ハラルの基礎とイスラム教徒マーケット分析
【食品ハラルビジネス進化論~ハラル認証原料編vol.1】
はじめまして、ハラル・ジャパン協会の佐久間です。今回ハラルビジネスで業務提携を結んでいるシェアシマの新メディア「シェアシマinfo」で連載することになりました、よろしくお願いします。(一社)ハラル・ジャパン協会はハラルビジネスのコンサルティング会社で、ハラル(ハラール)認証団体ではありません。現在一般会員150社、情報会員24,000人(約8,500社)で主にイスラム教徒向け(東南アジア・南西アジア・中東等)市場の輸出・進出及び国内・インバウンド対応に特化したコンサルティングを行っています。ハラルビジネスは原材料メーカー様にとっても相性抜群の事業領域です。
第1回目の今回は、ハラルという言葉が初めての事業者のための入門的な話として、「ハラルの基礎とイスラム教徒マーケット分析」をテーマとしました。
ハラルを正しく理解する
イスラム教のHALAL(ハラル)の基本がわかるとハラルビジネスのポイントがわかります。ハラルの意味は「やっていいこと」、つまり食べ物でいえば、「食べていいもの」を意味します。イスラム教も宗教なので、仏教同様に食の禁忌があるということです。ライフスタイル全般にやっていいことを意味しますが、口に入れるもの、肌に触れるもの、身に着けるものが広く対象になると覚えておくといいと思います。
代表的なものは動物(畜肉)由来のコントロールで、豚肉・由来のモノは使用できません。また牛・鶏・羊は食べられますが、イスラム教徒のルールに従った方法で屠畜(とちく)しなくてはなりません。特に油・ゼラチン類・ショートニング・乳化剤などの添加物にも注意が必要です。アルコールは考え方がいろいろありますが、基本は酔わせるアルコールが禁止と覚えてください。消毒用アルコール、工業用アルコールなどは個人差がありますが、問題ではありません。酔わせる可能性がある種類のアルコールが問題と考えてください。
その他の水の中、土の中から採れる食べ物そのものは基本ハラル(「やっていいこと」)ですので、野菜・果物・穀物及び水産品は基本問題ないと考えてください。日本にある食べ物及び由来原料はハラルが多いと思います。特に明治時代までの日本の食べ物は穀物中心とした仏教(精進)料理で基本的にはハラルですね?結局ハラルは動物由来とアルコール由来のコントロールが大事であり、ノーアニマル、ノーポーク、ノーアルコールの組み合わせの原材料で成立します。原材料の由来がとても重要です。
イスラム教は未来あるマーケット
イスラム教徒は世界に約19億人いる世界人口の1/4のマーケットです。砂漠や熱帯雨林だけで信仰されているのではありません。世界宗教の1つと覚えてください。そして人口が増えていて、若年層が多く、これから経済発展する国が多いことも特徴です。未来あるマーケットで今世紀末には世界人口の1/3になるという予測データもあります。日本は超少子高齢社会で、人口も胃袋の大きさも減少しますが、イスラム教徒の国の多くは人口も増え、胃袋も大きく増加します。
特に東南アジアのマレーシア・シンガポール・インドネシア、南西アジアのインド・バングラデシュ・パキスタンなど、また中東はUAE(アラブ首長国連邦、ドバイは首長国の一つ)・サウジアラビア・イラン・トルコ、中央アジア、アフリカ、EUや北アメリカにも多くのイスラム教徒(ムスリムと言います)が生活しています。
このマーケットは日本にとってはブルーオーシャンですが、海外は何年も前から取り組んで日本は地球1周半遅れのスタートです。次回は「原材料のハラルビジネス」についてもう少し詳しく解説したいと思います。引き続きよろしくお願いいたします。
(佐久間朋宏/非営利一般社団法人ハラル・ジャパン協会代表理事)
次回の記事を読む:食品原材料とハラルビジネスの親和性【食品ハラルビジネス進化論~ハラル認証原料編vol.2】
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