選した野菜を農家直送で仕入れているため、新鮮な野菜を使った料理を楽しめます。野菜本来のうまみを活かして調理している点も、デ サリータの魅力です。

店内は広々としていて、1階と地下に席を用意しています。1階は開放的な空間、地下は古城をイメージしたおしゃれな空間になっているので、シーンに合わせて席を選べます。

恵比寿「WE ARE THE FARM」

「WE ARE THE FARM」は、恵比寿と麻布十番に店舗を展開するオーガニックレストランです。WE ARE THE FARMが誇る最大の魅力は、自社農園を用意して千葉県佐倉市で収穫した野菜を直送しているため、オーガニック野菜を好む方に特におすすめです。

新鮮な野菜を活かした料理を数多く提供していて、ランチタイムはビュッフェスタイルで楽しめます。店内には個室も用意しているので、女子会やデートの際にもよく利用されています。

まとめ

ファームトゥテーブルは「農場から食卓へ」を意味する食への取り組みです。アメリカで取り組みが始まってから世界中に広がり、日本の飲食業界にも影響を与えています。地産地消や自社農園での自家栽培に取り組む飲食店が人気を集め始めていて、今後も増えていくことが予想されます。

ファームトゥテーブルに関心をお持ちの方は、地元の野菜を使うことから始めてみましょう。地元野菜ならではの鮮度や安心感、おいしさといった魅力を、再確認できるかもしれません。

執筆者プロフ シェアシマ編集部

食品業界に携わる方々に向けて、日々の業務に役立つ情報を発信しています。食品業界の今と未来を示唆する連載や、経営者へのインタビュー、展示会の取材、製品・外食トレンドなど話題のトピックが満載!さらに、食品開発のスキルアップや人材育成に寄与するコンテンツも定期的にお届けしています。

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