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食用昆虫文化を生かして 食の多様性を確保するための取り組み【昆虫食普及ネットワーク・ニュースレターVol.6】

はじめまして、NPO法人 ISAPH(アイサップ)ラオス事務所の石塚です。私たち、ISAPHはマラウイ(アフリカ)とラオス(東南アジア)で地域母子保健支援活動を実施しているNGO団体です。今回、ラオスでの取り組みのひとつである食用昆虫に関わる活動をご紹介させてください。

どうしてラオスで食用昆虫養殖の活動を?

私たちの活動地であるラオスの農村部の子どもたちは、栄養バランスを欠いた食生活から発育阻害という問題を抱えています。発育阻害とは、日常的に栄養を十分に取れずに慢性栄養不良に陥り、年齢相応の身長まで成長せず、脳の認知能力を十分に発達させることもできないという問題です。健康な身体を獲得するためには、日頃から適切な頻度・量の栄養を摂取する食生活がとても大切です。しかしながら、住民の食生活は、自分たちで育てたお米や、野菜や果物、魚を森や川など自然から採って食べることが基本です。お腹を満たすことはできますが、栄養バランスに着目するとそれだけでは不十分で、牛乳や豚・牛のお肉など、商店や市場で購入しなければアクセスし難い食品もあります。けれども、住民はわずかな現金収入しかなく、日頃から栄養に考慮した食品に充てるためのお金はありません。そこで、私たちは昆虫食文化に注目しました。ラオスでは、昆虫を食べることは当たり前です。また、市場では、他食材と比較し同等またはより高額な価格で取引がされています。そのため、住民が食用昆虫を養殖し販売すれば、安定した収入源になるのではないか、と考え取り組み始めました。たとえ、売れなくとも昆虫そのものを世帯内消費することで不足している栄養素を補うこともできます。JICA草の根「農村部住民の食糧事情向上を目指した昆虫養殖技術普及事業」として、NPO法人食用昆虫科学研究会の佐伯専門家とともに実施しており、2022年11月現在約70世帯の住民がすでに養殖を開始しています。

住民が食用昆虫養殖から安定した収入を得るようにするためには、技術普及だけでは不十分です。住民が住んでいる地域は、都市部から車で2時間程度と離れており、育てた昆虫をそのまま売る販売先を簡単に見つけることは、彼ら自身では非常に困難だからです。私たちは、AINプログラム ※ 「ラオスの美味しい昆虫食普及プロジェクト~養殖昆虫のフードシステム構築~」として、住民が育てた食用昆虫の需要をより喚起し、安定して消費者のもとへ届けるために「保存加工・市場開拓・新レシピ」の開発・研究も実施しています。より美味しい食べ方を開発・提案するためにNPO法人昆虫食普及ネットワークの内山理事長とともに挑戦しています。

他にもたくさんの活動にチャレンジしています。もし、この記事をご覧いただきISAPHに興味をお持ちいただけましたら、ぜひぜひ当団体SNSやメールアドレスでご気軽にお問い合わせください。それではお邪魔いたしました。

(石塚貴章/ISAPH ラオス事務所長)

ニュースレターは、NPO法人昆虫食普及ネットワークの公式HPで配信中です。

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食品原料

プロテイン原料のご紹介〜タンパク質の重要性と拡大する市場

プロテインは、日本語で「タンパク質」を表す言葉です。タンパク質は、肉、魚、大豆製品、卵、乳製品などに多く含まれており、私たちの身体をつくる上で欠かせない栄養素の一つです。 この記事では、タンパク質の働きとプロテイン市場の広がりを解説するとともに、プロテイン製品の開発に役立つ原料商品をご紹介します。タンパク質の働きタンパク質は、炭水化物・脂質とともに3大栄養素と呼ばれるエネルギー源のひとつです。筋肉をはじめ、臓器、血液、皮膚、髪、爪など、身体のあらゆる組織をつくる材料となります。身体の機能を調整するホルモンや酵素、抗体、神経伝達物質にも関わり、免疫や代謝、血圧の調整、神経機能の維持など、健康な身体を維持するために重要な役割を果たしています。若者から高齢者まで、プロテイン市場の広がりタンパク質は食事から摂取することが大切ですが、近年は、さまざまな目的でプロテイン製品が活用されるようになってきました。理想的な身体づくり、美容やダイエット、子どもの発育のサポート、高齢者に不足しがちなタンパク質を補う栄養補給など、プロテイン製品の需要が幅広い世代に広がっています。タンパク補給食品の国内市場は、10年で約4倍に成長し、2023年に2,580億円(2013年比+1,957億円)に達しました。2022年以降、市場の急拡大はひと段落しているものの、ブームにより獲得したユーザーがリピーターに成長しているケースもあり、市場は今後も小幅ながら成長が続くと予想されています(※)。生活者の利用シーンやニーズを捉えた商品開発が、今後の新たな顧客開拓につながっていきそうです。※参考:富士経済「プロテインブームが一段落、今後の動きが注目されるタンパク補給食品の国内市場を調査」プロテイン原料のご紹介シェアシマでは、プロテイン製品の開発に役立つ原料情報を数多く取り揃えております。ここからは、「動物性」「植物性」「昆虫食」「コラーゲン」の素材別に、プロテイン原料をご紹介します。シェアシマ会員様は、商品の規格書をダウンロードしたり、企業の担当者様に直接問い合わせをすることができます。ぜひご活用ください。動物性プロテイン原料ヤギホエイプロテイン(WPC50)|株式会社ナチュラリンク牛ホエイプロテインよりも約4倍のスピードで消化される、ヤギホエイプロテインです。牛乳のプロテインが1時間で約17%消化されるのに対し、ヤギのホエイプロテインは、1時間で77%消化されます。スポーツニュートリション製品の開発に最適です。

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食品原料

濃縮エキスがヒット商品に|「金目鯛のアラ」がもつアップサイクルの可能性

鮮やかな赤色と上品な味わいで知られる「金目鯛」。じつは頭や中骨といった「アラ」の部位にも濃厚な旨味が凝縮され、食品原料として多くの可能性を秘めています。アップサイクル原料として「金目鯛のアラ」の利用に取り組む企業「有限会社 渡辺水産」と、その活用事例をご紹介します。「日本一の金目鯛」を扱う渡辺水産伊豆の地魚を買い付けから販売まで一貫管理伊豆の下田市内に本店・支店の2拠点をもつ渡辺水産。金目鯛の水揚げ量日本一を誇る伊豆・下田港の近くに本社を置く渡辺水産。大正9年に創業以来、伊豆の新鮮な地魚を取り扱い、市場の買い付けから魚の加工、販売までを自社で一貫して行うことで鮮度に優れた海の幸を提供しています。金目鯛の加工商品で日本ギフト大賞も受賞ネット通販で人気を博す「地金目鯛 厚切りしゃぶしゃぶ」。渡辺水産がとりわけ得意とするのは、今や全国区で知られるブランドにもなった「下田の金目鯛」。飲食店やホテル、旅館などへの業務販売の他、一般向けの商品開発にも力を入れ、なかでも通信販売で扱う「地金目鯛 厚切りしゃぶしゃぶ」は「日本ギフト大賞 2022 静岡大賞」にも選ばれました。下田という地の利を生かした魚の鮮度と、老舗ならではの仕入れでの目利きぶり、そして金目鯛の扱いに慣れた熟練の職人技術が揃っているのが渡辺水産の強みといえます。「金目鯛のアラ」に見出す可能性濃厚な旨味とコクを含むアラに着目金目鯛の加工を行う過程で大量に生じるのが、頭や中骨といった「アラ」の部位。渡辺水産でも毎月1トン前後の金目鯛のアラが発生し、かつては廃棄するしかないのが現状でした。しかし魚のアラは本来、濃厚な旨味が凝縮された部分。特に脂質を多く含む金目鯛のアラは、他の魚と比べて旨味が抜群に濃く、コクのある味わいが楽しめるといいます。このアラに新たな販路を見出せないか。渡辺水産では約5年前から、金目鯛のアラの販売や、アラを生かした商品開発が始まりました。金目鯛のエキスがヒット商品にアラの旨味を凝縮した「金目鯛エキス」は約18倍希釈で、賞味期間は10カ月。ご当地ラーメンのスープなどに利用される。これまで缶詰やせんべい、ペットフードなど、さまざまな企業と共同で製品開発の試行錯誤を重ねてきたという渡辺水産。その中でヒット商品となったのが、アラから抽出した出汁を液状で販売する「金目鯛エキス」です。金目鯛のアラ(頭と骨)をじっくり煮込んで旨味とコクを取り出したエキスは、塩のみで味付けされ、まさに金目鯛がもつ本来の味わいが凝縮された仕上がり。2019年に販売開始されて以来、伊豆の地元や都内のラーメン店などから問い合わせが重なり、現在も主に飲食店に向けて定期的に卸されています。旨味が凝縮された「金目鯛エキス」は、ラーメンやつけ麺のスープと相性抜群。一般向けの小容量タイプも通販で入手可能。渡辺水産では、金目鯛のスープを使った「金目鯛ラーメン」も過去に開発・販売したことも。アップサイクル原料としての課題と展望食品ロス対策としての取り組みこの他、大手メーカーから鍋つゆの原料としての問い合わせも受けるなど、渡辺水産が扱う金目鯛のアラに着目する企業は少なくありません。このように、本来は廃棄対象とされていた素材を再利用し、新たな価値を生み出して製品化する試みは「アップサイクル」と呼ばれ、食品ロス対策やSDGsの観点から国内外で注目を集めています。金目鯛の中骨を、かつお節と同じ製法で味わい深く仕上げた「金目鯛スモークボーン」。渡辺水産のオリジナル商品だ。製菓メーカーにアラを提供して製造された「金目鯛せんべい」。金目鯛の高級魚としてのイメージと、他の魚類にはないアラの濃厚なコクと旨味には、アップサイクル原料として大きな将来性が感じられます。一方、脂肪分の個体差が生じやすい、硬く大きな骨を砕く設備が必要など、安定的なアラの活用に向けた課題も見えてきました。渡辺水産が扱う金目鯛のアラは、臭みの元となる血合いが職人の手で丁寧に除去されている。このきめ細かい後処理も、外国産の金目鯛との差別化ポイントだ。渡辺水産によれば、金目鯛のアラは毎月500キロ前後の安定供給が可能。また、希望があれば「兜のみ」など部位を絞った提供もできるとのこと。飲食店チェーンでの活用や小売り用の製品化など、まだまだ広がりをみせそうな金目鯛のアラの活用。参入を検討される企業は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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食品原料

【6月度】注目の原料商品のご紹介|シェアシマ編集部まとめ

シェアシマの原料ページに登録されている885点(6月末日時点)のうち、2024年6月に閲覧数の多かった商品をまとめてご紹介します。

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食品原料

機能性油脂のご紹介〜食品の品質改良や健康機能性向上に〜

食品開発の課題解決に役立つ「機能性油脂」をご存知でしょうか。油脂の選び方一つで、商品の魅力をより引き出すことができます。この記事では、シェアシマに登録されている油脂製品の中から、開発用途にあわせた商品を厳選してご紹介します。本記事を参考に、開発テーマや条件にあった油脂製品をぜひ見つけてください。機能性油脂とは機能性油脂とは、食品開発の条件に沿った機能性を持たせた油脂製品のことです。パンや菓子の食感改良や生地の老化防止に役立つもの、作業性・分散性に優れたもの、香りを付与できるものなど、機能性油脂と一口に言っても、さまざまな種類があります。また、かつて、油は「太る」という印象から摂取を控える傾向にありました。しかし今日では、植物性油脂の健康機能に注目が集まり、健康機能成分を含む良質な脂質を「むしろ積極的に摂るべき」という風潮が強まっています。シェアシマでは、開発用途にあわせた商品を多数掲載しています。ここからは、開発テーマに合わせたものから、健康機能性を持つもの、プラントベースフードに最適な油脂まで幅広くご紹介します。

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食品原料

特集|高齢者向け原料のご紹介〜拡大するシニア市場に〜

少子高齢化が進行する中、高齢者の健康維持や生活の質を向上させるための食品需要が増加しています。ある調査によると、介護食の市場規模は、2024年に過去最大の1,200億円を超える見込みです。 この記事では、拡大する介護食市場の動向のほか、高齢者に必要な食事、政府が普及推進する「スマイルケア食」についても解説します。高齢者向け食品開発に役立つ食品原料もあわせてご紹介します。ぜひ、参考にしてください。介護食市場は2030年に1,405億円に介護食市場は、2030年には1,405億円(2023年比18.4%増)になると予測されています(※1)。 超高齢社会である日本では、総人口の29.0%を65歳以上の高齢者が占めています(2022年10月時点)。さらに、この割合は今後も上昇し続け、2037年には33.3%となり、国民の3人に1人が65歳以上になると推計されています(※2)。 要介護・要支援認定者の増加や、栄養摂取・管理ニーズの高まり、介護に関わる人手不足、さらには、在宅介護向け需要の高まりなどを背景に、調理済みの介護食を利用するケースが今後ますます増えていく見通しです。 ※1参考:富士経済「介護食(流動食、やわらか食、栄養補給食)の市場を調査」※2参考:内閣府「令和5年版高齢社会白書」栄養補給、嚥下調整…高齢者に必要な食事とはでは、高齢者に必要な食事、食べやすいメニューとはどのようなものでしょうか。 高齢になると、ひざや腰といった身体の衰えだけでなく、噛む力や飲み込む力など食事に関する機能も低下します。 「麺類など手軽な料理が増える」、「硬くて噛み切りにくい肉類・野菜が敬遠される」など、食生活が偏ることで、健康を維持するための栄養素(タンパク質、ビタミン、ミネラル、食物繊維など)が不足しがちになります。健康な状態から要介護へ移行する段階を「フレイル」と言いますが、早いうちから意識することでフレイルを予防することも大切です。 また、加齢によって嚥下機能が低下すると、噛むことや飲み込むことに配慮した「嚥下調整食」の利用が必要となります。日本人の死因として多いものに「肺炎」がありますが、誤嚥に起因する「誤嚥性肺炎」が、2023年は肺炎の次に多い第6位(60,186件)となっています(※3)。安全においしく食事を楽しむためには、身体機能の段階に応じた食べやすいメニュー、例えば、柔らかく煮る、細かく刻む、とろみを付けるなどの工夫が必要不可欠です。高齢者一人ひとりに適したメニューを考える際には、「嚥下食ピラミッド」が参考になります。 ※3参考:厚生労働省「令和5年(2023)人口動態統計月報年計(概数)の概況」参考:嚥下食ドットコム  「スマイルケア食」海外展開も視野に 農林水産省では、これまで介護食品と呼ばれてきた食品の範囲を整理し、「スマイルケア食」として認知度の向上と普及に取り組んでいます。 「スマイルケア食」は、健康維持上栄養補給が必要な人向けの食品に「青」マーク噛むことが難しい人向けの食品に「黄」マーク飲み込むことが難しい人向けの食品に「赤」マークを表示し、それぞれの方の状態に応じた「新しい介護食品」の選択に寄与するものです。 このような共通のマークを用いて消費者にわかりやすく伝えていくことも、食品企業に求められている大切な役割です。 また政府は、「高齢者が食を楽しむことで実りある療養生活を営めることを目指したスマイルケア食は、日本の有望な輸出食品としての大きな潜在性を有している」とし、今後、高齢化が進む東南アジアを中心とした海外市場の開拓・商流の確立にも力を入れていく方針です。参考:農林水産省「スマイルケア食(新しい介護食品)」高齢者向け食品開発に役立つ原料のご紹介シェアシマでは、高齢者向け食品開発に役立つ原料を多数取り揃えております。シェアシマ会員の皆さまは、商品ページより【規格書・商品情報をダウンロード】【サンプル依頼・問い合わせ】機能をご利用頂けます。気になる商品がありましたら、ぜひご活用ください。不足しがちな栄養素を補ったり、調理の手間を削減するためには、栄養豊富なプロテイン原料や野菜加工品を活用するのも良いでしょう。

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製菓製パンの美味しさを長時間キープする、ミヨシ油脂の機能性油脂

機能性油脂とは機能性油脂とは、「菓子やパンなどの食感を改良する」「冷凍・冷蔵による生地の老化を防止してソフトさ・しっとり感を長時間維持する」といった機能を有する食品加工用油脂です。機能性油脂はドーナツやフィナンシェ、マドレーヌ、スポンジケーキ、パン、どらやきなど、さまざまな商品で活用されています。今回は、機能性油脂を製造・販売しているミヨシ油脂株式会社(東京都葛飾区)がどのような企業かを紹介した上で、同社の機能性油脂「パールインプラス」の特長、および、アプリケーション事例と効果について解説します。食品開発に関わっている人は、ぜひ参考にしてみてください。油脂の力と高い技術力、ミヨシ油脂の“ものづくり”ミヨシ油脂株式会社は1921年創業の、油脂製造販売事業を営む企業で、「人と人とのつながり」を大切にし、「良きものづくり」を通じて健やかな社会の発展に貢献しています。以下は、同社の主な事業内容です。食品事業:マーガリン、ショートニング、ラード、ホイップクリーム、粉末油脂など、食用加工油脂の製造・販売油化事業:脂肪酸、グリセリン、工業用石鹸、繊維用処理剤、消泡剤、香粧品原料、重金属捕集剤、重金属固定剤、各種界面活性剤などの製造販売なお、同社の機能性油脂の特長は、100年以上にわたる営業で培われた高い技術力に基づいて、食品加工に役立つ多種多様な機能が付与されていることです。機能性乳化油脂「パールインプラス」の紹介ミヨシ油脂株式会社では、菓子のソフトさとしっとり感を持続させる酵素配合の機能性乳化油脂「パールインプラス」を製造・販売しています。以下、パールインプラスの特長を4つ紹介します。ソフトさとしっとり感が長時間持続パールインプラスを使用すると、酵素と乳化剤の相乗効果でデンプンの老化が抑制され、理想の食感を維持できます。また、複数の酵素の組み合わせにより、焼き縮みを抑制できることも強みです。デンプンの老化によって引き起こされる「もろさ」や「ざらつき」が低減されるため、ソフトさとしっとり感が長時間持続する商品を製造できます。低消泡性・分散性パールインプラスは、流動状の水中油滴型乳化物で、水中に細かい油滴が分散している構造の製品です。生地中の気泡を壊しにくい性質(低消胞性)があるため、多種多様な菓子、パンに活用できます。また、生地中に分散しやすい性質(分散性)を有していることも魅力です。酵素の作用温度帯パールインプラスに含まれる酵素は、作業温度帯(「生地をこねる」などの作業を実施する温度帯)である35℃以下では活性が低いため、生地に変化が生じにくい傾向があります。しかし、焼成温度帯(生地をオーブンなどで焼く温度帯)では、酵素の活性が高くなり、効率よく生地に作用。作業性に影響せずに効果が発揮されることが、パールインプラスの特長です。なお、一般的に、焼成後には酵素は失活します。パールインプラスのアプリケーション事例と効果ここからは、パールインプラスの活用事例(ミヨシ油脂株式会社が試験配合した事例)、および、各事例における効果を紹介します。パウンドケーキ(常温保存)パウンドケーキを作る際にマーガリンの一部置き換えで、パールインプラスを対紛15%、全体量に対しては3.7%添加したケースです。この事例では、20℃で保管して90日間経過しても、無添加のサンプルに比べてやわらかさが保たれる傾向が見られました。また、官能評価の結果によれば、しっとり感やソフトさが増加し、老化によるざらつきが抑制されていることも確認されています。なお、パールインプラスを添加したパウンドケーキは酵素の効果が発揮されやすく、時間が経過してもかたくなりにくい傾向が見られました。スポンジケーキ(常温、冷凍保存)パールインプラスを対粉15%分含む生地でスポンジケーキを作ったケースです。この事例では、「20℃で保存して3日経過した場合」と「冷凍保存して3日後および14日後に常温で解凍してから測定した場合」の両方において、無添加のサンプルに比べてやわらかさが維持される傾向が見られました。どらやき(常温、チルド保存)パールインプラスを対粉10%分添加して、焼成時間は1分40秒でどらやきを作ったケースです。この事例では、20℃で保管した上で90日程度の時間が経過しても、無添加のサンプルに比べてやわらかさが保たれる結果が確認されました。焼成時間が短くても、充分に効果が発揮されます。また、「チルド(5℃)で7日間保存したサンプル」について官能評価を実施したところ(いずれも粉の10%分のパールインプラスを添加)、無添加のサンプルに比べて口溶けやしっとり感などが維持され、デンプンの老化に起因するもろさやざらつきが抑制されているという結果が出ています。抹茶フィナンシェ(常温保存)パールインプラスを使用して(マーガリンの15%分を置き換えて)抹茶フィナンシェを作ったケースです。一般的に、抹茶を含む生地はぱさつきやすい傾向があります。常温で40日経過後に官能評価を実施したところ、パールインプラスを使用したサンプルは、使用していないサンプルに比べて、ソフトさや口溶け、しっとり感、じゅわっと感(油性感)が高く、ざらつきが抑制されているという結果が出ています。まとめ菓子やパンなどを製造・販売する際に課題となるのが、時間の経過によって商品がかたくなったり、ざらついたりすることです。主な原因はデンプンの老化によるもので、ミヨシ油脂株式会社の機能性乳化油脂「パールインプラス」を使用することで抑制できます。ソフトさやしっとり感を長時間維持できる食品を開発したい場合は、パールインプラスの使用を選択肢のひとつとして考えてみてはいかがでしょうか。なお、ご質問・ご相談がある場合は、ミヨシ油脂株式会社までお問い合わせください。