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食品ロスを削減するWEBサービス(後編)

前回に引き続き、食品ロス低減に向けた取り組みと新しいWEBサービスを紹介します。
前編はこちらです⇒食品ロスを削減するWEBサービス(前編)
農林水産省と環境省による平成29年度(2017年度)の推計によると、年間2550万トンの食品廃棄物等が出されています。このうち、“まだ食べられるのに廃棄される食品”=「食品ロス」は約612万トン(事業系328万トン・家庭系284万トン)。これは、国民一人あたりにすると、1日約132 g(ごはん茶碗1杯分)、年間で約48 kgとなります。推計を開始した平成24年度以降では最少となり、取り組みの効果が出始めているといえるかもしれません。
一方で、食料自給率(カロリーベース)が37 %しかないわが国の現状をみると、さらなる削減の取り組みや事業者と消費者双方の意識を高めるためのコミュニケーションが大事になるでしょう。海外にも広く紹介された「もったいない」という日本の言葉を思い出しながら、必要な分だけを買う、使い切るための工夫をしていきたいですね。新型コロナウイルス対策と同様に、食品ロス低減もみんなで取り組むことで進んでいきます。
恵方巻などの季節・行事食ついては、コンビニ・スーパーなどが予約制を採用しながら、当日の店頭販売数を抑えることで廃棄される量も減って改善が進みつつあります。また加工食品では、賞味期限の延長の検討や賞味期限の「年月日」表示から「年月」表示への変更(3カ月以上のもの)に加え、小売店への納入期限ルール変更などが行われています。さらに、賞味・消費期限まで“安全においしく”食べられるようにする観点から、食品添加物の適切な利用も有効な選択肢の一つです。
●フードシェアリングサービス「TABETE」
【株式会社コークッキング】 https://www.cocooking.co.jp/
予約客のキャンセルや悪天候による来客数の減少などの理由により、廃棄される恐れのある商品を抱える飲食店等と消費者をつなぎ、フードロス削減を目指すフードシェアリングのマッチングサービス。
●「Otameshi」
【株式会社SynaBiz】 https://otame4.jp/
品質には問題はないが通常の流通が難しく時間の経過と共に処分されてしまう、従来廃棄されていた商品を消費者がお得に購入でき、かつ購入者が選んだ社会貢献活動団体に売上の一部を寄付できる社会貢献型ECショッピングサイト。
●「ロスゼロ」
【株式会社ビューティフルスマイル】 https://www.losszero.jp/
食品メーカーの規格外品・1/3ルールにより販路不足となる食品を買い取り、一般消費者や法人(定期購入含む)に、作り手のストーリーとともに届けるWEBプラットフォームを運営。またオフラインでは、規格外食材を当該地域で消費できる食事会を開催する。
●「No Food Loss」
【みなとく株式会社】 https://www.nofoodloss.com/
小売店において販売期限や季節限定パッケージなどの理由からまだ食べられるのにやむなく捨てられてしまう商品がクーポン形式にて発行されお得なお買い物が楽しめるアプリ。
●割引・特売・詰め放題ショッピングサービス「Render」
【Render株式会社】 https://www.render.co.jp/
食品の生産・製造・販売に関わる傷モノや規格落ち品、B品、訳あり品などを、販売時設定した連打ゲームにトライすることで「楽しく、おトク」を感じられる販売方法により今までにない新しい買い物の仕方を提供するwebショッピング。
これからもどんどん新しいサービスが始まると思います。
皆さんも手軽に始めれるWEBサービスを利用して食品ロス問題の解決にご協力ください!
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食品ロス

FOOD展2023|シェアシマで原料のアップサイクルを、食ロスセミナーで呼び掛け

食品業界向けの複合展示会「FOOD展2023」が、東京ビッグサイトにて、9月20日(水)〜22日(金)の日程で開催されました。その初日、当社代表の小池祥悟が「食品ロス・リサイクルゾーンリレーセミナー」に登壇し、未利用の食品原料を発掘し、活路を見出すシェアシマのアップサイクルの取り組みを紹介しました。こちらの記事では、セミナーで登壇した内容を、一部を再構成の上、お伝えします。原料段階で廃棄される食品を救いたい、その思いを形に私たちは「シェアシマ」という食品製造業のウェブプラットフォームを運営しており、本日は、「アップサイクル」を活用した新商品開発と販路拡大についてご説明させていただきます。日本の食料自給率が40%にも満たないことは、多くの方がご存知かと思います。一方で、日本の食品ロスの全量は523万トンとされており、そのうち食品製造業が約24〜25%、つまり約125万トンを占めています。こうして食品ロスが発生する理由として、多くのメーカーが関与する中で、加工ないしは原料の各段階で廃棄されてしまうという現状があります。私たちが目指しているのは、食品を無駄にしない社会を作ることです。具体的には、使われない食品原料を他の会社が活用できるようなセカンダリーマーケットを作ることです。そのために、この「シェアシマ」というプラットフォームを展開しています。現在、3,000社以上のメーカーが登録しており、このような流通が普及することを期待しています。ぜひ、多くの方に「シェアシマ」に会員登録していただき、多様な食品メーカーとのつながりを広げていただきたいと考えています。皆さんがよくご存知の「リサイクル」は製品を資源に戻し、そこから新しいものを作ることです。対して、私たちが普及を目指す「アップサイクル」は元の素材の特徴を生かしながら新商品へと生まれ変わらせます。私たちは2022年度、長野市と協力して「長野アップサイクル・フード」という名前で商品開発プロジェクトに取り組みました。このプロジェクトでは、食品製造の上流から下流までのステークホルダーを繋ぎ、未利用の食品原料の情報を集約するところから始めました。消費者の皆さんの知らないところで食品原料のロスが発生しているわけですが、その情報をどうやって集め、世の中に発信していくかについては最も難しい部分です。私たちの調査により明らかになったのは、何らかの理由で使用されずに冷蔵庫や冷凍庫に保管されたままになっている未利用の原材料だけが問題ではないということでした。実際には、製造過程で出る切れ端や、果実の搾りかすなどもアップサイクルの可能性を秘めています。例えば、ウエハースを作る際に出る端材や、野菜ジュースを製造する大きな工場で出る残渣などがそれに該当します。未利用原料を商品化、端材や残渣に付加価値を乗せて私たちは「シェアシマ」プラットフォームも活用して、未利用原料や食品残渣の情報を集めました。最終的には、そうして見つかった素材をアップサイクルし、付加価値の高い新商品を作るという流れを描いていました。ところが、次にぶつかったのは、多くの食品メーカーが自社の名前を公にしたくないという事態でした。そこで、私たちが自ら「シェアシマ食品ロス削減プロジェクト」というアカウントを発行し、食品メーカーの名前を出さずに、在庫を代行して取り扱える仕組みを考えました。1年間の実証実験の結果、約2トンの原料が廃棄されずに済みました。理想としては、10トン、100トンといった規模で行いたかったのですが、食品メーカーも余剰在庫に対して簡単には手を出せない現実がありました。今後は少量でも未利用原料を出せるような環境を整え、購入する側にもそうした事情を理解していただくことで、参画企業を増やしていきたいと考えています。プロジェクトの成果としては、廃棄されていた鶏のレバーとハツを使った缶詰を「長野アップサイクル・フード」ブランドの第一弾商品として発売したことです。レバーもハツも、皆さん焼き鳥や焼肉で食べていらっしゃるでしょうが、実際には需給バランスが取れていないそうです。というのも、モモやムネといった他の部位と比べた時に、レバーなどは余剰になってしまうのが現実です。経過としては、長野県農協直販株式会社(長野市)から、レバーなどの部位が市場に出回らないという情報を得ました。それを基に、長野市や地元企業と協力して商品アイデアを練り、缶詰の試作を行いました。最終的には、長野と東京で記者発表を行いました。さらに、第二弾として、ウエハースの端材を活用したクラフトビール商品を長野県の土産品としてプロデュースし、第三弾として、高知県で余っていた冷凍トマトペーストを使ったカレーを長野市内のスキー場のレストランで期間限定で販売しました。当社としては、アップサイクルの敷居を下げるために、OEMの支援事業にも力を入れており、おかげさまで多くの問い合わせをいただいています。食品原料の紹介から商品開発までを支援し、時にはOEM先のご案内を含む一気通貫したサポートを実現しています。2023年秋からは「未利用ホエー活用プロジェクト」という新しい実証実験に取り組む予定です。これは、チーズ生産が増える中で、副産物である「ホエー」が大量に余ってしまう問題に対処するためのプロジェクトです。最後に、食品産業や食品原料に関わるすべての方々に、私たちの「シェアシマ」というサービスをご利用いただきたいと思います。ご静聴ありがとうございました。

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食品ロス

食におけるアップサイクルについて【パル通信】

「高校生インターン」としてシェアシマを手伝ってくださっている森永理子さんが、このほど食品ロスジャーナリストの井出留美さんの公式ニュースレター「パル通信」に寄稿し、反響を呼んでいます。今回、井出さん、そして、パル通信の配信元である「theLetter」様のご協力により、シェアシマinfoでも、森永さんの寄稿文を掲載させていただく運びとなりました。森永さんの食品ロスに懸ける思いが、社会を良い方向に変えていくために———。【シェアシマinfo編集部】

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食品ロス

1/2ルールの浸透度は?事業者の食ロス意識をクラダシが調査

ソーシャルグッドマーケット「Kuradashi」を運営する株式会社クラダシ(本社・東京都品川区)は、食品関連事業者を対象とし、「SDGs・フードロスに関する意識調査」をこのほど実施しました。全国の食品関連事業者106人から回答を得たところ、商品の納品時点で賞味期限の2分の1が経過していないことを求める「1/2ルール」に沿って納品を開始しているのは、まだ一部にとどまる状況が見えてきました。その一方で、「1/2ルールへの完全移行でフードロス削減は可能である」との前向きな回答が7割に上ることが明らかになりました。調査の背景2023年4月〜5月、食品関連事業者がSDGsやフードロス削減、商慣習の見直しについてどのように考えているのかについて、クラダシは意識調査を実施しました。2022年、農林水産省は、食品製造・卸・小売・外食事業者の業界団体に対し、食品ロス削減に向けた取組の加速化について通知を出しました。この中で同省は、1/3ルールから1/2ルールへの納品期限の緩和に加えて、賞味期限の年月表示や適量仕入れや売り切り等の実施、フードバンクやこども食堂への寄附等の取り組みを促進するよう求めています。こうした動きを受け、大手小売店を中心に、賞味期限が6か月以上ある常温加工品などを対象とし、1/2ルールの採用を開始または表明する企業が増えています。1/2ルールの導入は一部、食ロス削減には課題も「取引している小売店舗において、すでに1/2ルールでの納品が開始したところはありますか」の設問では、「ある」と答えたのが36.7%で、「ない」の22.6%を上回りました。一方で、「分からない」「1/2ルールの対象となる商品を製造・販売していない」と回答した人が合わせて39.6%と、1/2ルールでの納品が広く浸透しているとは言えない状況が読み取れます。上記の設問で「ある」と回答した人の中で、すでに1/2ルールを導入している納品先の割合は20%未満とした人が最も多く、28.8%でした。1/2ルールを導入している納品先はあるものの、その割合はまだ全体として多くないことが分かりました。「1/2ルールに完全移行したとしても、流通過程でのフードロスは発生してしまうものだと思いますか」の設問に「ほとんど変わらないと思う(想定される変化10%未満)」と答えた人が11.3%だったのに対し、「フードロスは発生するが、量は多少減ると思う(想定される変化10~29%程度)」との回答が最も多く44.3%。それに「一定数減ると思う」(19.8%)と「大幅に減ると思う」(7.5%)とを加えると、7割以上の人が1/2ルールへの完全移行でフードロス削減が可能であると考えていることが分かりました。さらに、「フードロスは発生すると思う」と回答した人にその理由を尋ねると、最も多かったのは「商品リニューアル等の理由から終売品が発生するため」で45.3%でした。次いで「一定数、販売期限切れなどによる小売店からの返品があるため」「賞味期限逆転禁止や欠品禁止等、納品期限以外の商慣習が残っているため」がそれぞれ38.7%という結果となりました。さまざまな利害関係者が複雑に絡み合う現在の商慣習は、企業や消費者の個々の取り組みだけではなかなか改善することができません。食品サプライチェーンと行政、消費者が連携し、フードロス削減のための新たな仕組みを早急に構築することが、いま求められています。調査概要調査名:SDGs・フードロスに関するアンケート調査目的:食品関連事業者の皆さまの「SDGs」や「フードロス」についての意識や取り組みを知り、「Kuradashi」からの情報発信やサービス改善に役立てる。   調査方法:インターネット調査調査期間:2023年4月24日(月)~2023年5月10日(水)有効回答:106名調査項目:1.貴社では、SDGs推進に取り組むことは、企業経営においてどの程度重要であると捉えていますか。(単一回答、以下SA)2.貴社では、SDGs目標達成に向けた取り組みを行っていますか。(SA)3.貴社が行っているSDGs目標達成に向けた取り組みは、以下のSDGs目標のどの項目に当てはまりますか。(複数回答、以下MA)4.貴社では、「フードロス削減」に関する取り組みを行っていますか。(SA)5.貴社では、フードロス削減のためにどのような取り組みを行っていますか。(MA)6.貴社におけるフードロスの発生比率は、生産量全体の何%程度ですか。(SA)7.貴社の本年度のフードロス削減に対する取り組みは、昨年度より強化される予定ですか。(SA)8.貴社が取引されている小売店舗において、すでに1/2ルールでの納品が開始したところはありますか。(SA)9.問8で「ある」と回答した方へ質問します。すでに1/2ルールを導入している納品先は、どの程度の割合ですか。(SA)10.貴社において、納品期限が1/3ルールから1/2ルールに完全に移行したとしても、流通過程でのフードロスは一定発生してしまうものだと思いますか。(SA)11.問10で「フードロスは発生すると思う」と回答した方へ質問します。そのように考える理由として当てはまるものをすべてお選びください。(MA)12.商慣習のひとつである、小売からメーカー等に対する「欠品ペナルティ(欠品粗利補償金)」は、近年緩和されていると感じますか。(SA)13.貴社において、「Kuradashi」のようなサービスは、フードロスになってしまいそうな商品を流通させるためのセーフティネットのひとつになり得ると思いますか。(SA)14.貴社はこれまでに「Kuradashi」に出品したことはありますか。(SA)15.問14で「出品したことがある」と回答した方へ質問します。 貴社が「Kuradashi」を利用する理由として当てはまるものをすべてお選びください。(MA)※百分率(%)は小数第二位で四捨五入し、小数点第一位までを算出しています。※百分率の合計値が100%とならない場合があります。【情報提供元:PR TIMES】

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食品ロス

余剰食材が主役のアップサイクルフード、商品化モデルを長野から

食品ロス削減のための新たな試みとして、長野市で始まった「長野アップサイクル・フードプロジェクト」。余剰となった食品原料を活用し、新たな商品として生まれ変わらせるこのプロジェクトは、これまで光の当たってこなかった「食品製造段階のロスの削減」を実現できる、新しい商品開発の形です。今回は商品化に至るまでの過程をたどりながら、プロジェクトの意義や今後についてレポートします。【シェアシマinfo編集部】ウエハースの端材がクラフトビールにほんのり甘くて苦み控えめの軽やかな味わいの「ペールエール」と、やさしい甘さと深いコクの余韻が心地よい「アルト」。ともに見た目は本格的なクラフトビールそのものですが、この2種類、実は“普通の”クラフトビールではないんです。実はこのビールでは、長野県内のウエハース工場で毎日出てしまう「端材」を原材料に使っています。端材とは、食品材料を型に沿って切り出した際に生じる余分な切れ端や、割れたり欠けたりした物の総称のことです。こうした端材は、通常、製造段階で廃棄されてしまうので、私たちの目には見えない食品ロスとなっています。製造を担う株式会社Beer the First(横浜市)によると、ウエハースがクラフトビールに生まれ変わる製造工程はこうです。まず、ウエハースの端材を粉砕し、お湯を加えて糖化させて煮沸します。次に、冷却の際に酵母を加えて発酵させます。そして、貯蔵タンクで熟成させれば、約6週間後にビールが完成します。このビールでは、通常であれば麦を使用する原料のうちの10%をウエハースの端材で代用しています。​​これにより毎日10キロ発生している端材の一部が、「環境に優しい」という付加価値をもった新しい商品として販売できるようになります。自治体と地元企業で食ロス解決を「信都ご縁エール」と名付けられ、今年2月に発売されたこのビールは、長野市の産学官金の連携組織「NAGANOスマートシティコミッション(※1、NASC)」のプロジェクトから生まれました。食品の製造、流通、販売に関わる長野市の企業が一堂に介し、「食品製造段階のロス」をどうしたらなくせるかに向き合う、新しい取り組みです。 食品ロス削減に対する関心は高まっていて、家庭や小売、外食分野での対策は目を見張るものがあります。ところが、全国523万トンの食品廃棄のうち、食品製造業が23.9%を占めていて(※2)、まだ解決策が見つけられていないのが実情です。長野市のプロジェクトで中心的な役割を担ったのは、ICS-net株式会社(長野市)です。「シェアシマ」という食品原料のデータベースをウェブ上につくり、食品メーカーの開発・研究担当者が原料を検索するサービスを提供しています。「シェアシマ」という名前は「その食品原料の情報を、“シェアしま”せんか」に由来しています。全国区の食品企業から地元の大学まで組織の垣根を越えて集まったプロジェクトでは、未利用の原料情報を共有するシステム構築を目指しました。(※1)NAGANOスマートシティコミッションとは:2030年のサーキュラーシティNAGANO実現を目標とし、長野市を中心とし地域内外の事業者、団体、大学等高等教育機関、金融機関、行政機関等が参画する団体で、長野市発の新産業の創出と、地域課題の解決に向け活動しています。(※2)農林水産省による2021(令和3)年度の調べ未利用原料の“発見”から商品化へとつなぐ製造段階の未利用原料の情報は、自治体はおろか、どのメーカーも持ち合わせていないのが実情です。対面・遠隔の会議を重ねても身のある情報は集まらず、プロジェクトのコアメンバーが、食品工場や直売所を実際に訪ねて状況を聞き取りました。分かったのは、食品工場ではなるべく廃棄が出ないように、できる限りの努力をしているということ。産業廃棄物として処理するには安くないコストがかかるため、廃棄物を減らすための企業が努めることは、ある意味当然のことではあります。一方で、気になる実態も見えてきました。当初私たちが想定していたのは、何らかの事情で商品化できず、廃棄されてしまう原料の存在です。しかし、実際には、果実の搾りかすや皮などの「残渣」や、食品を加工する際に出る「端材」も、まだ食べられるのに捨てられてしまうケースがあるということです。プロジェクトの中で「発見」し、クラフトビールの原材料という新しい役割を与えたウエハースも、これに該当する「見えない食品ロス」でした。コアメンバーとしてプロジェクトに参加し、ウエハースを原料として提供した株式会社タカチホ(長野市)の久保田一臣社長も、「プロジェクトが観光みやげ品の新しい在り方を考える良いきっかけになった」とし、「地方の食品製造メーカーでは同様の課題を抱える企業が数多くある。この取り組みが、彼らの課題に訴求する先行事例となればいい」と話していました。アップサイクルで「地方再生」を出来上がったビールは、未利用のレバー・ハツを使用した缶詰シリーズ「ふくふくレバー」と共に、「長野アップサイクル・フード」として限定販売されています。あえて「長野」をブランド名に冠した理由を、ICS-netの小池祥悟代表はこう語ります。「いくら余っているからといって、長野から北海道へ原料を持っていったら、サステナブルな社会は作れない。まずは長野から、このモデルを確立し、全国のスタンダードにしたいんです」。食品原料のデータベース「シェアシマ」は、未利用原料を集めた特集ページを公開しています。ここに掲載されている商品はすべて、アップサイクルの原石です。「長野の次に、『静岡アップサイクル・フード』があってもいいし、『高知アップサイクル・フード」』ができてもいい」(小池代表)。そうやって地域で行き場を失っている食品原料に新たな命が吹き込まれ、食品事業者や一次生産者の収入増につながる社会を見据えて、動き出しています。関連記事:食品を捨てない社会へ:シェアシマにしかできないアップサイクル事業とは

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食品ロス

アップサイクル・フードの「ふくふくレバー」日本の本当に美味しい缶詰に選出【シェアシマNEWS】

「爆買いブームの火付け役」関東最大級の免税店で取り扱い開始ラオックス秋葉原本店4階にある訪日外国人向け免税コーナーにて、長野アップサイクルフード第一弾「ふくふくレバー」(全6種)の販売を開始したことをお知らせします。ふくふくレバーは、信州福味鶏のレバー及びハツの未利用品を使った商品です。同店のリニューアルオープンに際して実施された企画で、「日本の本当に美味しい缶詰」に選出。商品名が「ふくふく」で”福”を連想させることから、縁起の良いお土産品として親しまれることを期待されています。ラオックス秋葉原本店で、「ふくふくレバー」が新たに販売開始今回「ふくふくレバー」が販売されるのは、今年6月にリニューアル・オープンしたラオックス秋葉原本店です。ラオックスは、『爆買いブームの火付け役』とも称され、インバウンドを牽引した代表的な企業です。「爆買い」が流行した2015年当時、ラオックス秋葉原本店には1日3,500人、1ヶ月では10万5,000人の訪日外国人観光客が来店。新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い一時需要は落ちたものの、今回のインバウンド需要再来を受けて、リニューアルオープンするに至りました。同社ではこの度、訪日外国人観光客の増加によるインバウンド需要拡大を受けて、日本各地の名産品・食品・お酒・伝統工芸品を集結させたコーナーを、秋葉原本店4階フロアに新設しました。ラオックスと缶詰博士のコラボで「日本の本当に美味しい缶詰」を選出リニューアルオープンに付随し、日本缶詰協会公認の缶詰博士・黑川勇人氏とラオックスによるコラボレーション企画「日本の本当に美味しい缶詰」が立案。インバウンド需要の拡大を受けて、より多くの訪日外国人観光客のニーズに応えるのが企画の趣旨です。近年日本では、凝った料理を封じ込めた逸品缶詰が登場したり、普段の食卓に並ぶ料理の一品として活用されるなど、”お助け食材”として缶詰を楽しむ文化が広がっています。その人気は国内だけに留まらず、海外の方からも高い評価を得ています。ラオックス秋葉原本店販売情報場所:ラオックス秋葉原本店4階住所:東京都千代田区外神田1-2-9時間:11:00〜19:00(都合により時間が変更になる場合がございます。)URL:https://www.laox.co.jp/laox_store/stores/akihabara/缶詰博士・黑川勇人氏コメント「ふくふくレバー」は、大きめカットのレバーがぎっしり詰まっています。レバーの表面には脂が浮いてきらきら輝き、内側はきれいなピンク色。いかにもレバーらしい濃厚なコクがあるのに、臭みや雑味がまったくないのは原料がいいのでしょう。味付けのバリエーションが豊富なのも嬉しいですね。黑川勇人氏プロフィール1966年福島県生まれ。日本缶詰協会公認の缶詰博士として、様々なメディア出演や執筆活動で活躍。日々世界の缶詰を食している世界一の缶詰通。 著書に「缶詰博士が選ぶ!「レジェンド缶詰」究極の逸品36」(講談社+α新書) 「旬缶クッキング」(共著・春風亭昇太 ビーナイス)など。アップサイクル・フード「ふくふくレバー」商品紹介SDGsへの関心が高まる中、日本の食品ロスは解決しなければならない大きな課題です。食品メーカー向けのプラットフォームを運営する当社は、食品ロス解決の糸口として「アップサイクル・フード」事業を⻑野市と共同で立ち上げました(※)。これは未利用原料に付加価値をつけ、新たに商品企画・開発する取り組みです。アップサイクル・フード事業から誕生した『ふくふくレバー』は、信州を代表する銘柄鶏・信州福味鶏の、未利用だったレバー・ハツの一部を使用しました。化学調味料や保存料を使用せず、一つ一つ丁寧に手作業で製造。レバー・ハツの魅力を活かしながら、少し贅沢なおかずとして楽しんでいただけるよう6種類のバリエーョンに仕上げました。※2030年のサーキュラーシティNAGANO実現を目標とし、⻑野市を中心とし地域内外の事業者・団体・大学等高等教育機関・金融機関・行政機関等が参画する団体。(上段左から時計回りで)福味鶏 ふくふくレバー ご褒美パテ、福味鶏 ふくふくレバー 生姜香る時雨煮、福味鶏 ふくふくレバー 至福のアヒージョ、福味鶏 ふくふくレバー 旨辛ッヤンニョム、福味鶏 ふくふくレバー 贅沢ネギ塩、福味鶏 ふくふくレバー おとなの焼肉味※「福味鶏」は長野県農協直販株式会社の登録商標です。※記載されている会社名、製品名は各社の商標または登録商標です。参考価格:各1,280円(税抜)長野アップサイクル・フードの公式ホームページでは最新の情報をお伝えしています。

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食品ロス

【登壇レポ】製造段階の食ロスに価値を、アップサイクルという選択肢【 ifia JAPAN セミナー】

シェアシマを運営するICS-net株式会社は、東京ビッグサイト(南1・2ホール)にて5月19日まで3日間開催されたifia JAPAN 2023(第28回国際食品素材/添加物展・会議)に出展。ブース出展したほか、主催者企画セミナーに登壇し、ICS-net株式会社 アップサイクル推進室 室長 菊地 由華が「食品製造段階で発生する食品ロスを活用!新たな価値創出『アップサイクル』について」をテーマに講演しました。記事の要旨:食料自給率が38%しかない日本は、海外からの食材輸入に大きく依存しており、食品製造過程で年間121万トンの食品ロスが発生しています。この問題に取り組むシェアシマは、余剰原料を再利用する「アップサイクル」を促進するためのサービスを提供しています。アップサイクルとは、通常であれば廃棄されてしまう原料を活用して、新たな価値ある商品を作り出すという考え方です。主に未利用の原料や製造過程で出じる端材を活用して新たな商品を作り出しています。これらの取り組みにより、食品ロスの削減と新たな商品開発を推進し、食品産業の持続可能な未来を構築しています。値上がりする原料、ロスが生じる矛盾日本の食料自給率の低さと製造段階に生じる食品ロスの問題に焦点を当てるシェアシマは、食品製造の持続可能なサプライチェーンの構築を推進しています。日本の自給率(カロリーベース)はわずか38%で、多くの食材が海外から輸入されています。しかし、一部の海外サプライヤーからは日本への販売をためらう声もあり、日本の食品産業に大きな課題が突きつけられています。食品製造の過程で生じる食品ロスは約121万トンあるとされていて、これは日本の食品ロス全体(522万トン)のうちの23%。決して無視できない数字となっています。シェアシマは、食品ロス削減を推進するとともに、余剰原料を生まれ変わらせる「アップサイクル」を促進するサービスを提供しています。その一つが、食品原料のサプライヤーメーカーが余剰となった原料を掲載できる[専用サイト(シェアシマアップサイクル特集)]です。これにより、食品メーカーが余剰原料を利用できる仕組みができて、食品ロスを減らすことが期待できます。シェアシマは食品原料のサプライヤーと食品メーカーを直接つなぐサービスも提供しています。これにより、新商品開発や他の業務に時間を割くことができ、食品メーカー全体の活性化を目指しています。シェアシマは現在、約2600のユーザーを有しており、2026年には2万5000のユーザーが参加することを目指しています。こうして構築された食品企業のプラットフォームは、食品ロス削減とアップサイクル推進を通じて、日本の食品産業の持続可能な未来を構築するための一歩となります。アップサイクルフードで“余剰”を“価値”へアップサイクル事業は、廃棄される可能性のある原料を有効利用し、新たな価値を生み出す活動です。「リサイクル」が製品を原料に戻してから新たに製品を作るのに対し、「アップサイクル」は原料そのものを活かして、付加価値を向上させる新製品を創出します。このアップサイクルの可能性を秘めた食品の原料は大きく三つに分けられます。一つは「未利用原料」、二つ目は「残渣」(皮や絞りかすなど)、そして最後に製品を作る工程で出てしまう「端材」です。私たちは、これらの原料を活用し、新たな商品を作り出す事業を展開しています。具体的な実績として、私たちは昨年度、シェアシマのサイトを介して1トンの食品ロス削減に寄与しました。この数字は未利用の食品の積み重ねがあって初めて成り立つもので、これをさらに増やしていきたいと考えています。さらに、私たちはアップサイクル商品の企画及び開発の推進も行っています。例えば、昨年度には長野市と共同でアップサイクル商品を発売しました。一つは、信州福味鶏のレバーとハツを使った缶詰です。これは通常余剰となる部位を有効活用し、新たな商品を創出した成功例となります。また、ウエハースを使ったビールも開発しました。これは土産品製造会社が生成する端材をアップサイクルビール製造企業につなぎ、新たな商品を開発した事例です。これらの開発は、食品ロス削減だけでなく、新たなビジネスチャンスを創出する可能性を秘めています。私たちの取り組みはこれからも続きます。余っている原料や商品化が困難なものがあれば、私たちにぜひご相談ください。食品ロスの削減と新たな商品開発の可能性を共に追求してまいります。 

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