
解説|TNFDフレームワークとは?LEAPアプローチについても紹介
生物多様性の保全が国際的に叫ばれる中、日本の食品メーカーも、対応を求められています。TNFDフレームワークの概要や、情報開示の手法であるLEAPアプローチを理解するには、そこに至るまでの背景から理解することが必要です。
こちらの記事では、これらの概念について詳しく解説します。TCFDフレームワークとの違いや、TNFDフレームワークにおける開示推奨項目、食品業界における企業の取り組み事例についても紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
TNFDフレームワークの概要|生物多様性を保全するための国際的な枠組み
TNFDは、“Taskforce on Nature-related Financial Disclosures”の略称で、民間企業や金融機関などが参加し、自然資本や生物多様性に関するリスクと機会を評価・開示するための国際組織です。日本語では「自然関連財務情報開示タスクフォース」と訳されています。
TNFDフレームワークとは、自然環境の変化や生物の多様性が企業活動にどのような影響を及ぼすのかという情報を開示するための枠組みです。パリ協定やSDGsに沿って生物多様性を保全・回復する活動に資金の流れを向け、世界経済が持続的に成長し、人々が繁栄を謳歌できるようにすることを目的としています。
なお、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)は、2019年1月に開催された世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)において着想されました。
TCFDの情報開示フレームワークをベースにしている
TNFDフレームワークのベースになっているのは、TCFDのフレームワーク(企業の気候変動に対する取り組みを可視化するための枠組み)です。
TCFDは“Task Force on Climate-related Financial Disclosures”の略で、日本語では「気候関連財務情報開示タスクフォース」と訳されています。気候変動問題に積極的に取り組む企業に世界中の投資家から資金が集まり、さらなる成長に繋がる「地球環境保護と成長の好循環」を実現することを目的とした国際組織です。
TNFDフレームワークにおける開示推奨項目
2023年9月に公開されたTNFDフレームワークv1.0では、以下に示す項目を開示することが推奨されています(※)。
- ガバナンス:自然に関連する依存、影響関係、リスクおよび機会に関する組織のガバナンスを開示する。
- 戦略:自然関連の依存、影響関係、リスクおよび機会が組織のビジネスモデル、戦略、財務計画に及ぼす影響を、そのような情報が重要である場合には開示する。
- リスクとインパクト管理:自然関連の依存、影響関係、リスクおよび機会を特定、評価、優先順位付け、監視するために組織が使用するプロセスについて説明する。
- 指標と目標:重要な依存、影響関係、リスク、機会を評価および管理するために使用される指標と目標を開示する。
なお、TFNDの公式資料は英文となっているため、上記文言はPwC Japanグループによる日本語訳に準拠していることにご留意ください。正式な文言(英文)は、TNFDの公式サイトなどで確認しましょう。
※参考1:TNFD公式サイト"Getting started with adoption of the TNFD recommendations Version 1.0"
※参考2:PwC Japanグループ「TNFDフレームワークの概要と企業に求められることを解説」
LEAPアプローチとは|情報開示のための4つのフェーズ
TNFDは、上述した項目を分析・開示するための手法として「LEAPアプローチ」を提唱しています。
LEAPアプローチとは、自然関連のリスクや機会を統合的に評価し、情報を開示するための手順です。LEAPとは、「Locate」「Evaluate」「Assess」「Prepare」という4つのフェーズの頭文字をとったものです。ここでは、それぞれのフェーズについて詳しく説明します。
1.Locateフェーズ|自然との接点の発見
まず、どのような場所で自社(サプライチェーンを含む)が事業活動を展開しているのかを把握した上で、自然との接点(インターフェイス)を探します。
そして、脆弱性の高い地域やセクターなど(たとえば、水不足によって日常生活が不便な地域)を特定します。
2.Evaluateフェーズ|依存度と影響の診断
次に、Locateフェーズで抽出した地域における事業活動が依存する(または、影響を及ぼす)自然資本・生態系サービスを特定してください。
その上で、どのくらいの規模・程度なのか、内容がポジティブなものなのかネガティブなものなのかを診断しましょう。
3.Assessフェーズ|重要なリスクと機会の評価
ここまでのプロセスで把握した情報を踏まえてリスクを特定し、当該リスクに対して既に講じている軽減策や管理方法を確認してください。「リスク軽減の観点から不充分」と判断される場合は、追加的な方策を講じましょう。
同時に「自社の事業活動にどのような機会がもたらされるか」も検討し、財務パフォーマンス(収益・コスト)や財務状況(資産・負債)に与える影響について分析してください。
4.Prepareフェーズ|対応し報告するための準備
Prepareフェーズは、「戦略とリソースの配分」「開示アクション」の2段階に分かれています。
「戦略とリソースの配分」では、リスク・機会の分析結果を踏まえて、実施すべき戦略やリソース配分、目標、進捗度の定義・測定方法を決定しましょう。そして、「開示アクション」では、開示推奨事項を踏まえて「具体的に何を開示するのか」を決めた上で、報告書を作成・公表してください。
SBTs for Natureとの違い
SBTs (Science Based Targets) for Natureとは、生物多様性条約やSDGsなどに沿った行動を企業に促すためのフレームワークです。
TNFDと似ているように感じるかもしれませんが、TNFDが「リスクおよび機会の特定」を主目的としているのに対し、SBTs for Natureは「目標設定」を主眼にしている点が異なります。
食品業界における企業の取り組み事例
以下、食品業界におけるTNFDフレームワークやLEAPアプローチの企業の取り組み事例を4つ紹介します。
明治ホールディングス
明治グループでは、TNFDフレームワークのLEAPアプローチに沿って、主要なカカオ生産地(13拠点)における自然関連リスク分析を実施し、森林減少や汚染などの回避・低減に向けて継続的に取り組む姿勢を示しています。
詳細は、こちらからご確認ください。
キリンホールディングス
キリングループでは、キリンビール、キリンビバレッジ、メルシャン、ライオン、協和キリン、協和発酵バイオ、小岩井乳業の事業に関して、TCFDフレームワークやTNFDフレームワークに基づいて統合的な環境経営情報開示を実施しています。
具体的には、従来の「キリングループ生物資源利用行動計画」に基づく活動や、国・地域で異なる水問題の解決に向けた活動に、「場所固有」「依存性」「自然への影響」という自然資本に関連する視点を加え、統合的アプローチを高度化していく姿勢を示しています。
詳細は、こちらからご確認ください。
アサヒグループホールディングス
アサヒグループでは、2022年からTNFDフレームワークによる分析を開始しました。生物多様性の保全・回復に向けて「アサヒグループ環境ビジョン2050」を掲げ、水使用量削減に役立つアプリの開発、電気トラックでの配送、他社との共同配送、ラベルレスボトルの販売、PETボトルのリサイクルといった施策を講じています。
詳細は、こちらからご確認ください。
コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングス
コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングスは、環境ポリシーで「水を含めた自然資源を有効活用し、地球環境を持続可能な形で次の世代へ引き継いでいくことが重要な使命である」と定めています。2022年12月にTNFDフォーラム(TNFDでの議論をサポートする国際組織)に参画し、生物多様性保全への取り組みを強化しています。
詳細は、こちらからご確認ください。
まとめ
近年、SDGs(持続可能な開発目標)やCSR(企業の社会的責任)、ESG経営(環境や社会、ガバナンスを考慮した経営)が重視されるようになり、TNFDフレームワークに沿った情報開示をする企業が国内でも増えてきています。
今回は、TNFDフレームワークやLEAPアプローチとは何かを解説し、企業の取り組み事例を紹介しました。人類が長期的に経済的な発展を続けていくために、自然・生物多様性へのリスクを考慮し、対策を講じることはますます求められていくでしょう。

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